ミライ家
ライラ王女の実家、ミライ家。
国内屈指の力を持つ貴族である。
ロンム王国の西側に広大な領地を持つ。主な資源は貿易港とダンジョンだ。
貿易の中心にいたのはオンドル商会。
残念ながら経営不振で苦戦中。港も貿易船は数を減らし、漁船だけがいつも通り動いているだけの状態だ。
ダンジョンは通称『ネズミダンジョン』。
ネズミタイプのモンスターが多く、そのドロップアイテムの皮が名物になっている。
ダンジョン産の皮を加工する職人も多数おり、ミライ領に訪れる商人の目的は貿易品か皮加工品のどちらかだ。
ネズミタイプのモンスターは弱く、レベルの低い冒険者でも倒しやすく、割と高く売れるので低レベルの冒険者に人気のダンジョンだ。
ネズミも何種類かいるが、一番人気は適正レベル10の大ドロネズミの皮だ。水に強く、加工もしやすい。他にも色々なネズミの皮が手に入る。
そこにディーンが連れてこられた。
「で、このダンジョンで何をすればいいんだ?」
「冒険者たちを動員してモンスターを狩りまくって。それでドロップアイテムは普通に冒険者ギルドに売ればいいから。」
「それだけか?」
「2つルールがあるんだ。
その1、日当を支払うし容量の大きなマジックバックを貸すから、全力でドロップアイテムを集めて欲しい。
その2、街でお金を使わないこと。ダンジョンに入って、冒険者ギルドで換金する。それ以外はしないこと。食事したり、装備を整えたりはウィリアムの街に戻ってやってほしい。」
「わかった。それでドロップアイテムを換金した時の金はどうするんだ?ロンム王国のお金をウィリアムの街に持ち帰っても仕方ないだろ?」
「もちろんウィリアムの街で使えるお金に両替するよ。安心して稼いでもらって。」
「でも、そんなに狩ったらドロップアイテムの買取り価格が下がるだろ。いいのか?」
「大丈夫。それが狙いだから。冒険者たちにもそのうち買取り価格が下がることは事前に伝えといて。それを埋めるための日当だから。」
「なるほどな。わかった。じゃあ冒険者を集めて開始しよう。終了する時は言ってくれ。」
「わかったよ。よろしくね♪」
こうしてディーン指揮のもと、ネズミダンジョンでの狩りがひそかに始まった。
最初に異変を感じたのは冒険者ギルドであった。今まで街で見なかった冒険者が続々とやって来たのだ。
それも大量のドロップアイテムを持ってだ。
普通の冒険者はマジックバックなんて持っていない。背負って帰れる数などたかが知れている。
あっという間に冒険者ギルドの買取り窓口はパンクした。
そして翌日。
やはり大量のドロップアイテムが冒険者ギルドに持ち込まれた。ギルド長も2日連続の異常事態に緊急会議を召集。
結論としては、近隣のダンジョンで何あり冒険者が大量に流入してきたのだろう。このまま買取りを続ければギルドの倉庫はすぐにパンクしてしまう。一時的に買取り価格を下げて冒険者を他の街に分散させるしかない。
そのため、買取り価格を当初の7割まで下げた。
そして翌日。
買取り価格を下げたのに一向にドロップアイテムが減らない。窓口でも今は売らない方がいいとか、他のダンジョンの方が儲かるという話をしても減る気配がない。更に買取り価格を5割まで下げた。普通の冒険者なら生活ができないレベルだ。
しかし、冒険者たちは気にする様子もなく、買取り窓口にやって来る。
既に冒険者ギルドの倉庫は限界を迎え、臨時倉庫を借りる事態に陥った。その後も買取り価格を下げ、通常の1割まで下げた。
そんな冒険者ギルドがパニック状態にある中、次に問題がおきたのは不動産屋と宿屋であった。冒険者が続々と解約を申し出てきたのだ。買取り価格の急降下で生活ができないのだから当たり前だ。冒険者たちは買取り価格が戻るのを待つより他の街に移動することを選ぶのが当然の選択であった。
そして飲食店や道具屋、武器屋、防具屋と次々に閑古鳥が鳴き始めた。
主な客である冒険者が急激に減ったのだから仕方がない。
街のお店たちは冒険者ギルドに抗議をした。
当初、冒険者ギルドは一時的に増え過ぎた冒険者が元に戻りつつあるのを、商人たちは文句を言っているという認識であった。
しかし、それが間違いであることに気づいた。新しく増えた冒険者が街の施設を利用している気配がないのだ。街の人たちの認識は冒険者が急激に減っているということだった。
ようやく、状況の把握ができてきて、街の上層部に伝わった時には、深刻な状況になっていた。
元々いた冒険者の大半は既に街を去っていた。冒険者は基本的には根なし草。稼げるダンジョンに移動して行く生き物である。そして、高額の消費者でもある。飲み食い、宿代、装備費用などなど、一般の市民に比べると使うお金が段違いに多い。
その冒険者が去ると街の経済は一気に冷え込んだ。
更に主力商会であるオンドル商会もガタガタの状況という問題が同時に発生し、ミライ領の経済は壊滅的な状況に陥っていた。
ライラ王女の父親であり、領主でもあるミライ侯爵は急に訪れた危機に頭を抱えていた。
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