ライラ王女とロビン王子

数日後、

「もうすぐ王都ですね。」

「ウィリアム。どこに行ってたんだ?それに急に現れるのも勘弁してくれ。」

「あ~、失礼致しました。いつものクセで。これからは気をつけますね。」

「もうすぐ王都だ。王宮には有象無象が山のようにいる。行動には気をつけてくれ。」

「わかりました。足を引っ張ることのないように細心の注意を払います。」


そして王都の門をくぐり、帰還。

ウィリアム王子を先頭に行進していく。

魔王軍を破った英雄たちの凱旋を国民は歓声とともに迎え入れる。

王子は騎乗から力強く手を振る。

歓喜の声に包まれながらゆったりと進んで行く。沿道を埋める人々。

そして、王宮に到着。

馬を降りて城内に入っていく。


謁見の間では国王、ライラ王女、第二王子のロビン王子、家臣一同が迎えた。

「ウィリアムよ。魔王の軍勢によくぞ勝利した。ロンム王国は魔王に屈することはない。勇者の国の威信をよく守った。」

国王が賛辞の言葉をウィリアム王子に送る。


「さすがウィリアム王子。戦の能力だけは高いですわね。これで得る物があれば言うことは無いのだけれど。まったくのタダ働き。この損失はどう埋めればいいのかしらね。」

「母上、兄様は戦いを終えたばかりでお疲れでしょう。今は戦争にかかった費用、亡くなった兵士への補償、そんな雑事を考える余裕は無いでしょう。」

母子揃ってウィリアム王子に皮肉を言ってくる。

「この世界に生きる者としての当然の役割を果たしただけだ。文句を言われる筋合いはない。」

「は~、さすがウィリアム王子。後先考えずフィガロ王国の支援を約束されるだけのことはありますわ。」

「ともに戦った仲間を支援するのは当然のことだ。フィガロ王国が復興しなければ、我が国の経済にも悪影響がでる。早急な建て直しが必要だ。」

「さすが兄様、自国の負担を考えず、他国の心配をされるとはご立派です。」


「カンロ連合王国から得ているお金を使えばいいんじゃない。」

「なっ!」

「誰だ、この男は?」

絶句するライラ王女と誰何するロビン王子。

「紹介するのが遅くなりました、こちらはウィリアム=ドラクロアです。先日の戦いで知り合い、食客としてお招きしました。」

ウィルが一礼をする。

「只今紹介に預かりましたウィリアム=ドラクロアです。先日の戦いでのウィリアム王子率いるロンム王国軍の獅子奮迅の活躍に感銘を受け、帯同の許可をお願いした次第です。」

「あのドラクロアか。

そなたから見て我が軍はどうだった?」

ドラクロアの名に国王が反応する。


「個々の能力が高く、士気も高い。そして、その能力を最大限発揮させる指揮官の采配も目を見張るものがございます。まともに戦うなら3倍の兵は用意したいところです。」

「うむ。ドルマ帝国との戦いで名を馳せたドラクロア家の人間の言葉だ。我が軍の者たちの励みになるだろう。我が国内でゆるりとすごせ。」

「有り難き御言葉。」


うーん、さっきの発言は有耶無耶になってしまったな。調べた限り、ライラ王女の実家はカンロ連合王国との貿易で不当な利益を得ている。王女の反応を見ても間違いない。

もしかしたらロビン王子は詳細を知らないのかもしれない。


「コホン。他国の者が王家の会話に割って入るような非礼は今後は控えなさい。エール王国の品位が問われますわ。」

「そうです。ここは戦場ではない。最低限の礼儀ぐらいはわきまえて欲しいね。」

「誠に申し訳ございません。先ほどの非礼をお詫び致します。ムンロ王国はウィリアム王子のご活躍により戦場にならずに済みましたから、戦場でのような振る舞いは避けねばなりませんね。」

ウィルに対して怒りの目を向けるライラ王女。

「少し王宮での立ち振舞いを学んだ方がいいんじゃないか。連れてきた兄様に迷惑がかかるぞ。」

「おっしゃる通りです。ロンム王国の次代を担うウィリアム王子にご迷惑をおかけするようなことはあってはなりません。申し訳ございませんでした。」

ウィルの挑発的な発言に不穏な空気が流れる。

「話はそのへんにしておけ。兵士たちも疲れているだろう。」

国王の言葉とともに出迎えは終了となった。


「ウィリアム、ついて来い。」

ウィリアム王子の私室に案内される。

ウィリアム王子、ウィル、おじさんが入室する。

「紹介しておこう。私の右腕として働いてくれているオスカーだ。今回も私の留守を守ってくれていた。」

「オスカーだ。」

「ウィリアムです。宜しくお願い致します。」

「オスカーも驚いたと思うが、ウィリアムはこういう男だ。驚かされるが人柄、実力ともに信頼に足る人物だ。」

「正面からそんなに褒められると照れますよ。」

「王子、少し危険ではございませんか。

今はデリケートな時期です。

このような態度の男と一緒にいては足下を掬われますぞ。」

「ご心配なく。多少の手は打ってます。少しは状況を改善できると思います。」

「何を企んでいる!」

「オスカーは落ち着け。

ウィリアムも仲間に隠し事は無しだ。

何を計画しているのか話してくれ。」


せっかちだね。

もう少し盛り上げたかったのに。

仕方ない。説明するか。

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