幕間 勇者の塔攻略
勇者専用訓練施設『勇者の塔』。
カレンたちは攻略に取り掛かった。
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そして、攻略した。
最後のボスもサクッと倒してしまった。
「呆気なかったな。」
「移動が面倒なだけでしたね。」
「ボスも簡単に倒せたしな。」
「ウィルが用意するモンスターの方が断然厄介でしたからね。」
たった4日でカレンたちは塔を駆け抜けた。
ある意味当然と言えば当然だった。
初心者の勇者を一人前に鍛えるための施設だ。最終的にレベル50程度になれることを目的に作られたダンジョンだ。カレンたちはレベル70。しかも全員伝説職。装備もウィル特製。苦戦する理由がなかった。
壮大なエフェクトでボスが消えていくのをなんの感慨もなく、見つめている。
クリスタルでできた赤と青の巨人2体がボスだった。
1体は物理耐性、もう1体は魔法耐性を持っており、特徴を見極めた攻撃が求められる難敵のはずだが、カレンたちは瞬殺だった。
ウィルの特訓の成果がダンジョンの価値を台無しにしていた。
ボスが消えると光の階段が現れた。
その階段を登り終えると、また女神像があった。
やはり女神像は輝きだし、話始めた。
「勇者よ、よくぞ塔を攻略しました。
この塔で身につけた能力はこれからの魔王との戦いで役立つことでしょう。
なにより、挫けずに塔に挑み続けた不屈の闘志が貴女方の武器になることでしょう。
勇者よ、これから魔王との戦いが本格化してきます。貴女にはこの『女神の羅針盤』を授けます。羅針盤の示す先に貴女方を強くするものがあります。それは装備であり、スキルであり、経験などです。羅針盤に従い力を蓄えてください。そうすれば強大な魔王を倒せる力が手に入るでしょう。
貴女方が世界の希望です。
どうか世界を救ってください。」
なんとも言えない空気が流れるなか、カレンの目の前には『女神の羅針盤』が輝きながら浮かんでいた。
「女神様の声は使い回しなんだろうけど、『挑み続けた不屈の闘志』とか言われると醒めちゃうよな。あっさりクリアしちゃったし。」
「仕方ないでしょ。いくら女神様でもウィルみたいな存在は想定外でしょうから。」
「これから、この羅針盤に従って旅をすることになるようですね。」
「勇者の塔以降はルートが決まってないってことなんでしょうね。」
「カレン、そろそろその羅針盤取ったら?」
「あっ、そうですね。じゃあ取りますよ。」
カレンが手に取ると、輝いていち羅針盤の光が中心部に収束する。
そして一方向に光が差した。
「こちらに向かえ、ということかしら?」
「とりあえずダンジョンを出て方角を確認しましょう。」
「そうですわ。町長や神父にも報告する必要がございますし。」
「報告は頼んだよ!口先男!」
「モーリン、やめろよ~。」
町長や神父への報告はさっさと終わらせた。
2人とも口をポカーンと開けたまま、あまりの速さに理解が追いつかなかったみたいだった。
「皆様、勇者の塔攻略お疲れさまでした。宿屋は引き払いました。いつでも出発可能です。」
「しかし、不親切なアイテムだな。方角はわかっても距離がわからないから、旅の準備が難しいな。」
貴重な女神様のアイテムがいきなりハンスにボロクソに言われている。
「とりあえずこの方角に向かいますか?」
「その前に一度ウィルと打合せをしましょう。勇者の塔攻略の報告と今後の動き方は共有しておいた方がいいでしょう。」
「クラリスの言う通りですね。一度戻りましょう。」
「ではその間に馬車は街から離れて、目立たない場所に移動させておきます。」
そしてドラクロアダンジョンに転移して、ウィルを呼び出した。
「お疲れさま。どうしたの?」
「勇者の塔を攻略しました。そして今後はこの『女神の羅針盤』に従って旅をすることになりました。」
「なるほどね~。」
ウィルは羅針盤を手に取り、表や裏をじっくり見ている。
「これ、けっこう広範囲の移動を前提に作られているよ。さすがに馬車じゃ厳しそうだね。」
「そんなことまでわかるの?」
「ざっとだけどね。移動手段はこっちで用意するよ。今まで通り移動はハンスとコロネに任せて、みんなはトレーニングに集中すればいいよ。」
「ありがとう。助かるわ。」
「言っただろ、常に同行する訳じゃないけど、勇者のサポートはするって。」
「頼りにしてます。」
カレンたちと別れたウィルはハンスとコロネのところに転移した。
「お疲れさま~」
「わっ!ウィル様。急に出てこないでくださいよ。」
「ハンス、ウィル様がいついかなる時に来られてもいいようにするのが私たちの務めです。」
「そんな務め聞いたことねぇよ。」
「ごめん、ごめん。2人に伝えることがあってね。羅針盤のことは聞いてる?」
「女神様から頂いた羅針盤だろ。今後はあの光の指す方向に向かうんだよな。」
「そうそう。でも、けっこう遠そうだから馬車だと厳しそうなんだ。」
「そうか。」
「だから明日からはドラゴンに乗って移動よろしくね。」
「はっ?
今なんて言った?
ドラゴン???」
「そう。ドラゴン。かわいいよ?」
「ありえねぇぇぇ~~~!!」
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