連合軍の勝利

右翼にて。

エリックが部下に、

「遠くに凄まじい炎と雷が見えたが、ウィリアム騎士団は健在か?」

と問うと、

「健在です。詳細は不明ですが敵軍に大きな被害が出ている模様です。」

「そうか。ウィルがやったのかな。

よし、気にせず目の前の敵を叩くぞ。」


中央のフィガロ王国軍。

フィガロ王

「敵の攻撃に勢いが失くなってきたな。向こうに何かあったのか?

だがチャンスを見逃す気はない。

合図を送れ、戦線を進めるぞ!」

フィガロ王の号令のもと、今まで防戦に徹していた全軍が進軍を始めた。


ウィリアム王子

「この戦い、勝利は目の前だ!

勇敢に進め!

敵を蹴散らせ!

1匹たりとも逃がすな!」

勝利を確信したウィリアム王子は少しでも存在感を出そうとモンスター討伐に精を出す。


フルブライト公爵

「勝ち戦で功を焦って無茶をするのは愚の骨頂。今まで通りでかまわん。

モンスターどもに人間の恐ろしさを思いしらせてやれ。」


リクソン

「全軍が動き出しましたね。

では我々は我々の役目を果たしましょう。」

ウィリアム騎士団は全軍より先んじて、敵軍を貫通する。

そして、挟撃となる位置に陣取った。

逃げたモンスターは周囲の村の脅威となる。場合によっては復興の妨げになる。

そんなモンスターを少しでも減らせるようにウィリアム騎士団は動いたのだ。



そこからの戦いも短いものではなかった。

いくら連合軍が優位であってもモンスターの数は多い。しかし、被害は出しながらも、連合軍は勝利を勝ち取った。


戦場のそこかしこで歓喜の声が上がる。

世界の命運を賭けた戦いに勝利した喜びを全員が感じていた。


フィガロ王

「我々は勝利した!

喜びを分け合おう!

これは歴史に名を残す勝利だ!

人類の歴史を明日につないだのだ!

失ったものも多い。

この戦いで英霊となった者。

大きな傷を負った者。

未来に光が見えない者もいるだろう。

しかし、人間が協力すればこれだけのことができるんだ。不可能はない!

勝ち取った未来をより良いものにするのも我々の役目だ!

ともに今日よりも良い明日を作っていこう!

我々ならできるはずだ!」


フィガロ王の勝利宣言を受け、戦いは終了した。

しかし、戦場で暗躍している男が1人いた。

ウィルだ。

ウィルが用意した魔道具を作動させると、上空に薄い雲が広がり、戦場全体に雨を降らせた。


ヘンリー王子

「雨か。散っていった者たちの涙雨か。」

「なんだ!この雨は!?」

「どうしたジョージ。」

「この雨には回復効果があります!

それも相当なものです。もしかしたら、部分欠損を治すほどです!」

「そんな!!

女神様の癒しの雨か!

魔王軍と戦う我らに救いの奇跡を示されたのか。」

「ウォーレン、興奮するな。

女神様はそう易々出てこられない。

これは人の手によるものだろう。1人だけ、こんなことをする人物に心当たりがある。」

「まさか、ウィリアム?」

「おそらくね。」

「ですが、なぜこんなやり方を?」

「さあね。彼の考えはわからないよ。

でも、もしかしたらこれ以上エール王国の手柄を増やさないために、女神の奇跡を装ったのかもしれないな。」

「なぜです。」

「おそらく返せないほどの借りを作らせないってところかな。重過ぎる恩義は負担だからね。それにロンム王国とのバランスも考えたのかもしれない。

まぁ、想像に過ぎないけどね。」



癒しの雨は全軍に降り注いだ。

軽傷者はすぐに治り、瀕死の重傷を負った者も一命をとりとめた。

この雨は女神様の奇跡として、歴史的な勝利に華をそえた。

各軍は兵士を取りまとめ、凱旋の準備を進めた。


エール王国軍もヘンリー王子の元に主要メンバーが集まった。

「皆のおかげで勝利することができた。

皆の奮戦に感謝する。

これは人間にとって、歴史的な勝利だ。

我々も胸を張ってエール王国に帰れる。

まずは先日まで駐留していた王都近郊まで移動する。各人は被害状況を確認し、私が王都に入る前に報告をしてくれ。

頼んだぞ。」


エール王国軍は約3万の参加であったが、約2千人の死者が出た。特に被害が大きかったのはヘルモンキーに襲われた後列だった。

前列で戦っていたフルブライト公爵軍、ドラクロア軍、ヘンリー王子直轄軍は常に激戦に身を置いたが、モンスターに殺される前に交代させるなどして死者を減らしている。この世界では、レベルが拮抗している者同士の戦闘では、1回や2回敵の攻撃を受けても重傷にはならない。HP の管理を上手く行い、集中攻撃を受けないようにすればかなり損害を抑えることができる。

なお、フィガロ王国軍やロンム王国軍は更に多くの被害を出している。

このことからもフルブライト・ドラクロア軍の優秀さがわかる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る