四天王バルゴスの脅威
フルブライト公爵が卵を地面に叩きつけると、中から光が溢れだした。
溢れ出た光は次々と狼のような形に変貌していく。
次から次へと生まれてくる光の狼。
光の狼は空中を駆け出しモンスターに襲いかかる。
件の猿モンスターも光の狼たちに次々噛み殺されていく。
前線側に向かった光の狼も多数いる。
数分の出来事であった。
光の狼たちは光の粒になり消えていった。
周囲のモンスターたちに絶大な損害を与え、エール王国軍が立て直すには十分な余裕を作ってくれた。
「なんてアイテムだ。。。
これ程の威力のアイテムをほいほい用意してしまうウィリアムか。あやつが本気になれば、魔王よりも簡単に世界征服してしまいそうじゃな。」
こうして、トロルバード隊、マッドバイパー隊、ヘルモンキー隊の奇襲攻撃はすべて撃退することに成功できた。
そんな光景を確認しながら、最前線の更に前で大暴れしているウィリアム騎士団を指揮するリクソンは次に備えていた。
「カシムとソニアの活躍によって窮地は脱したが、裏を返せば、あの2人を使わなければ負けそうなほど追い詰められていたということだ。まだまだ何かしてくると思っておいた方がいいな。」
そんなことを考えていたリクソンは、急に悪寒が走った。
理由はわからないがヤバい。
本能がアラートを鳴らしている。
「全軍、防壁の陣!」
リクソンは即座に命令を出す。
こんな時に疑問を口にする愚か者はウィリアム騎士団にはいない。
陣形が整った。
刹那、ウィリアム騎士団を特大の炎の津波が襲いかかる。
陣の前面に立っていた防御に特化した団員が防ぐ。しかし、完全には防ぎきれず10名強が吹き飛ばされた。
リクソンは
「なんて威力だ!何回も受け止められないぞ。」
土煙が立ち込める中、リクソンは次に備えて隊列を整えさせる。
土煙が収まった後には、敵の一団が近づいていた。
「あの攻撃を防ぎきるとはな。
確かに強い。
だが、俺の敵では無いようだな。」
「何者だ!」
「俺は魔王軍四天王バルゴスだ。俺に直接殺されることを光栄に思うのだな。」
バルゴスとその側近の一団。
精鋭の中の精鋭。
数は200程度だろうか。
リクソンは考える。
バルゴス以外は倒すことは可能だろう。だが、バルゴスは別格に強い。イメージとしてはカシムのような感じか。
リクソン自体は指揮官であって、直接戦闘が得意な訳ではない。伝説職だが、直接戦闘能力は他の団員とほとんど変わらない。だから相手が強過ぎると、どの程度強いのかが判断できない。
だが、我々よりも強い部隊は連合軍に存在しない。つまり負ける訳にはいかないのだ。
「そうだな。
光栄に思うよ。
我々に魔王軍の四天王を倒す機会を与えてくれたことに!」
「雑魚を多く倒したからといって、増長するなよ!
放て!」
バルゴスとその側近たちが構えると、
全員から炎が撃ち出される。
先ほどの炎の津波か!
「防げ!」
前列は盾を構え、後列からは氷や水の魔法が放たれる。
炎の津波は勢いを若干弱めたものの、ウィリアム騎士団に襲いかかる。
盾を構えていた兵士がまたも20名近く吹き飛ばされる。
当然だがダメージは蓄積するし、後から補充に入った兵士は防御力で劣る。
突撃をして、次の一波までに接近戦に持ち込むしかない。
リクソンが突撃の指示を出そうとした瞬間。
真横にウィルがいた。
「ちょっと待機。」
そう言い残すと、ウィルは上空に舞い上がる。
ウィルが手をかざすと、轟音とともに幾重にも雷が降り注ぐ。
ウィルは雷を落とし終わると、ウィリアム騎士団の前に舞い降りた。
圧倒的!
500人の精鋭が死を覚悟した相手を瞬く間に殲滅した。
その姿は勇者と言うよりも、神に近いのかもしれない。そんな感想をリクソンは抱いていた。
「まだだ!この程度で俺は倒れん!」
バルゴスだけが立ち上がる。
忘れてしまいそうになるが、相手は魔王軍四天王なのだ。
ウィルの魔法に耐えきるだけの実力を持っていた。
「俺の真の力を見せてやる!
ウォォォォォォ!!!」
「見せなくていいよ。」
「ウォォォォ、ォ、ォ、ォ、、、」
ウィルが、力を高めていたバルゴスを、目にも止まらぬ速さで斬り刻む。
バルゴスの咆哮は力なく潰えた。
「わざわざパワーアップするのを待ってやる義理はないよ。
さてと、リクソン、後少しだ。最後まで気を抜かずにね。」
「承知致しました。バルゴスの件は報告なさいますか?」
「落ち着いたら私からヘンリー王子に言っとくよ。それじゃあね。」
一瞬でウィルが消える。
騎士団の一同も呆気にとられるが、今いるのは戦場のど真ん中。落ち着いている時間はない。
「総員、隊形を整えろ。
回復が必要な者はすぐに行え。
敵の指揮官はウィリアム様が討ち取ったがモンスターは指揮官がいなくても攻撃を止めない。気を抜くなよ。」
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