会議は退屈?

そして翌日。

エール王国からはヘンリー王子、ウォーレン、フルブライト公爵、エリック、ウィリアムの5人。

代表団としては最大級の人数だが、そこは大国ということで許されている。

円卓の中心にフィガロ王。

その両サイドにフィガロ王国の重臣たち。

そこから、各国の代表が座り、その背後にその国の関係者が立っている。

大国のエール王国とロンム王国は両極に座っている。


「現在、フィガロ王国は未曾有の危機に瀕している。闇の軍勢に国の半分を奪われているからだ。そして、何もしなければ、王国全土を闇が覆うことになるだろう。

しかし、そんなことにはさせない!

我々は戦う!

黙って敗北を待つなんてことはしない。

そして勝つ!

我々には不屈の闘志と共に戦う仲間がいる。

今日はそのための作戦会議を行いたい。

勝利に向けて、忌憚の無い意見を聞かせて欲しい。

まずは現況の報告を聞いて欲しい。」


フィガロ王が合図を送ると、1人の重臣が立ち上がった。

「現在、闇の軍勢は南下中。

その数、およそ35万。

決戦予定地への到達は3日後。

当方の戦力は、

フィガロ王国軍16万。

援軍10万、合計26万。

数では劣りますが、戦えない量ではありません。」

説明を終えると、その重臣は座った。

明らかに不利な状況に諸国の参加者たちはざわめきたった。

「まったく問題ない!

その程度の差など私が覆してやろう!」

ロンム王国のウィリアム王子が声をあげた。


「さすがウィリアム王子。稀代の勇将と評判のウィリアム王子が来てくださったことは我が国にとってはこれ以上無い幸運である。」

「できれば高名なエール王国のドラクロア卿と馬を並べたかったが、私だけでも問題なく倒してみせよう。」

「ウィリアム王子、我が軍にはエリック=ドラクロア、ウィリアム=ドラクロアの2人がいる。竜の子は竜であることは戦場で証明しましょう。」

「面白い。私を失望させない戦いを見せてくれよ。」


「これだけの英雄が揃い、地の利もある。協力して戦えば勝利は間違いない。

具体的な配備を決めていきたい。」

「その前に少しよろしいでしょうか?」

話を進めるフィガロ王に対し、ヘンリー王子が声をあげた。

「かまいません。何かな?」

「先ほどの報告に一部、私が独自に手に入れた情報と異なるところがございました。」

「どの点かな?」

「敵の数です。私の調べでは約40万かと。」


ザワザワザワザワ


「さすがにそれはないだろう。5万を見誤ることはないと思うが。」

「そもそも当初の見込みは30万でしたよね。それが35万に増え、更に40万に増えた。そういうことです。」

「何か証拠はあるのか?」

「フィガロ王国は黒い柱の施設に関しては承知されておりますか?」

「魔王の軍勢が作った謎の施設だな。もちろん知ってはいるが、守りが厳しく、詳細な情報は手に入らなかった。」

「あれは転移用の施設です。転移させることで兵力を高めています。だから調べる度に敵の数が増えているのです。」

「40万に増えたのなら、40万を倒すだけだ。」

「だが、40万を倒したとしてもどんどん援軍が現れるのでは、いずれ敗れるぞ。」

「その心配はございません。私の部下が破壊に向かっています。明日にも破壊できるでしょう。」

「堅い守りを突破して破壊するなどできるのか?」

「問題ございません。そのために最適な人選をしております。」

「さすがエール王国。生きて帰れない決死の任務を勇敢に果たす。騎士の鑑だな。」


ウィリアム王子が見当違いな感動をしている。


「26万対40万。ひっくり返せない数字ではない。

我が軍の士気は高い。

30万程度ならば、我々で倒してみせる。

残りの10万を援軍の皆で倒してもらいたい。」

「フィガロ王。我が軍は3万だが精鋭揃いだ。その程度の敵の数では満足できんな。」

「フィガロ王。あなた方の戦い気持ちは理解できる。だが現実的に勝率を最大限高めるために作戦を考えるべきでしょう。」

ウィリアム王子、ヘンリー王子が言い方は違うが、フィガロ王国軍の負担が大き過ぎることを指摘する。

「両者の言いたいことはわかった。だが我が軍が主力を果たすことは譲れんぞ。」


結局、フィガロ王、ヘンリー王子、ウィリアム王子の主張を調整し、

総大将はフィガロ王、

連合軍の中央部隊をフィガロ王国軍、

右翼をエール王国軍、

左翼をロンム王国軍、

遊撃と後詰めをフィガロ王国軍、

本陣の守りをその他参加国。

それぞれの役割を決め、行軍を開始することになった。



・・・暇だ。

各国の代表が発言をする会議において、ウィルのできることは何も無い。

ウィルはボーッと話を聞きながら、

早く終わらないかな~、とだけ考えていた。

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