ヘンリー王子
そして翌日。
「お待たせ致しました。ウィリアム=ドラクロアです。こちらは部下のリクソンです。」
「よく来てくれた。ウィリアム。」
「呼び出してすまんな。本格的な戦いの前にヘンリー王子とお前の顔合わせを済ませておくべきと思ってな。」
「フルブライト公爵のお呼びなら、どこでも駆けつけますよ。」
「お前なら、本当にどこでも駆けつけられそうだな。
まぁ、それはいいとして、情報を共有しましょう。我々の持っている情報をウィリアムに伝えておくことは大切でしょう。」
ヘンリー王子とその側近2名、フルブライト公爵、エリック、ウィリアム、リクソンの6人が集まっている。
「ウォーレン、状況を報告しろ。」
「はっ。現在、フィガロ王国の北側は闇の軍勢に蹂躙されています。
フィガロ王国軍は王都近くまで引きつけ、全戦力と友軍による総攻撃を計画しています。
フィガロ王国軍が15万。
エール王国軍3万。
ロンム王国軍も3万。
その他援軍4万。
合計25万程度の戦力を想定しています。
それに対して、闇の軍勢は約30~35万。
しかも指揮系統があるらしく、ただのモンスターの群れと侮ることはできないようです。」
「以上が現在の状況だ。ウィリアム君、何かあるかな?」
「そうですね。いくつか補足情報があります。まず、敵の兵力は40万。残念ながら増えています。敵はフィガロ王国北部に転移用の施設を作っています。黒い5つの柱を建てたような施設だよ。ダサイし無駄にデカイから、施設そのものはフィガロ王国も把握しているかもね。
モンスターのクセに指揮系統がしっかりしているのは一応『四天王』がいるからかな。大軍の中に精鋭を紛れ込ませている。油断しているとその精鋭に壁を崩され、後は数の力で押し潰すって感じの作戦みたいだね。
それとフィガロ王国の王都は負傷者と避難民で溢れています。下手をすれば決戦を前に自滅する可能性もある状況です。可能なら一部の部隊を先行させ、治療と食糧を提供することが必要かと。」
「なっ!
ちょっと待ってくれないか。
今の情報の信憑性はどの程度あるんだ。」
「かなり高いと思いますよ。」
「どうやって調べたんだ?」
「秘密です。」ニッコリと微笑むウィル。
頭を押さえながら考え込むヘンリー王子。
そこにフルブライト公爵が声をかける。
「これがウィリアムです。過程よりも結果を気にするべきかと。」
「・・・確かにな。
ウィリアム君、そこまで調べているということは対策も用意しているのかな?」
「そうですね。
まず、私の部隊を先行させて頂ければ、フィガロ王国に食糧と治療を供給することは可能です。」
「だが、避難民や負傷者は何万、いや何十万という人数になるだろう。君の部隊で運べる量では、あまり効果がないだろう。」
「それは見てのお楽しみです。行かせてもよろしいですか?」
「・・・許可しよう。」
「有難うございます。リクソン、後は頼むよ。」
「承知しました。」
「他の問題はどうだ?」
「敵の転移施設は1日あれば、いつでも破壊できますよ。フィガロ王国で各国の代表を含めての会議があるでしょうから、そこで報告してから破壊するのがよろしいかと。今後の対策にも必要な情報だと思いますので。」
「山のように疑問が湧いてくるが質問は無意味なのだろうな。」
「理解が早くて助かります。」
「頭が痛いな。。。」
「薬を用意しましょうか?」
「そう言う意味ではないのだが。
頭痛に効く薬があれば貰いたい。」
「ヘンリー王子。ウィリアムから薬を受け取るのは止した方がよろしいかと。」
エリックがヘンリーを止める。
「どういう意味だ?」
「ウィリアムは薬の価値観が少し特殊なのです。余計に頭痛のタネが増えるかと。」
「兄さん。そんな変な薬は出さないよ。それに私も学習しているんですよ。同じ失敗は繰り返しませんよ。」
ウィルが薬をヘンリー王子に差し出すと、側近その2が受け取った。
側近その2は薬をじっと見つめたまま動かない。その反応に訝しげに、
「どうした、ジョージ?」
「し、失礼致しました。」
「その薬に何か不審な点でもあったのか?」
「いえ、その、、、不審なところはどこにもない、優良な薬です。ただ優良過ぎるだけで、、、」
「どういう意味だ?」
「これは『精霊の雫』です。しかも非常に高品質です。こんな品質の良い物は見たことがありません。これを見れば国中の薬師が欲しがるでしょう。」
「それがウィリアムです。諦めてください。」
「エリックの言った意味がよくわかったよ。ウィリアム、その薬はしまっておいてくれ。」
「そうですか。わかりました。」
「本題に戻そう。『四天王』がいるとのことだが、その対応は可能か?勇者を呼んだ方が良いのではないか?」
「たかが『四天王』です。魔王本人でもないので、気にする必要もないでしょう。多少強かったとしても私の部下なら倒せるでしょう。」
「・・・わかった。それで『四天王』がいるという証拠はあるのか?ただ信じろ、だけでは話ができないぞ。」
「わざわざ話をする必要もないでしょう。味方の士気を下げるだけですし。向こうから名乗り出てきたら、私の部下を対処に行かせます。」
「わかった。理解は追いついていないが、父上もフルブライト卿も君を信じるように言っているんだ。君の話にはそれだけの価値があるのだろう。」
こうして、ヘンリー王子は頭を抱えつつも、ウィリアムを信用する決心をした。
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