闇の軍勢
時間を遡る。
勇者一行が王都を出発してしばらくした頃、エール王国の王宮には激震が走った。
闇の軍勢がフィガロ王国に現れ、大きな被害が発生。エール王国にも救援の依頼が入った。
フィガロ王国は5大国の1つである。
エール王国、ドルマ帝国、フィガロ王国、ロンム王国、カンロ連合王国。
この5国が世界の中心的な立場にある。
そのフィガロ王国が闇の軍勢に押されている。それは闇の軍勢を恐ろしさを伝えるには十分なインパクトであった。
エール王国は救援を約束。
しかし、5大国の態度は割れた。
ドルマ帝国は魔王の軍勢をチャンスと見て、弱ったところを攻める姿勢を示した。
ロンム王国もエール王国と同じく支援を約束。
カンロ連合王国は静観する姿勢。
結果、エール王国、ロンム王国および幾つかの国々の軍がフィガロ王国を救援するための軍勢を出した。
エール王国は第一王子であるヘンリーを大将として3万の軍勢を用意した。本来はドラクロア伯爵を参加させたかったが、ドルマ帝国の不穏な動きを意識し国内に残すことになった。
代わりと言ってはなんだが、フルブライト公爵とエリックが主力として参加している。
そして、ウィルはオデロに呼び出されていた。
「父上、参上致しました。」
「よく来てくれた。さっそくだが、状況はどこまで把握している?」
「フィガロ王国に援軍を出す件ですか。」
「そうだ。ヘンリー王子を代表に援軍を編成する。だが、主力はドルマ帝国への備えのため参加できない。寄せ集めで数だけはそろえたいう状態だ。脇を固めるためにフルブライト公爵とエリックが参加することになった。ウィル。
手を貸してくれないか。」
「もちろんです。リクソン率いる精鋭500を参加できるように準備を進めております。実際の戦いには私も参加致します。」
「すまんな。見込みはどうだ?」
「私が参加するんですよ。負けはあり得ません。」
「頼もしいな。お前がそう言うと、そうだと思える。」
「とりあえず、勝つための準備を進めておきます。それと帝国に動きがあれば、そちらも牽制するから、ご心配なく。
こんな時にくだらない人間同士の争いしている場合じゃないですからね。」
「帝国への備えは常にしている。そちらは問題無い。」
そして、エール王国の援軍が出発した。
本陣において、
「ヘンリー王子、進軍が想定よりも遅れております。」
「原因はなんだ?それほど行軍速度は上げていないだろう。」
「それにすら遅れるほどの連中が参加しているということだろう。」
「フルブライト公爵、あなたの目から見て今の我が軍はいかがですか?」
「3万の軍勢ではあるが、実際に戦力として使えるのは1万だろう。王子の直轄部隊と、ドラクロア軍と私のところの部隊だけだ。他の連中はただの人数あわせ、足手まといだ。王子もそこを割りきって考えた方が良いですよ。」
「しかし、相手は大軍。こちらも最大限に力を発揮せねばならない。その2万を有効に使わねばならないだろう。」
「表向きは、その通りです。ですが、使い道は肉壁とか囮とか、その程度しかありません。使える戦力を有効に使うことだけを考えた方がよろしいでしょう。」
「エリックも同じ意見か?」
「はい。フルブライト卿ほど、明け透けに申し上げることはできませんが、練度の低い部隊に合わせていては全軍の士気が下がります。」
「確かにな。フルブライト公爵、どうすればいいと思う?」
「直轄部隊を中心に考えて、遅れる者には罰則を用意すればいいでしょう。罰則を恐れて急げるなら良し、それすらできない連中はそもそも戦力にはなりません。」
「わかった。他に何かあるか?」
「本格的な戦いが始まる前にウィリアム=ドラクロアと打合せの時間を作るべきでしょう。」
「ウィリアム=ドラクロアか。
父上からは『ウィリアム=ドラクロアを信じろ』と指示を受けている。どこにいるのだ?」
「では、明日の夜、顔を出すように伝えておきます。」
「従軍しているのか?」
「ウィリアムは神出鬼没です。今はどこにいるかわかりませんが、彼の部下が従軍しています。連絡を頼めば可能でしょう。」
「どういうことだ?」
「ウィリアムに関しては深く考えるだけ無駄です。アイツができると言ったことはできる。強制は誰にもできない。それを事実として受け入れるだけです。理屈は無意味です。」
「父上も似たようなことを仰っていたよ。何者なんだ?いや、聞くだけ無駄なんだな。」
「素早いご理解に感謝致します。」
「明日会えば少しは理解できるかもしれないな。」
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