それぞれの伝説

旅は順調だった。

颯爽と走り抜ける馬車。

特に大きなトラブルもなく、既に3週間が過ぎた。この調子でいけば、後1週間ぐらいで勇者の塔にたどり着けるだろう。


馬車に乗っているのはハンスとコロネの2人だけ。勇者一行はドラクロアダンジョンでレベルアップに励んでいるので、馬車には王都を出た時しか乗っていない。

「しかし、この馬車は凄いな。」

「当然です。ウィル様が作られた馬車ですから。」

「そりゃ、その通りなんだが。。。

御者席までこんなに快適に作ってくれたウィル様には感謝だな。」

「ウィル様には感謝しかありません。」


(は~、コロネはウィル様のことになると盲信的だからな。)


「今頃、勇者様たちは何してるのかな?」

「ウィル様に鍛えて頂けるなんて、羨ましいですね。」

「ウィル様のトレーニングか~。すぐに強くなれそうだが、俺はパスだな。内容がえげつなそうだ。」

「そんなことを言っていては強くなれませんよ。」

「いいんだよ。俺はそこまでの強さは求めて無いから。」

「そんなだから、結婚できないんですよ。」

「なっ!それとこれとは関係無いだろ!」


馬車の上では暇な2人がどうでもいい会話を交わしていた。



その頃ドラクロアダンジョンの勇者一行は、

「やったぞ!!これで俺もレベル70だ!」

レオンが叫んでいた。

「全員がレベル70をクリアしましたね。」

「これで全員『伝説職』よ。」

「そうですね。早くミリアさんのところに参りましょう。」

「どんな職業になるのか楽しみだ。」

「職業の名前を聞いてもピンとこないんだろうけどね。」


テンションMAXの一行はさっそくミリアのところに駆けつけた。

「みなさん、お久しぶりです。そんなに慌ててどうされたのですか?」

「ミリアさん、ここにいるメンバーの『転職の儀』をお願いしたいの。」

「まぁ!ついに『伝説職』になられるのですね!おめでとうございます。」

ミリアが満面の笑顔で祝福する。

「内容が内容ですので、あまり大っぴらにはできませんね。ウィル様の屋敷に行きましょう。あそこなら十分なスペースもありますので。」

「じゃあ一緒に行きましょう。」

「わかりました。」


「それでは順番に『転職の儀』を行います。どなたから行いますか?」

「では、私からお願いします。」

クラリスが名乗り出た。

そして順番に転職を済ませていった。


クラリスは『魔を極めし者』

リディアは『竜姫』

エリュートロンは『鉄壁のアークナイト』

モーリンは『命の護り手』

キースは『バトルマスター』

レオンは『口先男』


・・・

「口先男!!!!!」

レオンが叫んでいた。


「待て待て待て!

なんなんだ!

『口先男』って!

ホントに伝説職なんだよな?!」

「大丈夫です。

間違いなく伝説職です。

転職してすぐは違いがわかりにくいですが、レベルを上げれば明確に違いが出ると思います。」

「本当に優秀なんだよな?!」

「・・・おそらくは、、、」

「今、変な間があったよね?大丈夫だよね?」


しばらくレオンがぐずぐずと言っていたが、

「仕方ないでしょ。伝説職に関する情報なんてほとんど無いんだから、ミリアさんも答えられないわよ。」

「ミリアさん、有難うございました。ダンジョンでレベル上げをしてきます。」

最後はクラリスが強引に締めて、ダンジョンに向けて出発した。



そして、明日には勇者の塔に到着というタイミングでカレンたちはミーティングの時間を作った。

「明日から勇者の塔に挑むことになると思います。その前に伝説職になって、何ができるようになったかを共有しましょう。

まずは私からでいいかしら?」

みんながこくりと頷く。


「私は『魔を極めし者』になったことで、より上位の攻撃魔法を使えるようになったのと、2つの魔法を同時に使えるようになったわ。火力が大幅にアップしたわ。」


「では次は私です。

『竜姫』はドラゴン化というスキルとブレスというスキルが特徴です。短時間ならドラゴンになって暴れたり、人の姿のままでもブレスが使えます。戦闘の幅が大きく広がりました。」


「『鉄壁のアークナイト』は名前の通り、防御力が非常に高いです。さらに結界を張ったり、ダメージを肩代わりしたりするスキルと自己回復スキルもあるから、生存能力がかなり高いわ。より盾役としての活躍を期待してください。」


「私は『命の護り手』です!回復系スキルのパワーアップと攻撃魔法や防御魔法が取得できました。今までよりも戦闘時の役割が増えると思う。」


「俺の『バトルマスター』は近接戦闘に特化した職業だな。基本の攻撃力、防御力、素早さ、どれもが高い。しかもカレンみたいに短時間ステータスをアップさせるスキルもあるから、カレンのステータスアップと協力して大ダメージを与えられると思う。俺のステータスアップは魔法系のステータスは含まないけどな。」


「俺もパワーアップしたぞ。元々戦闘職じゃないけど、味方をパワーアップさせたり、敵の能力を低下させたりできるんだ。しかも歌とかと一緒で魔法と重ねがけができるから、効果はデカイぜ。もちろん本来の交渉に関しては、反則級のスキルが手に入れたから、そっちも期待してくれ。」


「明日からも頑張っていこ~!」

「「「「おー!」」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る