勇者の出発

カレンたちを乗せたウィル製の馬車が王都を離れて行く。

残念ながら、見送りはいない。

勇者の正体を公開する訳にはいかないために、ひそかに出発していた。

これから魔王討伐への長い旅が始まる。

そんなことを考えながら、、、


あっという間にドラクロアダンジョンに転移した。



「みんな、ようこそ。

ここでのトレーニングをする上で、いくつか伝えておきたいことがあるんだ。」

「えっ?ここでやった合宿と何か違うのか?」

「合宿と違って、長期間滞在することになるからね。さすがに屋敷とダンジョンだけだと退屈でしょ。だから、ダンジョンの中街への立ち入り許可を出そうと思ってね。」

「噂のダンジョンの中の街か!」

「噂だけは聞いたことがあるけど、どこまでが本当なのかわからないわ。気になってたのよね。」

「ちょっと特殊な街だから、事前にいくつか約束をしてもらわないとダメなんだ。」

「どのような約束ですか?」

「ダンジョンの中街の物品を許可なく外に持ち出さない。中街の情報を洩らさない。ざっくり言うとそんなところかな。」

「理由を伺ってもいいかしら?」

「ダンジョンの中街の物品は世間一般の物と品質が違い過ぎるんだ。簡単に外に出すと市場に大きな混乱を呼んでしまう。」

「そこまでですか。」

「まぁ、現物を見ればわかるよ。王都の武器屋では目玉扱いの商品がただの失敗作扱い、ぐらいの差があるかな。」

「ウィルの街だと思えば納得かも。」

「確かにね。」


「なんかひどい言われようだな~。

まぁ、いいか。

それでね、今後はダンジョンで手に入れた素材とかをポックルに集めといて。

それを街の担当が買い取るから、その代金で街で買い物をしてよ。この街は独自通貨を使っているから、エール王国のお金はそのまま使えないからね。買取り代金でやりくりしてね。

私からは食事や寝る場所は提供するけど、前みたいにモーリン用のマジックアイテムとかは渡さないから、街で調達して。」

「なんか面白そうだな。」

「でもエール王国のお金が使えないのは不便じゃない?」

「物の価値が外と中で違い過ぎるから、調整が必要なんだよ。」

「なるほどね。」


「ただし!

当然、魔王討伐のためのレベルアップが最優先だからね。

午前は前からやってる強敵との戦闘。

午後はダンジョンで適正レベルのモンスターと戦闘。

それが早く終わったら、街中を楽しむ。

って感じかな。」

「みなさん、頑張りましょう!」

「そうだな。すげえレベル上げて魔王を驚かせてやろうぜ。」

「カレンが史上最強の勇者になったりして♪」

「勇者の塔より、ウィルのトレーニングの方がハードそうね。」

「やりがいがあった方がいい。」


「それと、みんなに1つだけアドバイス。

もう、みんなレベル60ぐらいだよね。

ということは、レベル70での伝説職への転職が間近なんだ。転職後に、マジックアイテムでモンスターを殲滅して、一気にレベルアップしたいなら、マジックアイテムは大量に必要だよ。それは忘れずに用意しようね。」

「伝説職。。。」

「私たちも伝説職になれるのよね?」

「誰でも上級職レベル70まで上げればなれるよ。やっぱり上級職と伝説職ではポテンシャルが全然違うから、魔王との戦いが本格化する前になっときたいね。」

「あ~、夢みたい。私なんか元々標準職だったんだよ。それが伝説職なんて。」

「みんなそうよ。伝説職なんておとぎ話の世界にしか出てこないもの。」

「ウィルの周囲にはいっぱいいそうで聞くのが怖いけど。」

「もちろんいるよ。カシムやソニアは伝説職だよ。」

「やっぱりか~。」


「勇者の塔に到着するまでに全員伝説職のレベル70を目標にしたいね。」

「さらっ言うけど、それって凄いことだからな!」

「そうそう。一般的な冒険者って標準職のレベル10ぐらいだぞ。」

「レベル30あれば、騎士団でも十分やっていけますわ。」


「勇者のパーティーが普通じゃダメでしょ。やっぱり特別じゃないと。

さてと、長々話をしちゃったね。

そろそろ戦闘準備に入ろうか。

今日は旅の初日ってことで、派手なモンスター用意しといたよ。」

「みなさん。張り切っていきましょう!」

「「「「「はい!」」」」」

クラリスの掛け声に全員が応えた。

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