続プレゼント
「このブレスレットはクラリスが持っておいて。」
「これは何かしら?」
「通信用の魔道具だよ。私とハンスが持っているブレスレットと通話できるんだ。クラリスのが赤、ハンスのが黄色、私のが青。
それぞれ対応する魔石に魔力を込めると対応したブレスレットに信号が飛ぶんだ。そして受信側も魔力を込めると通話が可能だよ。」
「既存の通信用の魔道具とは全然違うわね。」
「通信相手を限定して、使用者が魔力供給も行うことで、サイズダウンに成功したんだ。」
「使い捨ての通信用の魔道具よりも嵩張らないなんて。」
「但し、距離が離れれば離れるほど魔力の消費が大きくなるから気をつけてね。」
「まぁ当たり前のことですわね。」
「次はイチオシだよ。
じゃ~ん!
ポックル出ておいで。」
ウィルはペンダントを差し出す。
ペンダントから光が溢れる。
すると、そこには手のひらサイズの小さな男の子が飛んでいた。
「気安く呼ぶなよな。」
「自己紹介と特技を教えてあげて。」
「俺様の名前はポックル様だ。特技は『生活魔法』と『アイテムボックス』だ。驚いたか!」
小さな男の子が胸を張る。
「ざっくり説明すると、
暗ければ光を出し、足りなければ複数出す。
暑ければ涼しく、寒ければ暖かくして、
服が汚れれば洗浄し、濡れれば乾かす。
喉が渇けば水を出す。そういう便利な魔法が特技だね。
それとアイテムボックスには小さな小屋ぐらいの荷物を入れられるから、まあまあ使えるかな。
但し、戦闘に向いた特技は持ってないから、注意が必要だよ。激しい戦闘になる場合はペンダントに戻しておいてね。」
「かわいいし、とても便利な特技ね。」
「俺様、スゲーだろ!」
「じゃあ、モーリン。ペンダントを渡しておくね。」
「は~い。よろしくね、ポックルちゃん。」
「仲良くする気はねぇからな。」
「大丈夫なんですか?
モンスターなんですよね?
仲良くしないって言ってますし。」
「大丈夫だよ。ペンダントの持ち主の言うことをしっかり聞くから。でも、なんかモンスターとしての狂暴さが変な方向に作用して、素直じゃないんだよね。」
「大丈夫よ。かわいいね~。」
「やめろよ。撫でるなよ!」
ポックルをモーリンが撫でている。
ポックルは口では嫌がりながらも逃げようとはしない。
そんなこんなでウィルからのプレゼントタイムは終了。
今後のスケジュールを打合せするためにカレンたちとハンスとコロネが残った。
「なんかすごく疲れた顔してるけど、大丈夫か?」ハンスが声をかけると、
「ちょっと想定外のトラブルが起きてしまって、、、」カレンが力なく答える。
「どうしたんだ?俺はこれでも元冒険者だから、旅の不安や問題には慣れてるぞ。」
「ハンス様、ご厚意有難うございます。
ですが、そういう種類のトラブルではないのです。」
「ハンス様は止してくれ。俺はただの御者で平民だ。様なんて言われ馴れてないからな。
本題に戻すが、ウィル様のプレゼントにやらかした物があったのか?」
「は~、今の反応を見る限り、ハンスさんはこっち側の人で大丈夫そうだな。」
「あ~、ウィル様に馴れてはいるが、元々は普通の冒険者だ。常識は捨ててないぞ。」
「実はウィルと会う前に国王陛下とお会いしてきたのです。その時に馬車と稀少な魔道具を頂いたところなのです。」
「あちゃ~、そいつは災難だったな。
なんだったらウィル様には俺の方から断っておこうか?」
「その必要はございません。どう考えてもウィルの馬車の方が効率が良いのは間違いありません。陛下には後で私からお断りをしておきます。」
「王様からのプレゼントを返すって、なかなか胃の痛い仕事だな。」
「私にしかできない役目でしょう。」
「クラリスがいてくれて、本当に良かったわ。」
「ウィル様の用意するアイテムと比較されると、どうしようもないからな。」
「これからのことを考えると頭が痛いわ。」
「まぁ、そうだろうな。ただ、目的のロンム王国まで普通の馬車なら2ヶ月ぐらいは最低必要だからな。その時間を短縮して、かつトレーニングに使えるのは大きいぞ。」
「ハンスさんのおっしゃる通りね。魔王を倒すまで、そんな細かい事を気にしていてはダメね。」
「王様のプレゼントをそっくりそのまま返すのは、細かい事じゃないと思うのは俺だけか?」
「諦めましょう。常識を捨てないと魔王には勝てないと考えましょう。」
「まぁ、頑張ってくれよ。
俺とコロネはいつでも出発できるように準備しておくから、出発の日時が決まったら、ブレスレットで連絡してくれよな。」
「有難うございます。ハンスさん。」
ハンスと別れて帰る勇者一行。
ただプレゼントを貰っただけなのに、全員が疲れ果てていた。
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