プレゼント
王宮にて。
国王がカレンたちに声をかける。
「勇者カレンとその仲間たちよ。
よく来てくれた。
これから本格的な魔王との戦いになる。
心して挑んでほしい。
まずは『勇者の塔』を目指してほしい。西方にあるロンム王国にあるダンジョンだ。特殊なダンジョンで勇者一行しか入ることができないのだ。
歴代の勇者はそこでレベルを上げ、勇者のための装備をそこに安置しているらしい。
この塔のことは各国の首脳しか知らされていない。魔王に存在を知られずに準備を進められる場所だ。
よいか?」
カレンが緊張しながらも、
「わかりました。『勇者の塔』を目指して出発致します。」
「よく言ってくれた。
私としても君たちを全面的に協力したいと思っている。王として、また父親として、皆を少しでも助けたいと思っている。
普通なら、王国にある武器や防具を渡すところだが、既に君たちは国宝級の装備をしているからね。今更渡したところで意味がない。
そこで、これからの冒険に役立つアイテムを渡そうと思う。」
「お心遣い、誠に有難うございます。」
「気にするな。勇者の力になりたいという気持ちは皆同じはずだ。
まずは馬車だ。
これからロンム王国まで長旅になるからな。
少しでも快適になるように最高の物を用意した。もちろん御者も馬も優秀だ。こちらでいつでも出発できる準備をしておこう。出発する時は係りの者に声をかけてくれ。」
「有難うございます。」
「次にダンジョンで使える便利なアイテムだ。勇者の塔がどのようなダンジョンかわからない。備えはしっかりしないといけないからな。
まずは『光の剣』。
この剣は刀身が常に光っている。カンテラの代わりに使えて、いざという時には武器としても使える。攻撃力は低いが、カンテラを置いて武器を取り出す手間を省けるのは大きいだろう。
そして、この『マジックバッグ』。
街で手に入る物は容積3倍程度だが、これは5倍入る。少しでも荷物は少ない方がいいからな。
それから、『使い捨て通信機』だ。
通信用の魔道具は大型で持ち運びできないが、これなら持ち運びも簡単にできる。使えば1分間、どこからでも王宮と通信ができる。5つ用意したので有効に使ってほしい。
最後に『保存箱』だ。
これはなかに入れた食品などの劣化速度を大幅に抑制してくれる。長旅でいつも保存食では活力が出ないからな。馬車に設置しておけば便利だろう。
今、用意したのはこれだけだ。
何か困ったことがあれば相談してほしい。
我々は君たちの味方だ。」
「陛下のお心遣い、誠に有難うございます。有効に使わせて頂きます。」
王宮を離れて、ウィルの部屋に向かいながら、
「陛下、色々用意してくれたね。」
「本当にありがたいわ。」
「父上があそこまで明確に勇者支援を出せば、足を引っ張る貴族も出てこないでしょう。」
「ご期待に沿えるように頑張らないと。」
「ウィルは何を用意してくれてるのかな?」
「考えるだけ無駄よ。想像の範囲内に収まらない人だから。」
「フフフ、確かにね。」
そんな話をしている間にウィルの部屋に到着。
コンコンコン
「ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ。」
ソニアがみんなを案内する。
「ウィル、お待たせしたわね。」
「全然大丈夫だよ。ちょっとこっちに来て。」
ウィルは全員を連れて転移をした。
「いきなり転移するなよ。びっくりしたぜ。」
「ごめん、ごめん。さすがに部屋では見せられない大きさのプレゼントだからね。これを見てよ。」
ウィルが指したところには馬車と2人の男女がいた。
「プレゼント1つ目は馬車とその行者だよ。
前に乗ったことのある馬車をバージョンアップしました。移動速度や快適性はそのまま。長旅のために馬車内にウィリアムの街への転移陣を設置しておいたよ。これで移動中も時間を無駄にせずにダンジョンでレベル上げできるし、食事や寝る場所、お風呂なんかも全て問題解決だね。街に入る時と出る時だけ馬車に乗ってれば問題ないでしょ。
それで御者だけど、こっちのハンスとコロネがやってくれる。」
「ハンスです。よろしくお願いします。」
「コロネと申します。よろしくお願い致します。」
「ハンスは斥候担当の元冒険者だ。スムーズな移動の助けになると思う。
コロネは戦闘もできるメイドだ。身の回りのお世話をしてくれるから、旅の途中も快適だよ。
2人とも上級職のレベル50はあるから、足手まといにはならないよ。」
「は~、レベル50が足手まといにはならないって扱いかよ。」
「そもそもハンスとコロネの役割は道中の効率化と待機中の馬車の護衛だよ。ダンジョンには一緒に入らないから、そのつもりでいてね。」
「レベルの感覚がおかしくなりそうですわ。」
「ウィルクオリティに馴れないとね。」
「まだまだプレゼントとの途中だから、これぐらいのことで止まってたら進まないよ。」
ウィルからの地獄のプレゼントタイムは続くのであった。
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