幕間 宰相と騎士団長

時間を少し遡る。

勇者パーティーとの面談を終えた後の王様と宰相と騎士団長。


「あのドラクロアの息子の態度はなんですか!」騎士団長が苦言を呈する。

「陛下が気にかけてらっしゃるのは存じておりますが、あまり特別待遇をし過ぎるのは問題かと。」宰相も遺憾を示す。

「うむ。2人には今後のために、ウィリアムについて知っておいてもらった方がよいな。」

王はそう言うと盗聴防止の魔道具を作動させた。


「まずはウィリアム=ドラクロアについて、どの程度知っている?」

王は騎士団長に問いかけた。

「ドラクロア卿の息子でフルブライト卿のお気に入り、成績優秀でクラリス王女様とも友人関係にある、と認識しております。」

「何か補則はあるか?」

今度は宰相に向けて問いかける。

「ドラクロアダンジョンの発見者で、ウィリアムの街の運営を行っております。年齢から考えれば、かなり異常な存在だとは思います。」


「なるほどな。表に流れている情報はその程度だろう。2人とも間違ってはいないが秘匿されている情報がまだある。これから話す内容は口外不要だぞ。」

「「わかりました。」」


「まずは本人の能力だが、リディアの実力はどの程度だ?」

「騎士団でもトップクラスです。後2~3年もすれば、間違いなく1位になります。」

「そのリディアと同等クラスの実力者が4人で挑んでも、ウィリアムには傷1つつけられなかったそうだ。」

「なっ!」

「更に魔法に関しても、クラリスが手も足も出ないと言っていた。」

「そんな!クラリス様は宮廷魔術師が舌を巻くほどの実力ですよ。」

「剣も魔法も王国一と思って間違いないだろう。ウィリアム個人と戦うだけでもどれだけの被害が出るか想像できない。更にウィリアムは私兵団も持っている。規模も500人程度。強さは演習でドラクロア家の同数の精鋭を一蹴してしまうレベルだ。」

「本当にドラクロア家の精鋭に勝ったのですか!?」

「オデロはそんな嘘はつかん。負けて悔しいかと尋ねたら、『鷹が竜に負けて悔しがりますか?』と返されたよ。」

「それほどの精鋭部隊を個人で持っているとは、、、」

「更にウィリアムは冒険者としてもAランクになっており、冒険者ギルドの上層部とも懇意にしている。過去にはレベル30超えの実力者を50人程度ならすぐに集められた実績がある。」

「凄まじい軍事力です。学生が持つには行き過ぎです。」


「もし、ウィリアムと全面的に戦うとなった場合、ウィリアムの私兵団や冒険者に加えて、ドラクロア家、フルブライト家、マイガング家はウィリアムを支援するだろう。その意味がわかるだろう?」

「そんなっ!」

「陛下、ドラクロア家はわかりますが、フルブライト家やマイガング家はウィリアム支持に回ることは無いでしょう。」

「それはウィリアムを知らないから言えるのだ。よほどの事情が無い限り、ウィリアム支持に回る。ウィリアムはそれだけの存在だ。他の貴族の動き次第では負けかねない。」


「少し脅すような内容になったが、ウィリアムの望む国の在り方は私の理想に近い。

ウィリアムの街の発展だけではなく、そこで作られた農機具が生産の向上に役立っている。ウィリアムは軍人としてだけではなく、開拓者、生産者としても非常に優秀だ。ここ数年の好景気はウィリアムがもたらしていると言っても過言ではない。

協力できるパートナーだと思っている。」

「パートナーですか。」

「そうだ。この国には無くてはならない人物だ。確かに無礼とも取れる態度だが、ウィリアム自身は目立ちたいとも偉くなりたいとも思っていない。自由に好きなことをしたいと思っているだけだ。」

「ですが、家臣としての振る舞いを覚えさせる必要はあるかと思います。」

「わざわざ私を貶めるような振る舞いはせんよ。今回も非公式な場だったから正直に言ってきたのだろう。頭の良い男だ。」


「陛下の話を信じない訳ではございませんが、いささか過大な評価ではございませんか?」

「にわかには信じられんだろう。それでいい。だが、これだけは理解しておいてくれ。『私はウィリアムを国を発展させていく上で、大切なパートナーだと思っている。危害を加える者は許さない』とね。」

「「はっ!(はい。)承知致しました。」」

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