結果発表

カレンが回復もできることから、長期戦の様相を呈してきた。

再びエリュートロンを中心に攻撃を仕掛けてくる。

ウィルが先ほどの吹き飛ばし攻撃を仕掛けても、二度目ともなると、すぐに対応してきた。カレンとリディアは無理に攻撃せず、エリュートロンとの連携を優先してきた。


ここでウィルが仕掛ける。

スピードとパワーを少し上げる。

3人は崩れないが細かいダメージが増える。

距離を取って立て直したいところだが、ウィルが離れてくれない。

じわりじわりとダメージが溜まっていく。

このままウィルが押しきるかと思われたが、カレンが勇者のスキルを使う。

全てのステータスが大幅に上昇する。


カレンが攻撃を仕掛けようとすると、ウィルがエリュートロンを押し込み、エリュートロンが邪魔になって攻撃できない。カレンが回り込んで攻撃しようとすると、今度はリディアを盾にしてしまう。

ウィルは常にカレンとの間にリディアかエリュートロンを入れ、攻撃の邪魔をさせた。

リディアやエリュートロンも抜け出そうと動くがウィルに巧みに阻止されてしまう。

せっかくのステータスアップなのに有効打が与えられないことにイラつくカレン。リディアとエリュートロンも足を引っ張っていることに焦る一方。


カレンがリディアを強引に押し退け、攻撃を放とうとしたが、ウィルがエリュートロンを身代わりに入れ替わってしまい、不発。

フラストレーションが溜まるカレンが更に強引に前に出る。

しかし、ウィルはするするとリディアやエリュートロンを挟む位置に移動してしまう。

そんなことを繰り返す内に、スキルの残り時間が少なくなってきた。

3人が焦れば焦るほど、ウィルに巧くあしらわれてしまう。


そんな中、カレンの横薙ぎの攻撃をあえてエリュートロンが盾で受けて、強引に離脱。リディアもタイミングを合わせて、ウィルと反対方向に突撃系のスキルを使用して離脱した。

ようやく、1対1の場面が作れた。

カレンは熾烈な攻撃を放つ。

「どうやら勘違いしているみたいだね。1対1で戦いやすいのはこちらも同じだよ。強化スキルを使えば勝てるとでも思った?」

カレンの攻撃を易々とかわし、カレンに斬撃を与えていく。


圧倒的な連打にカレンは致命傷を受けないようにするのが精一杯だった。

身動きの取れないカレンをリディアとエリュートロンがヘルプに入る。

リディアの槍をかわして、ウィルが距離を取る。


カレンの救出には成功したが、カレンの強化スキルの継続時間が終了した。

「残念だったね。

スキルを使った時の連携はもう少し練習が必要だと思うよ。

もう勝敗は決したと思うし、世界最高レベルの技、目に焼きつけな。」


ウィルは剣を構えると、

「龍閃」

目にも止まらぬ速さで3人の間を駆け抜ける。普通の人にはウィルが瞬間移動したようにしか見えない。

ウィルが立ち止まった後、3人が倒れこんだ。

「「「参りました。」」」

3人が降参を宣言し、試験は終了。


「今のどうだった?」

「凄まじいスピードで駆け抜けながら私たち全員に連打を放っていました。それも私たちが死なないように威力を大幅に抑えて。」

「あのスピードであの手数。しかも手加減までする。ウィルと私たちの実力差を感じました。」

「どうすれば防御できるのか想像できません。」

「今はそれでいいよ。今のができるようになれば、大抵の敵は倒せるよ。」



試験は無事終了。

翌日の選択科目の試験も滞りなく終わり、ウィルは3年間満点をキープすることに成功した。


「卒業式の翌日は王宮で今後の方針を打合せです。」

「ウィルは来ないんだよな。」

「ああ、呼ばれてないよ。」

「ウィルがいてくれたら心強いんだけどな。」

「確かに。もしかしたらウィル1人で魔王倒せちゃうんじゃないか、って思うことあるもん。」

「逆にウィルより強い敵というのがなかなか想像できないな。」

「大丈夫だよ。おそらく魔王の方が弱いから。ただ、私が倒す訳にはいかないんだ。『魔王は勇者が倒す』。そのルールを破る訳にはいかないんだよ。」

「なんなのそれ??」

「もう少し私たちに分かるように説明してください。」


「そんなに難しい話じゃないよ。魔王を謎の男があっさり倒したなんてことになれば、歴史が崩れる。人々は魔王への備えを怠るかもしれないし、勇者に協力しなくなるかもしれない。だから勇者が強くなるための協力はするけど、勇者の代わりに魔王を倒したり、勇者以上に活躍して魔王を倒すってこともしたくないんだ。」


「なるほどね。父上の要請を断ったのには理由があったのね。」

「しっかし、魔王が自分より弱いって断言するあたり、さすがウィルだな。」

「魔王の最大の特徴は闇の軍団を生み出すことなんだ。決して1対1に特化しているわけじゃない。だから、勇者という切り札が有効なんだよ。少数精鋭で魔王の居城にたどり着いて、魔王単体を狙い撃ちするわけさ。」

「そういうことか。昔から勇者の話を聞く度に違和感があったんだ。なんで大軍で攻めないのかって。」

「魔王が生み出した闇の軍団と戦うのが一般人の役目だよ。その間に魔王の首を刈る。カレン、大変な役目だけど、全力でサポートするから安心して。」

「はい。明日から本格的に魔王との戦いが始まる。絶対に負けません。」

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