王宮にて

数日後、

ウィルたちは王宮から呼び出しを受けて、放課後王宮に向かった。

案内役はリディア。

クラリスは同行していない。

リディアを先頭にウィル、キース、レオン、カレン、エリュートロン、モーリンと続いた。

「私、王宮に入るなんて初めて。緊張するわ~。」

モーリンが不安そうに言うと、

「心配しなくとも大丈夫だ陛下はお優しい方だ。それに私たちはクラリス様の友人でもある。むげにはされないさ。」

「でもモーリンの反応が普通だぞ。平然としてるウィルの方が異常だ。」

「単純に友だちのお父さんに会うと思えば緊張も無いでしょ。」

「ウィルは特殊だわ。学生の身分で王宮に呼ばれることなど普通は無いから、緊張して当たり前です。」

「緊張をほぐすために新作の魔法でも披露しようか?」

「「「「「「ダメだ(よ)!!!」」」」」

「そんな無茶苦茶な魔法は使わないよ。ちょっと王宮の気温が20度ぐらい下がるだけだよ。」

「絶対に止めてください。大混乱になって、陛下と話をするどころではなくなります。」



なんやかんやで部屋に到着した。

小さな会議室だった。

「こちらに掛けてお待ちください。」

リディアに言われて、ウィルたちは一列に並んで座った。


しばらく待つと、

騎士団長、宰相、国王陛下、クラリスの順番に入ってきた。

最少人数で来た感じだね。


「楽にしてくれ。腹をわって話せるように人数を減らしてきた。」

みんな、話しかけられても、どう返事をしていいかもわからない感じ。


「クラリスから、カレンが勇者であることは皆が知っている、と聞いている。

皆にお願いしたいことがある。

勇者カレンの力になって欲しい。」


「陛下、内容が曖昧過ぎます。

我々はカレンの友人であり、仲間です。

陛下に頼まれなくともカレンの力になりたいと考えています。

ただ、我々が考える『力になる』と陛下が考える『力になる』に大きな隔たりがあっては困るでしょう。

何をして欲しいのかはっきりとおっしゃってください。」


ウィルの発言に周囲は固まる。

騎士団長はウィルを睨み付けるが発言はしない。おそらく陛下に口を開かぬように指示されているのだろう。


「ウィルの言う通りだな。

個別に私の要望を伝えよう。

まずはクラリス。

勇者カレンと共に魔王と戦って欲しい。」

「仰せのままに。」


「リディア。本日より護衛対象に勇者カレンを含める。」

「はっ!」


「レオン。勇者カレンのパーティーに同行し、諸国との折衝に力を尽くして欲しい。勇者の旅は幾つもの国を訪れることになるだろう。場合によっては現地の国と協力して戦うこともあるだろう。他国から勧誘や駆引きをされる場合もあるだろう。そういった問題に対応して欲しい。」

「承知致しました。」


「エリュートロン。勇者カレンのパーティーでその力を示して欲しい。」

「わかりました。」


「キース。同じく勇者カレンのパーティーでその力を示して欲しい。」

「喜んで。」


「モーリン。勇者カレンに同行し、その傷を癒して欲しい。」

「承知致しました。」


「ウィリアム。そなたも勇者カレンのパーティーでその力を示して欲しい。」

「お断りします。」


「なっ!」

あまりのことに宰相が驚きの言葉を漏らす。

レオンたちも互いに顔を見合うが声は出せない。


「どういう意味かな?」

国王は落ち着いた調子でウィルに尋ねる。

「カレンには協力します。しかし、パーティーには入りません。私は独自に動きます。その方ができることも多いのでね。」

「だが、ウィリアム。そなたと勇者カレンが共に戦えば心強い。それではダメなのか?」

「ダンジョンでのレベル上げでも、私は参加していません。他のメンバーだけでパーティーを組んでいます。今と変わりませんよ。」


「わかった。パーティーに入らずとも協力できることはあるだろう。ウィリアムが最善と思う行動をしてくれれば良い。

さてと、このような話をしたが、すぐに魔王討伐に出てもらう訳ではない。まだ魔王の所在も明らかになっていないからな。まずは引き続き学園で腕を磨いて欲しい。来るべき時に力が発揮できるように。よいかな?」

「「「「はっ!」」」」



王宮からの帰り道。

クラリスとリディア、レオンは王宮に残った。

「は~、緊張した~。」

「そう?」

「一番緊張したのはウィルが王様の話を拒否した時だったんだからね!」

「なんでそれでモーリンが緊張するの?」

「普通は陛下の発言を真っ向から否定するなんて、あり得ないことですわ!」

「騎士団長も無茶苦茶睨んでたぞ。」

「大丈夫。あの騎士団長ぐらいなら簡単に勝てるし。」

「は~、ウィルに普通の感覚を話するだけ無駄よ。」


「とりあえず、明日から魔王を倒すためのトレーニングに重点を置いていこう。」

「そんなことできるのか?」

「うーん、当面は格上の相手との戦い方を練習かな。今まで格下の集団との戦闘が中心だったからね。」

「宜しくお願いします!」

カレンがやる気をみせている。


トレーニングメニューを考えないとね。

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