幕間 マルコ=プルートウ

時を遡る。

ウィルによりプルートウ侯爵裏切りの情報がもたらされた。

その情報をきっかけにフルブライト公爵は最速で息子に兵を預けて出発させた。

それと同時に王都のプルートウ侯爵邸や息子のマルコに見張りをつけた。曖昧な情報では強行手段をとるわけにもいかず、かといって、放置もできなかったため、仕方なく監視を行っていた。


そして数日後、

プルートウ侯爵が裏切ったとの情報が戦場からもたらされた。

すぐに邸宅とマルコの身柄を押さえる動きをしたフルブライト公爵。

同時に国王陛下にも内密に連絡を入れている。



そして学園にて。

マルコは放課後をいつもの太鼓持ち2人と過ごしていた。

マルコはトレーニングと言って、よく屋外の訓練場で練習中の学生に声をかけて、ボコボコにしてストレスを発散するということをやっていた。

屋外の訓練場は下位のクラスの学生が使用することが多く、侯爵の息子であるマルコに文句を言える学生はまずいない。


「ザコ過ぎて話にならんな。」

「2年生を相手に瞬殺してしまうマルコ様が強過ぎるんですよ。」

「そうですよ。この前も3年生が泣きながら命乞いしてきたじゃないですか。」

「俺なら恥ずかしくて生きてられないな。」

「「「ハッハッハッ」」」


「バカそうな笑い声上げて、楽しそうじゃないか。」

「なんだ貴様らは?」

マルコたちに8人組の学生たちが声をかけてきた。

「お前はやり過ぎなんだよ。少し痛い目にあって反省してもらうぞ。」

「ふん、その程度の人数で勝てるつもりか?舐められたもんだな。」

「3年を甘く見るな。教育してやるよ!」

8人組が襲いかかる。

太鼓持ちにはそれぞれ1人、マルコには6人が囲む。


マルコは強い。それに速い。

6人相手とは思えない優勢な展開で戦いを進める。相手の攻撃を易々かわし、マルコの攻撃は相手の剣を簡単に弾き飛ばす。

しかし、6人組は戦い慣れている。常にマルコと距離を取り、マルコが狙った相手を2人がかりでサポートする。残った3人は攻撃する素振りを見せたり、石を投げつけたりと、マルコの邪魔をする。


そして、太鼓持ちたちが負けた。

地に組伏せられて、

「剣を捨てろ。コイツらがどうなってもいいのか。」

「かまわん。好きにしろ。」

マルコは一切気にせず、そのまま身近な相手に斬りかかる。

それに動揺した1人の対応が遅れ、斬りつけられてしまう。

1人脱落したが残りの5人は冷静さを取り戻し、再びマルコへの対応を始めた。


「ぎゃぁぁぁ!!」

「だずげで~~」

太鼓持ちたちを痛めつけ、悲鳴を上げさせるが、マルコには影響がない。

そのうち悲鳴は消え、太鼓持ち2人は気を失ってしまった。それを見届けた相手はマルコのもとに駆けつけた。

1対7の戦いになったが徐々にマルコが優勢になっていった。


マルコは上級職、しかもレベル30オーバー。それに対して相手は標準職のレベル20程度。装備も格段にマルコが良い。

結果、マルコは攻撃を受けても致命傷にはならない。それに対して相手は一撃で致命的なダメージになる。

相討ちでも相手だけが倒れていく。


マルコはボロボロになりながらも相手の数を減らしていく。残り3人になった時。

「貴様ら!何をしている!」

ハワード先生をはじめ、数人の先生が駆けつけた。どうやら騒ぎを先生に通報した学生がいたらしい。


「お前たち、やり過ぎだ!

訓練で多少のケガぐらいは黙認するが、これ程の流血騒ぎは見過ごせんぞ。」

「先生。私は自衛しただけです。彼らが襲いかかってきたんです。」

「マルコ、事情は後で聞く。お前はとりあえずこれを飲め。重傷の学生の治療を優先する。」

「ポーションですか。わかりました。」

ハワード先生から受け取るとグビグビ飲み干す。


なんだ?

・・・意識が遠のいていく。

体が動かない。

疲れが出たのか?

相当ダメージを受けていたからな。

眠ろう。

もう頭が働かない。。。


「嫌な仕事だな。騙し討ちのようで。」

「仕方あるまい。マルコは強い。こんなチャンスを無駄にはできん。」

「わかっている。ことがことだからな。」

眠ったマルコが運ばれていく。

他の学生とは違う場所に。



・・・ここはどこだ。

ベッドの上で目が覚めた。

保健室とは違う。

牢屋だ。

檻、足枷。

動ける範囲にはベッドとトイレしかない。

どうして牢屋にいるんだ?

何故?誰が?どうやって?理由は?


疑問ばかりが浮かんでくる。

しばらく考えていると、足音が聞こえた。

3人の男が入ってきた。

「目が覚めたようだな。」

「ここはどこだ!

お前たちは誰だ!

俺が誰だかわかっているのか!」


「うるさいな。

ここは牢屋。

我々の正体は秘密だ。

お前はマルコ=プルートウだ。」

「プルートウ侯爵家の跡継ぎであるこの俺に!こんなことをして許されると思っているのか!」

「許されると思っているからやっている。少し静かにしろ。」

「父上が知れば、お前たちの命は無いぞ。」

「お前の父親は今戦場だろ。こんなところには来れんよ。」

「ドルマ帝国など蹴散らして、すぐに戻って来られる。」

「プルートウ侯爵では帝国には勝てんだろう。ドラクロア伯爵頼みだろう。」

「違う!ドラクロアなど取るに足らん存在だ!父上こそ、真の大将軍だ!」


なんなんだ!

隙をついて脱出してやる。

その後、コイツらは皆殺しにしてやる!

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