古代魔法
グランドに移動して。
「ウィリアム、何を見せてくれるんだ?」
ダリア先生とウィルが前に出て、他の生徒が後ろから見守っている。
「これから準備しますので、少しお時間をください。」
ウィルが目を閉じて、手を前に構える。
しばらくの沈黙、、、
そして、
「火の鳥」
ウィルが声を発すると、炎でできた小鳥が手の先から生まれ、羽ばたき、旋回しながら上昇していく。
皆が見つめるなか、徐々に形が崩れて消えていった。
しばらくの沈黙、、、
「・・・すごい。」
ミラの洩らした一言で沈黙が破られた。
「すげぇ!」
「これ、歴史的瞬間じゃないか。」
「ヤバイ!」
「マジかよ!」
学生たちが口々に感想を述べる。
「静かにしなさい。
これは検証が必要です。
ウィリアムのことは信用していますが、過去には幻術を使ったり、マイナーなスキルをそれらしく使ったりした事例もあります。
安易な断定はできません。
ウィリアム、ミラついて来なさい。
他の皆は試験は終了です。自由にしてください。」
ダリア先生がいつになくハキハキと仕切っていく。
魔法使い用のトレーニングルームで待機するように命じられた。
かなりの時間が過ぎた。
ミラは一緒に待機する相手には適さない。
無言のまま1時間が過ぎたあたりで、ダリア先生がやってきた。
「待たせてすまない。検証に必要な教師陣を手配するのに時間がかかってしまった。
今日の放課後、ここで検証会をしたいのだが、時間を貰えないか。」
「ダリア先生、さっきみたいに待たされるのは無しですよ。スムーズに行われるなら協力しますけど。」
「すまなかった。私も気が動転していた。検証会は効率的に行うことを約束しよう。」
「それなら時間を作ります。」
「私も参加したい。」
ミラがハッキリと声をあげた。
かなりレアな瞬間だと思う。
「ミラならそう言うだろうと思ったよ。もちろんそのつもりだ。では2時間後にここに集合で頼む。」
「わかりました。」
2時間後。
再びトレーニングルームに行くと先生が30人程待機していた。
マードック学園長やハワード先生、カタリナ先生などのいつものメンバーに加えて、魔法関係の先生以外にも戦闘系や生産系など、色々なジャンルの先生が集まっていた。
ウィルが現れると、ダリア先生とマードック学園長が近寄ってきた。
「ウィリアム、忙しいところすまない。」
「ウィリアム君、君は次から次に私の想像を超えることをしてくれるね。君が来てから退屈する暇も無いよ。」
「褒め言葉として受け取っておきます。
それで僕は何をすればいいのかな?」
「こちらに来てくれ。
まずは特殊なアイテムや装備をしていないかのチェックを受けてくれ。
その後、こちらの魔法陣の中で何度か実演をしてもらいたい。」
「わかりました。では、特殊効果のあるアクセサリーは外しておきますね。」
前に出ると2人の先生がウィルの装備や体をチェックしていく。
「どうだ?」学園長が声をかけると、
「装備に不自然な点はありません。」
「防御力上昇(微)と器用さ上昇(微)の効果が付与されていますが、それだけです。」
「朝食で付いた効果だから気にしないで。」
「は~、どんな朝食を食べれば、こんな特殊効果がつくんだ。検証に入る前に頭が痛くなるとは思わなかったよ。」
学園長が頭を抱えながらこぼした。
「では、そこの魔法陣の中心に立って、授業中に行った『火の鳥』をやって欲しい。」
「わかりました。」
ウィルは魔法陣の中心に立つと、両手を前に突きだし、目を閉じた。
暫しの沈黙。
ウィルが目を開き、
「火の鳥」と口にすると、
炎でできた鳥が手の先に現れ、羽ばたいた。
全員が見守る中、火の鳥は羽ばたきながら飛び回り、やがて消えた。
再び沈黙、、、
「パトリックから順に見解を報告してくれ。」学園長が口火を切った。
「幻術ではありません。」
「戦闘系スキルに似たものはありません。」
「外部からの干渉はありません。」
「魔法を使ったのは間違いないようです。」
「アイテムの使用はありません。」
次々に先生が報告していく。
「次は目標を攻撃してダメージを与えて欲しい。」
「わかりました。それで同じ魔法がいいの?それとも変えた方がいい?」
「他の魔法も使えるのか?」
「多少はね。」
「なら、まずはさっきの火の鳥で目標を攻撃してほしい。その後に違う魔法も見せてほしい。いいかな?」
「じゃあ、順番にいきますね。」
火の鳥や水の矢、小型の竜巻、などなど。
色々な形で魔法を披露した。
「これぐらいでいい?さすがに疲れたよ。」
「わかった。ありがとう。検証への協力を感謝する。後少しだけインタビューに協力してほしい。」
「いいけど、秘密特訓の成果だからね。話せないことの方が多いよ。」
「構いません。どうやって習得したのか。どのように使うのか。話せる範囲で教えてほしい。」
「とにかくスキルで行っていることをスキル無しでやろうと繰り返すだけだよ。コツを掴めば、後はこま切れにしてつなぎ合わせる感じだよ。ただ発動に時間がかかるし、あまり複雑なことはできないから、使えるようになってもメリットはあまり無いよ。女神様が授けてくださった『スキル』の方が使い勝手は断然良いよ。」
「ありがとう。今日のデータを検証してみるよ。君の協力で研究が飛躍的に進みそうだ。」
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