対ハワード先生

もうすぐ試験が始まる。

ウィルは南側の配置となっている。

拠点の場所を決める。

場所は平野部、北側と西側が山になっており、東側が川になっている。普通なら南側まで回り込んで攻めるしかない。守る方向を絞れるのがメリットだ。

その代わり、山越えや川を渡ったりすれば意表をつくことができる。

兵士の種類や装備も決めていく。

そして、時間になった。


ハワード先生と一緒に監督していた先生が、

「始め!」

と、声をあげた。


・ウィルサイド

戦いはスピード勝負。

手早く命令を出していく。

ウィルは兵士の3分の2を工作兵にしている。工作兵は壁を作ったり、トンネルを作ったり、といった作業が得意だが、戦闘能力は無い。

200人の工作兵が急ピッチで作業を進めていく。



・ハワード先生サイド

定石通り序盤は斥候兵を走らせて、情報収集をさせる。それと並行して、軽装歩兵の集団を派遣する。

この軽装歩兵は相手の斥候兵を狩るための部隊だ。斥候兵は重要だが、戦闘力は皆無。逃げることしかできない。

斥候兵の数を減らしつつ、狩るエリアを指定することで、対戦相手に誤ったイメージを与えることもできる。


しばらくして、斥候兵からは情報が集まるが軽装歩兵から狩りの報告が入ってこない。

何故だ?

ウィリアムは斥候兵を使ってないのか?

確かに斥候兵を使わなければ、その人数を戦力に回せる。だが情報収集能力が大幅に落ちる。

斥候兵を使わない場合、よくあるのは籠城。

立て籠る場合は斥候兵は必要ない。

相手の拠点は攻めずに、守りに徹して、兵士を削って、判定に持ち込む戦術だ。

だが、ウィリアムがそんな安易な戦術を取るとは思えない。

まずは様子を探りながら、ウィリアムの作戦を見極めたい。


ついに拠点を見つけた。山と川に囲まれた場所だ。守りやすく攻めにくい。

ここで迎え撃つつもりなのか?

ウィリアムの作戦はまだわからないが、おそらく主戦場はそこになるだろう。どんな作戦できても対応できる自信はある。

拠点攻略に向けて兵を動き出した。



・ウィルサイド

準備は着々と進んでいる。

ハワード先生のスタート位置によるが、拠点を見つけて兵を動かせているところだろう。どんな陣容で攻めて来るかはわからないが、拠点に向かっているのは確かだろう。


見えた!

拠点を大量の兵士で攻めるには南側に回り込むしかない。通常ならその南側の一本道に迎撃の戦力を配置することだろう。

ハワード先生もそれを警戒して偵察しながら進軍しているようだ。

急ぐべきところと時間をかけるべきところがよくわかっている。



・ハワード先生サイド

何故だ?

もう拠点は見えている。なのになんの攻撃も無い。遠くから見える拠点は外壁が高くなっている。工作兵を使って拠点の防御力を上げているのだろう。

だが拠点に引き付けて攻撃したいなら、何故絶好の襲撃ポイントである南側の一本道で何もしてこないんだ。ウィリアムに限って単純ミスは考えられない。


だが悩んでいても始まらない。

拠点に向けて兵を進める。

近づくと大量の矢が降り注ぐ。

外壁が高く、こちらからの反撃はあまり効果が無いだろう。

矢を盾で防ぎながら接近するのが基本だな。同時に工作兵にトンネルを掘らせて、外壁を無視して侵入する手筈も準備していく。


しばらくは地味な攻撃が続いた。

城門を破壊しようと攻撃するが、ウィリアムの邪魔が入って、まだ突破には至っていない。だが時間の問題だろう。

しかし、城門を突破しても油断はできない。

ウィリアムの攻撃が想定を下回る威力だ。

別動隊を動かして、こちらの拠点攻略に動いているのか、それとも城門突破後に仕掛ける戦力がいるのか。

どちらにしても城門を突破しなければならない。


ゴゴゴゴゴゴゴ!!!

突如轟音が鳴り響く!

何事だ!?


気づいた時には大量の水が迫っていた。

総員退避を命令するが間に合わない。

兵士たちは次々に流される。

流されるのはまだマシで、トンネルを掘っていた工作兵は全滅だ。


兵士たちが流され、溺れて、混乱している中に小舟が出てきた。

小舟からは矢と魔法が放たれ、身動きの取れない兵士が次々とやられていく。


地獄のような時間が過ぎる中、なんとか生き延びた兵士を下がらせることができた。

ただ攻撃に使った部隊は半分以下に減ってしまった。かなり厳しい状況だ。



・ウィルサイド

ハワード先生に逃げられてしまった。

想定していたよりも戦力が残っている。しかも、まだ諦めていない感じだ。

おそらく拠点防衛に使っていた戦力を一部加えて、戦力の再編をしているようだ。

その待ち時間にこちらの工作兵を探しだそうとしている。水攻めをしたということは川の上流にいることはバレているだろう。


工作兵は戦闘力がほぼ無い。

襲撃を受ければ大打撃になってしまう。現在、舟を利用して拠点への移動を行っている。

小舟で追撃を行った部隊も拠点に戻し、拠点内で再編と指示を出していく。

ハワード先生が防衛戦力を組み込んで攻めて来た時に第2ラウンドが始まる。

それが勝敗を分けるだろう。

全力で叩きのめすのみ!

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