リディアの実力

「始め!」

先生の号令で試験が始まった。


「宜しくお願い致します。」

「こちらこそ、よろしく。」

2人とも礼を交わす。


最初に仕掛けたのはリディアだった。

槍のリディアとショートソードのウィル。

リディアは有利なミドルレンジでの戦いを始めた。少し長めに距離を取り、攻撃を繰り出す。コンパクトな攻撃には隙は無く、怒涛の攻撃が続いた。

ウィルはショートソードで連撃をさばき続ける。

「「「おぉぉぉぉ~」」」

周りの学生からは凄まじい攻防に歓声が上がる。


しばらく続いたが、一旦リディアが下がった。

「さすがにウィル相手にこんな攻撃では崩せませんね。」

「リディア、イメージと攻撃にズレがある。いつもの武器との違いを把握しないと攻撃に精彩を欠くよ。」

「さっきの2戦が早く終わって慣らしが足りなかったんです。でもようやく慣れてきました。次はもう少しマシな攻撃ができると思います。」

「楽しみだね。」


呼吸を整え、リディアが爆発的に加速する。

さっきよりも更に一歩踏み込んで攻撃を繰り出す。

疾風怒濤の連撃。

「「「すげぇ~」」」

周りの学生たちは、その激しい攻撃に度肝を抜かれた。


しかし、ウィルには届かない。

いつものように軽くショートソードで弾いていく。

しばらくリディアの攻撃が続いた。

「良い攻撃だ!だが素直過ぎる。」

ウィルは槍を受け流し、距離を詰めて、リディアを蹴り飛ばした。


おもいっきり蹴り飛ばされたリディアだが、すぐに立ち上がる。

「はー、はー、はー」

肩で息をするリディア。

「まだ戦えるかい?」

「もちろん!はぁぁぁ!!」

気合いを入れ、突撃するリディア。

乾坤一擲、渾身の一撃を放つ。


ウィルはショートソードで切り払う。

リディアは体勢を崩しながらも、槍で薙ぎ払う。

しかし、ショートソードでしっかりと受け止められてしまう。

ウィルはそのまま懐に入り込み、ショートソードを顔に向けて斬りかかる。

リディアは槍を手放し、両腕でガードする。


ウィルは途中でショートソードを手放し、ガードの隙間に素手を差し込み、首を鷲掴みし、そのままの勢いでリディアを押し倒す。


リディアは自身の腕が邪魔でウィルの動きが見えなかった。何がおきたのかも理解できないまま、受け身も録に取れず、地面に叩きつけられた。


首を押さえられ勝敗を悟ったリディアは、

「参りました。」と敗北を宣言した。


ウィルはさっと首から手を離し、リディアの手を掴んで起き上がらせた。

「何がおきたのか一瞬わからなかったでしょ。そういう相手の意表をつく攻撃も大切だよ。対人戦とモンスター戦は違うからね。」

「良い経験になりました。ありがとうございます。」

パチパチパチパチ

周辺の学生から拍手が鳴り出した。


3戦全勝だし、良い点数貰えたかな。



これで筆記試験と実技試験は終了。

残りは選択授業の試験だ。

ウィルは用兵術と古代魔法考察の2つ。

まずは用兵術。

ハワード先生が声をかける。

「試験は簡単だ。コンパクトアーミーを使用した『拠点攻防』を行ってもらう。既にこれまでの授業の成績で8割の点数は決めている。残りの2割を今回の一発勝負で決める。対戦カードはこちらで決める。指定の相手と対戦し指揮能力を示せ。」


学生が順番に呼ばれて試験を開始していく。数組が同時に試験を行っていく。

ウィルが呼ばれないまま、試験はどんどん進んでいった。


「次で最後だ。ウィリアム、お前の対戦相手は私だ。準備をしろ。」

ハワード先生!やり過ぎじゃないですか?

「わかりました。宜しくお願い致します。」


ルールは『拠点攻防』。

兵力は300対300。

コンパクトアーミーの種類は以前と違い、制限なし。工作兵や回復兵、輸送兵など、なんでも選べる。装備も自由に選べる。


ハワード先生は用兵術の担当教員なだけに強いだろうな。普通にやっても勝てる気がしないね。何か特別な作戦を考えないとね。


地図を見ながら拠点の場所、兵士の種類、装備を決めていく。

ハワード先生は立場上、王道の展開で、力量の差を見せようとするだろう。

王道では勝てない。邪道でいくしかないかな。ボロ負けのリスクもあるけど、勝てる可能性を少しでも高める方を選びたい。

直接戦うなら勝てるけど、コンパクトアーミーでの戦いは経験がものを言う。ハワード先生は経験豊富だ。勝負にならないだろう。


『拠点攻防』は相手の拠点を落とした方が勝ち。もし、どちらも時間内に拠点を落とせなかった場合、制限時間終了時に残っている兵士の数で勝敗を決める。

基本的には同じ兵力だと守る側が有利。拠点は守りやすい場所に設置するので、地の利を活かせる。ただ守っているだけでは勝てない。守る側には自由に動けないという制約があるので、下手をすれば袋叩きにあってしまう。

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