期末試験

最近は学園以外のことが忙しかったけど、ちゃんと学園には通っていた。

そして、ついに期末試験の時期が近づいてきた。期末試験は筆記試験、実技試験、選択授業の試験の合計得点によって順位が決められ、クラス分けされる。

今のA 組から落ちないようにクラスメイトは必死だ。この試験の結果で来年のクラスが決まる。入学試験は家の教育による差がほぼ全てであったが、今回の試験は本人の努力次第でクラスが上下する。

その結果次第で大きな顔で実家に帰るか、叱られるのを覚悟して実家に向かうのか。学生にとって非常に重要な分岐点になる。



そんな中、いつものメンバーはいつも通りに勉強会を開いていた。そこには真剣さはあるが、焦りは無い。強化合宿で勉強も実技も大きくリードした。けれど慢心することなく、真剣に取り組み続けてきた。

クラリスという目標が目の前にいるのも大きかった。少し前を行く存在に刺激され、みんな頑張った。クラリスは少しでもウィルに追いつきたいと頑張っている。あるいは認められたいという気持ちかもしれない。


レオン

「明日から試験だな。」

キース

「少しでも順位を上げたいな。」

クラリス

「私も順位を上げるつもりですわ。」

ウィル

「クラリスが順位を上げるのは阻止させてもらうよ。」

エリュートロン

「でもウィルは『古代魔法考察』を選択したから、点数は伸び悩むんじゃないかしら。」

ウィル

「まぁ、楽しみに見ててよ。」

モーリン

「えっ、『古代魔法考察』に自信があるの?」

カレン

「ウィルならあり得そうね。」


入学試験で満点、首位を獲ったウィルの成績は注目の的だ。



そして翌日、

ハワード先生が前に立ち、

「これより期末試験を開始する。当然だが不正行為は禁止だ。発見した場合、点数は0点、実家にも連絡が入る。未来を棄てたく無いなら不正はするな。」

その間にカタリナ先生が答案用紙を配っていく。

「全員答案用紙はあるな。それでは始め!」


筆記試験は余裕だね。

わからない問題は無かった。後はケアレスミスがあるかどうかだね。



次は実技試験。

職業によって内容が異なる。

A組とB組の戦闘職の学生が集められた。

ハワード先生が監督をするようだ。

「入学試験では動かない的に攻撃を当てるだけだったが、今回の試験では学生同士で戦ってもらう。武器、防具はこちらが用意した物を使用してもらう。安全面を配慮した装備だ。

魔法に関しては防御アイテムを装備してもらう。1度だけ防いでくれるが、それで壊れる。死なないように降参しろ。

各人3戦してもらうぞ。その内容で点数をつける。いいな。」


学生同士の戦闘か。

物理タイプ、魔法タイプ、スピードタイプ、色々なタイプの学生がいる。どんな展開になるかは相手次第だね。

監督官の先生が見守るなか、順番に戦闘が始まる。


ウィルの1戦目の相手は同じA組のクラスメイトだ。あまり接点の無い男子学生だね。槍を構えている。ウィルはショートソードを装備した。

「始め!」

先生の号令で対戦相手が駆け寄って来る。

連続で突きを放ってくるがまだまだ甘い。

「悪くは無いけどね。それじゃ当たらないよ。」

相手の突きをステップワークで避け続ける。

「まだまだ鍛練が必要だね。」

ウィルは槍を避けながら懐に入り込む。

相手は慌てながらも蹴りで距離を離そうとしてきた。

「それは悪手だよ。」

蹴ってきた足を掴み、相手の体を回転させて転ばせる。

うつ伏せに倒れた相手を押さえつけながら、ショートソードを突きつける。

「降参しな。」

「参りました。」


2戦目。

B 組の魔法使いが相手だ。

杖を装備した典型的な魔法使いスタイルの男子だ。

「始め!」

最初にウィルの足下に向けて炎弾を打ってきた。狙いは悪くない。避けても炎弾で吹き飛んだ小石や土煙が相手の邪魔をする。

だがウィルが突風を生み出し、炎弾は上空に吹き上げられてしまった。

「くそっ」

悔しさを滲ませながら、次の魔法の準備をすすめる。次は炎の壁を相手に向けて進ませる魔法だ。ウィルは魔法で大量に放水を行う。炎と水がぶつかり、辺り一面を湯気が覆う。

そして、

「視界が奪われた時に棒立ちは良くないな。」

「なっ!」

相手の背後から首筋にショートソードをあてながら、ウィルが声をかけた。

「それまで。」

先生から終了の合図が出た。

魔法の選択は悪くなかったけど、経験不足だね。


3戦目の相手はリディアだった。

A組トップクラスの2人の戦いに注目が集まる。

「胸を借りるつもりで全力で戦います。」

「あぁ、受けてたつよ。」

リディアは上級職。しかもレベルも38。先生よりも強いと評判になっている。手の空いている学生や先生が取り囲んで見つめる中、試験が始まる。

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