王様と私
なんとかパーティーを乗りきった。
「ウィル、さすがにやり過ぎだよ。今後はもう少しソフトな対応をしようね。」
エリック兄さんにはバレてたみたい。
「気をつけます。こんなのに耐えられるエリック兄さんを尊敬するよ。」
「まぁ、及第点だ。エリック、アルガスは先に屋敷に戻ってくれ。ウィリアムは私について来い。」
「わかりました。」
そして、オデロについて行くと、とある部屋に入った。
室内は高級だが、落ち着いた調度品が置かれている。見せるための部屋ではなく、リラックスするための部屋って感じかな。
しばらく待っていると、国王陛下とフルブライト公爵が入ってきた。
「待たせてしまったようだな。」
「問題ありません。」
「まぁ気楽に座ってくれ。」
王様の横にフルブライト公爵、対面にウィルとオデロが座った。
「ウィリアム君、こうしてゆっくり話をするのは初めてだね。ここにはリカルドとオデロしかいない。気楽に話を聞かせてほしい。」
「わかりました、陛下。宜しくお願い致します。」
ちなみにリカルドはフルブライト公爵の名前だ。呼び捨てでリカルドと呼べるのは王様だけだろうけどね。
「さてと、わざわざウィリアム君に来てもらったのは君から直接話が聞きたくてね。」
「どんな話をすればよろしいのですか?」
「今回の戦い、君の活躍が無ければ、王国存亡の危機に陥っていただろう。
ただ、君の活躍内容が私の理解を超えている。君のことをよく知るクラリスに話しをすると、『ウィルならそれぐらい簡単にできる』と言うんだよ。
リカルドも君を信頼して兵を動かした訳だし、オデロも君の行動には何も関与していないと言う。
他にも学園から入る情報も君のとびきりの優秀さを示すものばかりだ。
君の能力を知りたい。君には何ができる?」
「難しい質問ですね。自身の限界を正確に把握することは早々できることではありませんよ。」
「ウィリアム君。質問を変えよう。
君の手持ちの戦力をすべて使えばドルマ帝国とどこまで戦える?」
「戦う気はありませんよ。ですが必要に迫られれば、皇帝の首を1月以内にはねることはできるでしょう。」
「なるほど。なら、何故しない?」
「今のエール王国に満足しています。強過ぎる力は国を誤った方向に進ませる。そうはなって欲しくないだけです。」
「君は何を望む?」
「楽しい生活。幸せな毎日。それだけです。それ以上でもそれ以下でもありません。」
「それだけの力があれば、なんでもできるだろう。地位も名声も富も望むままではないのか。」
「手に入らないから手に入れようと足掻く。簡単に手に入るものをわざわざ欲しがる必要は無いんですよ。」
「ハッハッハッ。どうやら私の想像を遥かに超えているようだ。君が敵で無くて良かったよ。」
「僕の言葉を簡単に信じてよろしいのですか?」
「問題無い。リカルド、オデロ、クラリス。すべて信頼に足る人物だ。それに私も人を見る目はあるつもりだ。虚言と真実を見極めるのは王の仕事だよ。」
「なるほど。
陛下が今のまま国を導くなら僕はドラクロア家の男子として、力を使います。」
「ウィリアム。君への興味は尽きないよ。
だが、先に話をしなければならないことがある。褒美についてだ。
君への褒美については目立たないようにして欲しいとオデロから言われてね。できるだけ集団に埋没するように工夫したんだよ。
さすがに君の功績を褒賞無しにはできなかったからね。ただ功績と褒美が釣り合っていない。
君は何が欲しい?
私の用意できるものは用意しよう。」
「ありがとうございます。
では、『拒否権』をください。」
王様の空気が変わった。
「『拒否権』とは?」
「陛下の命令を拒否する権利です。僕に命令できるのは僕自身のみである。と公認して頂きたい、ということです。」
「それは私の命令に従いたくない、ということか。」
「従うかどうかの判断は僕がする、ということです。」
「王の命令に誰も従わなくなれば国は滅ぶぞ。お前だけを特別扱いしろと言うのか。」
「多くの人がいる前では言えないお願いです。だから、この場でお願いしました。」
「そこまでの特別扱いをする価値がお前にあるつもりか?」
「無いとでも?」
嫌な沈黙が流れる。
沈黙を破ったのは王様だった。
「ふ~、リカルド。どう思う。」
「ウィリアム君に『拒否権』ですか。
公表しないなら賛成です。
陛下の名前を使って命令を出そうとする輩が出てくるかもしれません。
危険性を考えるなら、そういった命令を断ってくれた方がいいでしょう。」
「オデロはどう思う。」
「フルブライト公爵と同意見です。
拒否権を公表しない前提なら賛成です。現実問題、本気で嫌がるウィリアムに強制する力を私は持ち合わせていません。落とし所を決めておくのは悪くないかと。」
「オデロの認識では、ウィリアムと戦うにはどの程度の戦力が必要と思う?」
「私にも底が知れない実力です。我が領軍では勝負にならないでしょう。」
「わかった。ウィリアム君、『拒否権』を認めよう。これからも良き関係でありたいと思う。いいかな。」
「もちろんです。こちらこそ、宜しくお願い致します。」
その後は他愛無い会話を交わして、その日は終えた。
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