貴族はつらいよ
祝賀パーティーにて。
「ウィリアム様、その年齢で戦果を表彰されるとは将来有望ですね。」
「ありがとうございます。父上の足を引っ張らぬように精進します。」
といった、何の意味も無い会話。
「今度、茶会を開きますので、是非ウィリアム様の武勇伝をお聞かせ願いたい。」
「ティーカップよりも剣を握るのが当家の家訓。まだまだ未熟な私にはお聞かせできるような話もございません。」
お茶会やパーティーへの誘い。
オデロのいないところで話を進めたいのだろうけど、お断りだね。
他にも、色々理由をつけて誘ってきた。
中には連れてきた娘に誘惑させようとする者も。
当然、すべてお断りだね。
さすがに無駄なやり取りに疲れてきた頃、
「お疲れのようね、ウィリアム様」
「あっ、クラリス様。このようなパーティーに馴れてらっしゃるクラリス様を心の底から尊敬致します。」
「あら、貴方に尊敬して頂けるなら、毎日でもパーティーに招待したいですわね。」
「悪い冗談はお止めください。」
「私も大人のお相手をするのに少し疲れたところよ。しばらく付き合ってくださらない?」
「もちろん。喜んで。」
それからクラリスと他愛ない会話を交わした。
「いつもの調子で話してしまいそうで、切り替えが難しいですね。」
「ふふふ、リディアも慣れるまでは苦労していましたわ。私としてはいつものウィリアム様の方が楽しくていいのだけど。」
「いつもの調子で話しているのを父上に見つかったら、大目玉ですよ。」
さすがに王女と話しているところに割って入るようなバカはいない。
クラリスもそれをわかって、ここに居てくれているのだろう。その優しさが嬉しいね。
しかし、途中でクラリスは呼び出しを受けて去ってしまった。
それを見計らって、次々に貴族たちが寄って来る。
「ウィリアム様、こういった場は初めてでお疲れでしょう。宜しければ我々のところにお出でください。我々が防波堤となりますよ。」
ニコニコと愛想良く話しかけてくるが、魂胆が丸見えだ。連れ出して、囲んで、約束させる、みたいなところかな。
「ご厚意ありがとうございます。ですが、疲れたからと言って逃げ出すようではドラクロア家の男子とは言えません。」
次は、爽やかな男が近寄ってきた。
「ウィリアム様、少しゲームでもしませんか。気分が変わりますよ。」
「ゲームですか?」
「そうです。簡単なゲームですよ。あちらでダンスが行われています。今からレディを誘って、先にダンスを踊れた方が勝ち。勝ったら負けた相手に1つだけ命令ができる。どうかな。」
今、僕らの周囲に数人女性がいるけど、仕込みだね。僕が慌てて声をかけたら断られ、この男が声をかけると一緒に踊るんだろうな。面倒なことをするね。
「1つだけルールを追加させてくださるなら。」
「どのようなルールですか?」
「ハンデですよ。僕が少しだけ早くスタートするためのルール追加です。」
「では30秒のハンデでどうですか。」
「いやいや、ハンデもゲームで決めましょう。」
「どんなゲームですか?」
「1分間、相手の骨を折り合うゲームだよ。1本骨を折る度に1分ハンデが貰える。2本折れば2分。僕の得意分野を入れさせてもらったよ。」
「ひっ!や、野蛮過ぎる。
そんな野蛮なゲームなんてダメに決まっているでしょう。」
「仕方ないでしょう。戦場で求められるのは野蛮さですよ。それとも帝国相手にダンスパーティーでダンス勝負をして追い払ってくれるのかい。」
「そんな無茶苦茶な、、、」
「周りの仲間たちと一緒にダンスでも踊られてはいかがですか?バレて無いとでも思ってるの。」
更に、年長の貴族が声をかけてきた。
「あまり勘違いしてはいけませんよ。
貴方が特別扱いを受けているのは父上のドラクロア卿のおかげであって、自分の力ではない。」
「もちろん自覚しております。」
「そもそも学園に通う身分でありながら、このような場に、のうのうと出てくる時点で自覚が足りない証拠である。」
「貴重なご意見、ありがとうございます。」
「そのような心無い返答で、やり過ごそうとするなど、もってのほかだ。
年長者の意見には真理があるのだ。
わかった。私が直接指導してやろう。そうすれば、お前も一人前の貴族になれるだろう。良かったな。」
なんだ、この超マイペースなオッサンは!
なんでこんなヤツの指導を受けないといけないのさ!
「現在、父上の指導を受けております。わざわざ、お手を煩わせることはございません。」
「かまわん。遠慮するな。明日から指導を初めてやろう。」
会話にならないな。
威圧を放つ。
一瞬。それも相手を1人に限定して。
「ぐがぁ」
うめき声を残して、気絶した。
「どうやら気分を悪くされたようです。どなたか、係りの者を呼んでくださいませんか。」
あ~、もうくたくただよ。
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