祝勝会

週末。

王宮の前には多数の馬車が止まっている。

それぞれの立場で降りる場所が異なる。

どれだけ王宮の近くまで馬車で行けるかもステータスになっている。

ドラクロア家の馬車は王宮から少し離れた場所に止まった。


本来なら、もっと近くまで馬車で行けるのだが、オデロがそういったかけひきを好まず、「戦場で鍛えている故、近くまで馬車で行く必要は無い。」と一蹴している。


馬車からはオデロ、エリック、アルガス、ウィルの順に降り、一団となって歩き出した。その威風堂々とした歩き姿に貴族たちは足を止めて、道を開けた。

貴族たちが道を開け、オデロたちは颯爽と歩いて行く。

しばらく歩くと、役人が近寄ってきた。

「ドラクロア卿。ようこそ、お出でくださいました。別室にご案内致しますので、こちらへどうぞ。」


役人に従い、別室に移動する。

別室には今回の戦いで功績を上げた貴族たちが集められていた。

「お久しぶりです、ドラクロア卿。」

「フルブライト卿、お久しぶりです。」

フルブライト公爵とロナルドさんがいた。


因みに、ロナルドさん、実は子爵で、貴族の息子ではなく、歴とした貴族なのだ。

僕やエリック兄さん、アルガス兄さんとは立場が全然違う。


「別室に集められると、どうにも落ち着かないな。ドラクロア卿たちのように多数の帝国兵相手に立ち向かった勇将と違って、私は息子を走らせただけだからな。どうしても見劣りしてしまうからかもしれないな。」

「何をおっしゃいます。フルブライト卿の援軍が無ければ、この部屋には誰もいないでしょう。」

そんな会話を、周囲の貴族たちは静かに見守っている。部屋の中で上位2名の会話だ。

誰も割って入るようなことはできない。


その後、オデロはよく一緒に戦場に行く貴族たちに声をかけて回る。

エリック兄さんやアルガス兄さんもともに戦った貴族たちに声をかけている。

ウィルは知り合いもいないので暇をもて余してしまう。

「ウィル君、退屈かもしれないが、少しの我慢ですよ。もう少しで式典が始まります。その後はパーティーですから、美味しい料理が食べられますよ。」


ロナルドさんは気遣いできる人だな。

さすがフルブライト公爵の嫡男。

まぁ、ムラーノの料理を超える料理が出てくるとは期待してないけどね。

「ありがとうございます。ロナルドさん。暇潰しに宿題でも持ってくれば良かったよ。」

「ハッハッハッ、しかし、その年でそれだけ落ち着いているのはさすがだよ。」

「誉めてもらうだけだから、緊張はしないかな。王様と殴り合えって言われたら緊張するかもね。」

「ハッハッハッ、そんな命令が出たら、私なら気絶してしまうよ。」

「そう言えば、カロッゾ商会は信用しない方がいいよ。」

「なっ。」

「キースのおじいさんはくせ者だね~。」

「身元調査はしたんだが。。。」

「1年や2年の罠じゃないよ。何年も前にターゲットも決めずに蒔いた種って感じかな。」

「、、、ありがとう。気をつけるよ。」


ロナルドさんがコーナー伯爵と裏でつながっている業者をお抱えにしそうだ、って情報があったからね。せっかく仲良くなったロナルドさんが失脚するようなことになったら寝覚めが悪いからね。



そんなことを話していると、王様の待つ広間に呼ばれた。

簡単に言うと功績の少ない者から集団で呼ばれていった。

僕はかなり前半に呼ばれた。

壇上には国王陛下、王妃様をはじめ、王族が並んでいた。

クラリスもその列にいた。

こういう場面でクラスメイトを見つけると、ちょっといい気分になるね。

特に発言をすることもなく、一礼しただけで終わった。

褒賞がどんどん進んでいき、最後にオデロとフルブライト公爵が呼ばれた。

最大の功労者はこの2人ということだった。


褒賞の内容は、勲章とお金、爵位だった

プルートウ侯爵とその仲間たちの資産や爵位を功労者に分配したような感じだった。

普通は戦いに勝つと、敵国の捕虜を身代金と交換するのが通例となっているが、今回は捕虜などほとんどいない状態だった。その代わり、裏切り者から取り上げたものを配ったということだろう。

土地に関しては当面、直轄地として管理するらしい。帝国の侵攻を防ぐ防波堤となる大事な場所だ、細かく刻んで中小貴族にばらまく訳にもいかない。かといって、侯爵クラスをほいほい作る訳にもいかない。

時間をかけて進めていくんだろう。


表彰式が終わり、祝賀パーティーに移行した。ドラクロア家の4人は一塊となって行動した。

貴族たちが次々に挨拶に来る。

目当てはアルガスとウィル。

独身の2人と娘や親戚を結婚させ、ドラクロア家と関係を作りたいらしい。

オデロとエリックが前面に立って対応している。オデロは言葉少なく素っ気ない態度でバシバシ会話を切っていく。エリックはニコニコと愛想良く会話をするが、結果断ることには変わりはない。

貴族の集まりでうっかり変な約束をしてしまうと後々大変なので、場馴れしたオデロと、フルブライト公爵の後ろ楯を持つエリックが対応を担当した。

アルガスは不満そうだったが、ウィルとしては無意味な社交辞令に付き合う必要が無くて助かった。

ただ2人では裁ききれず、間をぬってウィルに話しかけてくる連中もいた。

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