元勇者だって青春がしたい

オデロへの報告

ウィルは王都にあるドラクロア家の屋敷にやってきた。

オデロ、エリック、アルガスは現在、王都の屋敷に滞在している。

今回の戦いの事後処理のために王都に残っている。今回はプルートウ侯爵という大物の裏切りという事態が発生した。事実関係の確認や、他に裏切り者がいないかの確認など、王宮は多忙をきわめていた。

「父上、いくつかご報告があるのですが、お時間を頂けませんか。」

「もちろんだ。だがその前にまずはお礼を言わせてくれ。お前のおかげで生きて帰ってこられた。感謝する。」

「私がしたことはほんの少しお手伝いしただけです。父上や兄上たちの力あってこそです。」

「詳細を確認したいところだが、まずはお前の報告を聞こう。何があった？」

「はい。ありがとうございます。

まず、私設兵団を作ることをお許し頂きたいのです。」

「規模と目的は？」

「300人程度です。目的は有事に備えてです。今回の戦いで自分の力不足を痛感致しました。多少は手足として使える兵士も必要だと考えました。」

「うむ。だが今回の戦いでもウィルが派遣してくれた部隊は十分な戦果を上げたと思うが。」

「今回は緊急事態だったので、街の警備隊に協力してもらいました。彼らは軍人としての教育は受けていないので、あれが限界だったのです。」

「あれがただの街の警備隊か。」

「冒険者の多い街ですからね。冒険者に勝てる実力は必要です。」

「なるほどな。それでどの程度の実力を目指すんだ？」

「南門で戦った連中がしっかり軍隊としての訓練を受けた、というイメージです。」

「わかった。許可しよう。部隊の指揮はお前が行うのか？それともカシムか？」

「いえ、専門家を雇いました。今度、紹介します。リクソンという男です。」

「リクソン、、、まさか帝国のリクソン将軍か！」

「父上の想像と一致しているかはわかりませんが、世界トップクラスの指揮官だと思っています。」

「・・・わかった。エール王国に危機が迫った時はお前の力を貸して欲しい。」

「はっ！これは守るべきものを守るための力です。出し惜しみはしません。」

「うむ。それで、他にも報告があるのであろう。」

「はい。実は開拓村の新設にむけて準備を進めております。」

「そうか。それは良い。我が領は常に開拓が求められている。場所と規模を教えてくれ。」

「南方のモルグ山の麓に5000人ぐらいです。」

ウィルの報告を聞いたオデロは右手で頭を押さえてしまった。

「ふ～。何故、どうして、と聞くのはやめておこう。今後はどうするつもりだ？」

「今回はダンジョンとかは無いので、普通の開拓村です。生活が安定するまではサポートしますが、落ち着けば関与はせずに、自給自足の生活を送ってもらおうと考えております。」

「サポートは具体的にどこまでするつもりだ。」

「家と街の外壁は用意しようと考えています。それと道も作りたいのですが宜しいでしょうか。」

「道がつながれば旅商人も往き来しやすくなるだろう。往き来が増えれば開拓村の発展にも寄与することだ。やってくれてかまわんが、かなり大がかりな事業になるぞ。」

「ダンジョン街の土木班や私設兵団を使います。半年もあれば、ある程度はできる見込みです。」

「そう言えば、ウィリアムの街の街道も異常な早さで完成していたな。

ふ～。好きにしてくれ。」

「ありがとうございます。」

「他に報告事項はあるか。」

「いえ、ございません。」

「こちらからも1件あるんだ。

今週末に祝勝会が王宮で開かれる。

お前も参加してもらう。

それと、陛下から一度会って話をしたいと言われている。おそらく祝勝会の後に別室に呼ばれることになるだろう。

お前のことだから心配はしていないが、宜しく頼む。」

「何故、僕が祝勝会に呼ばれるのですか？」

「フルブライト公爵から話がいったのだろう。兵を動かすきっかけを作ったのがお前なのだから、触れずに報告はできないだろう。」

「わかりました。恥ずかしくない振る舞いを心掛けます。」

「わかっていると思うが、あまり注目を集め過ぎるなよ。貴族の中にはドラクロア家を良く思っていない連中もいる。足を引っ張ることを生き甲斐にしているような連中もいる。下手な発言をして足下をすくわれるなよ。」

「はい。父上の顔に泥を塗るようなことは致しません。」

あんまり気乗りしないな～。

貴族のパーティーに王様の呼び出し。

面倒だけど我慢だね。