幕間 ウィルって
強化合宿を終えて、王都でレオンとキースが買い物を一緒にしている。
「やっぱり、キースと一緒だと買い物は早いな。」
「まぁ商人には顔がきくからな。」
「後はせっかくの買い物だから、可愛い女の子でもいれば最高なんだけどな。」
「クラリス様に一緒に買い物行きますかって声かけるか。」
キースがニヤリと笑う。
「さすがに、それは無理だわ~。」
「なら、私が付き合って差し上げましょうか。」
「「えっ!」」
レオンとキースが振り返ると、エリュートロンとカレンがいた。
「2人で何してるの?」
「あなたたちと同じよ。学園が始まる前に買い物しているのよ。」
「そうだったんだ。」
「まだ私、王都のお店に詳しくないから、エリュートロンに助けてもらってたの。」
「ちょっと一緒に休憩しませんか。すぐそばにいいお店があるの。」
「もちろん、いいぜ。」
4人はスイーツのお店に入った。
ちなみにエリュートロンとカレンには従者1人と護衛2人がついている。
護衛がエリュートロンやカレンより弱いのは気にしてはいけないところだ。
ケーキとお茶のセットを注文して待っている間。
「俺さ、合宿から帰った後、知り合いの鑑定士に鑑定させたんだ。」
キースが話始めた。
「結果はどうだったんだ?」
「鑑定士が頭抱えてたよ。」
「あの剣は確かに凄かったわ。遠距離攻撃スキルが使えるようになる剣なんて、喉から手が出るぐらい欲しい人が沢山いるでしょうね。」
「まあな。でも剣だけじゃないんだ。ジャージもなんだよ。」
「えっ?」
「適正レベル35のフロアに挑戦する時に防具に関して一切触れなかったのは気になってたんだ。鑑定したらミスリル製の全身鎧並みの防御力だったよ。
ミスリル製の全身鎧の防御力を持ったジャージってなんだよ!?
軽くて、動きやすくて、しかも取得経験値アップまでついている。
見た目はふざけてるけど、中身は国宝級、いや伝説級の防具だったんだよ!」
「確かにモンスターの攻撃を受けてもダメージが少なかった気がするわ。」
「ウィルはどうやってそんな凄い武器や防具を用意したんでしょう?」
「それもある程度わかったんだ。
剣もジャージもダンジョンの宝箱産じゃない。職人によって製造された物だったんだ。いや、もしかしたらウィル本人が作ったのかもしれない。」
「ウィルが?さすがにそれは無理じゃないのか。」
「いや、ウィルだからできるんだ。
俺なりにウィルの凄さの理由を推理してみたんだ。」
「何かわかったの?」
「証拠は無いけど、俺なりの結論は出せたぞ。」
「マジか。教えてくれよ!」
「そうだな。俺たちはウィルがすげぇのは知ってるけど、その理由は知らないだろ。
でも今回の合宿とウィルの職業『フリーター』ってことから、理由が想像できたんだ。」
「『フリーター』って毎日違う職業になるから、弱い理由にはなっても、強い理由にはならないだろ。」
「いや、『フリーター』だからこそ強くなったんだ。まずはマーリンの転職の後のレベルアップを思い出してみろよ。」
「たしか、ホーリーサークルを大量にばらまいて一気にレベルを上げたよね。」
「その通り。あれで一気にレベル28になってただろ。もし、もっとレベルの高いフロアで、もっと強力なアイテムを使えば、一気にレベル40とか50になることもできると思うんだ。」
「確かにできそうだよな。」
「だろ。もし『フリーター』なら、毎日レベル1から50に上げることができるはずだろ。
すると、『フリーター』なら毎日職業が変わるから、びっくりするぐらい大量のスキルを取得できるはずなんだよ。しかも、レベルアップの時にスキルのレベルも上がることがあるから、ウィルは大量に高レベルのスキルを持っているはずなんだよ。」
「なるほど。なんでも器用にこなせる理由は説明がつきますね。でも強さの説明にはなりませんわ。どれだけスキルを持っていてもレベルが伴わなければ強くなれませんわ。」
「いや、レベルも高いんだよ。
転移陣とか転移魔法って知ってるか。」
「転移魔法って伝承とかに出てきますよね。」
「転移陣は国内にも幾つか存在するわ。非常に貴重な物だから国が管理しているはずよ。」
「そう。おそらくウィルは転移に関係するスキルを持っていると考えていると思うんだ。
なにせ、『フリーター』の特性と急速レベルアップで、スキルは山ほど持っているだろうからな。
それで毎朝、ドラクロアダンジョンに転移して、一気にレベルを50に上げる。
すると、たとえ戦闘職でなくてもレベルが50あって、スキルも高ければ、強くなると思うんだ。
それに装備も無茶苦茶良いのを使ってるだろうしな。」
「なるほどな。確かに毎日レベル50まで上げているって仮説は面白いな。」
「でも私の実感とは合いませんわ。リディアは上級職でレベル40間近。でもウィルとの差はとても大きいように感じました。たったレベル10ぐらいの差では説明がつきませんわ。」
「確かにな。良い線はいってると思うけど、俺も今の仮説が完璧とは思ってないよ。もしかしたら、『フリーター』には凄い特性があるのかもしれない。なにせ『フリーター』で毎日レベル50まで上げるヤツなんて今までいなかっただろうからな。」
「どちらにしろ、ウィルが規格外なのは間違いないよな。アイツと一緒にいると常識を見失うからな。」
「これからもウィルが何をするか楽しみですわ。」
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