熟練治癒士

「はじめまして、ミリアと申します。『転職の儀』を行うためにお招き頂きました。」

「こんにちは、モーリンです。私が転職希望者です。」


「おめでとうございます。転職条件を満たされたんですね。では、こちらへいらしてください。」

モーリンが頷いて、ミリアの目の前に歩み寄る。


「ミリア様、転職が終わるとレベルが1になります。急な体の変化にフラつく方もいらっしゃいますので、お気をつけください。」


モーリンが頷きながら、緊張した面持ちで立っている。

ミリアが右手でモーリンの頭に触れる。


「それでは『転職の儀』を行います。モーリン様に更なる可能性を与えたまえ!」

モーリンの体がうっすら輝く。

ミリアがそっと手を降ろす。

「モーリン様は『熟練治癒士』になられました。女神様の御加護があらんことを。」


「おめでとう。これでお仕舞いだよ。」

ウィルが声をかける。


「なんか不思議な感覚だね。レベルが1になって体が重いはずなのに、気分が高揚して、ふわふわしている気がする♪」

「うっかりダメージを受けないようにね。HP も防御力も最低になっているから、死の危険があるからね。」

「うっ、気をつけます。」

舞い上がっていたモーリンが少し落ち着いた。



そして翌日。

「今日は戦闘前にちょっとモーリンにやってもらいたいことがあるんだ。ちょっとキースも手伝ってよ。」

「何したらいいんだ?」

「この筒をこんな感じでモーリンの前で持っててくれる。」

「わかったよ。」


「私は何をしたらいいの?」

「この引き金を引いて。」

「わかった!」

モーリンが引き金を引くと筒から沢山の『ホーリーサークル』が飛び出した。

モンスターたちの集団にいくつもの光の柱が乱立する。


「じゃあ、残ったモンスターは僕らで仕留めるよ。ちょっと待っててね。」

ウィルとカシム、ソニアが飛び出す。

クラリスたちやミックは眺めている。


舞い踊るように銃を乱れ撃つソニア。

駆け抜けながら剣を振るうカシム。

散歩するように歩き回るウィル。

あっという間にモンスターは全滅した。


「なんてスピードなの。」

「私たちがあんなに苦労してるのに。」

「仕方ないですよ。ウィリアム様ですから。」

「私、レベル28になってる!」

「これで昨日までと同じように戦えるでしょ。」

「すげぇとは思ってたけど、ウィルの強さが桁違いだな。俺たちも強くなってきたけど、余計に差を感じるな。」


なんかワイワイ話をしながら、次の戦いの準備を進めていく。



そして数日、クラリスたちはミックたちと一緒に適正レベル30のフロアで戦いを続けた。

そして夕食後、いつもはミーティングを始めるんだけど、今日はウィルが時間をもらうことになっている。


「さてと、強化合宿も残すとこ3日。

明日から適正レベル35のフロアに挑戦してもらうよ。でも今の状態じゃ、ちょっと厳しいんだよね。」

「私たちも強くなりました。適正レベル35のモンスターとも戦えるんじゃないかしら?」

「う~ん。確かに個人個人も強くなったし、連携も良くなったよ。でも根本的に装備が物足りなくなってきてるんだよね。」

「でもクラリスの杖はダンジョンの宝箱産の逸品です。私たちの装備もクラリスほどではないですが、かなりの良品です。」

「そうだね。市販品の中ではね。でも、適正レベル35とか40を考えると、今の装備じゃ戦えないよ。」


「だから冒険者はレベル30ぐらいが限界になるんだろ。」

「キースの言う通りだよ。みんな装備品が足を引っ張ってるんだよ。

そこで、皆に戦える装備品を用意したよ。」


「ウィルが用意した装備か、楽しみだな♪」

「でも装備の代金はどうするんだ?」


「今までダンジョンで倒したモンスターのドロップアイテム。一度も皆に渡してなかったよね。それを使って全員の武器を用意したよ。」

「「「「おぉぉぉ~」」」」


「まずはクラリス!

『宝樹の杖』だよ。」

「今使用している『黒古樹の杖』はかなり魔法攻撃力が高いわよ。それよりも良い物かしら?」

「間違いなく良いよ。特に特殊効果がね。今の杖は『聖属性のモンスター特効』だろ。それに比べて、『消費MP 低減』『詠唱速度上昇』『火・風・雷属性魔法効果上昇』の特殊効果がついているよ。もちろん魔法攻撃力も負けてないよ。どうかな?」

「素晴らしいですわ!魔法使いに欲しい効果が勢揃いしています。確実に戦力アップになるはずよ。」


「次はリディア!

『軽業師の槍』です!」

「どんな槍なのですか?」

「クラリスの杖みたいに特殊効果がすごいってタイプじゃなくて、使いやすさを重視した感じかな。両手槍にしては破格の軽さ。しかも『素早さ』と『器用さ』に補助がつくから、装備した方が素手より素早く動けるよ。」

リディアは槍を持ちながら、

「不思議な感覚です。両手槍とは思えない軽さです。しかも、手に持つと体が軽くなる感覚があります。」

「竜騎士に不足しているステータスを補えるから、活躍の場面が増えると思うよ。」

「ありがとうございます!大事に使います!」


さぁ、続々といくよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る