強化合宿 その2

「お疲れ様。モンスターが増えるとやられちゃったね。」

「連携はそれほど悪くなかったと思います。そもそもの実力が足りなくなってきたと感じました。」


「そうだね。そろそろ個人個人の実力を底上げしないと連携だけでは対処できなくなってきてるね。」

「じゃあ、この適正レベル25のフロアで経験値を獲得して、レベル30を目指すか。」


「それだけじゃないよ。スキルの獲得やスキルレベルのアップも意識していこう。

しっかりとどのスキルを狙うか意識すると全然違うよ。

例えばクラリス。『魔法詠唱速度上昇』とか『魔法効果範囲拡大』。この2つのスキルを獲得すると、同じレベルでも戦闘効率は格段に良くなるよ。」

「狙ってスキルを獲得するということですの。そんな話聞いたことないわ。」


「追い込まれた状態で、どのスキルを獲得したいかを明確に意識しながら、その効果を目指して行動すると獲得できることがある。

それぞれの適正を見て、僕がスキルを教えるから、これから取得を目指してみよう。」



そして2日後。

「やりました。『攻撃範囲拡大』が取得できました。」

「俺も『回避』のスキルが取れたぞ。」

リディアとキースがスキルの獲得第一号になった。

その後もスキルの獲得ラッシュが続いた。


レベルの上昇、スキルの獲得でどんどん戦闘は優位に進み、適正レベル25ならほとんどサポート無しで戦えるようになった。



そして、

「今日から適正レベル30のフロアに挑戦してもらうよ。さすがに適正レベル30をこの人数だけで挑むのは無謀だから、今日から他の冒険者パーティーと共同で戦ってもらうからね。共同で戦うけど、連携はしないから離れてバラバラに戦うって感じになるよ。いいかな。」


「ついに適正レベル30か。レベル30を超えれば一流って感じだからな。楽しみだな。」

「適正レベル30で戦えば、すぐに30になれるよね。そしたら私もついに中級職か。」

「篝火ダンジョンで楽にレベル上げをしていたら、こんな経験は積めなかったでしょうね。」

「このままのペースでガンガンいこうぜ。」


みんなのやる気は十分だね。

これなら、まだまだ頑張れそうだね。



「ミック、来てくれてありがとう。」

「こちらこそ。ウィリアム様にお声かけ頂き光栄です。」

ミックと握手を交わす。

ミックはこれから一緒に戦うパーティーのリーダーだ。変なパーティーは呼べないから、モンドの孤児院にいた子どもたちのパーティーだ。『就職の儀』を受けたら戦闘職だった子どもたちがパーティーを組んでいる。年齢は僕らの同い年だね。

ダンジョンの中街の住人だから、上級職でレベルも50ぐらいだ。日頃はミレーヌの依頼を受けて不足気味なアイテムを集めている。毎日のようにダンジョンで戦っている実力者だ。装備も見た目は普通だけど、ダンジョンの中街産だから、かなり高性能な物になっている。


「ウィリアム様、そちらのリーダーは?」

「クラリスかな。」

クラリスが前に出る。

「はじめましてミック様、今日は宜しくお願いします。」

「こちらこそ宜しくお願い致します。私たちはフロアに入ったら、左手側に展開します。右側をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「構いませんわ。中間付近のモンスターはどうしますの?」

「まぁ、離れているから大丈夫でしょう。

遠距離攻撃で巻き込まない。

近寄り過ぎない。

それぐらいでいいんじゃないでしょうか。

それにお互いドロップアイテムが目的ではないので、それが理由で、もめることもないと思いますし。」

「わかりました。お互い頑張りましょう。」



「強い!」

「昨日までのモンスターより断然強いぞ。」

「倒すのに時間がかかるわ。その前提で動きましょう。」


モンスターは強くなっているが、みんなも昔みたいに簡単には崩れなくなっている。

倒すのに時間はかかっているけど、確実に数を減らしていく。


そして、、、

「勝てた!」

「キツかった~。」

「初回で勝てるなんて、俺たちも成長したな。」

「それぐらいにして、あちらを見てみろ。」

「えっ!」


そこにはミックたちが獲得した大量のドロップアイテム。

クラリスたちが獲得したドロップアイテムの3倍はあった。

「すげえ!」

「あれが私たちとの実力の差ってことだよね。」

「自信失くすわ~。」

「俺たちと同年代なんだろ。信じられねぇ。」

「まだまだ私たちは井の中の蛙だったということでしょう。」


「彼らは『就職』してから、ずっとこのダンジョンで戦っているからね。相当強いよ。

少しでも追いつくように頑張っていこう。」


「よし!次はもっと差を縮めるわ。」

「同年代に負けてられないな。」

「学園生の意地を見せましょう。」



そしてもう一戦。

当然、すぐに差が縮まることもなく、でもなんとかモンスターを倒しきった。


「やった!!

私、レベル30になった!!

転職できるわ!!」

「おめでとう。」

「良かったじゃない。」

「これで中級職だな。」

「中級職の回復職なんて超人気者じゃん。」

モーリンがレベル30になり、中級職に転職できるようになった。


「モーリンおめでとう。

屋敷に『転職の儀』ができる人を呼んでいるから、戻ったら転職できるよ。」

「さすが、ウィル!手配が完璧ね♪」

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