夏休みの準備
「ウィルは夏休みは実家に帰るのか?」
「その予定だよ。」
放課後の勉強会の終わりに、間近に迫った夏休みについて話題に上がった。
「でもドラクロア領は遠いだろ。往復だけで1ヶ月ぐらいかかるんじゃないのか。移動だけで夏休みがほとんど終わるのにいいのか?」
「普通ならね。でも素早い移動手段を用意したからね。1週間ぐらいで行けるようにしたんだ。」
「なんだよ、それ?」
キースが会話に入ってきた。
さすが商人の街の出身。食い付きが違うね。
「内緒だよ。良かったら一緒に来ない?
一緒に来れば秘密がわかるよ。
話題のドラクロアダンジョンでレベル上げもできるし、勉強に関しても僕がいるんだから大丈夫だよ。
来て損はさせないよ。クラリスはどうかな?」
「お父様に確認してみないとなんとも言えないわ。楽しそうだから行ってみたいけど。」
「俺は行くぜ!」
「俺も♪」
「レオンとキースは参加ね。
エリュートロンとモーリン、カレンは?」
「私も家に確認しないとすぐには答えられませんわ。」
「私は参加で~♪」
「私も参加したいです。」
「じゃあクラリス、リディア、エリュートロンは答えが出たら教えてよ。」
「わかりました。せっかくだし、お父様に頼んでみますわ。」
「よろしくね。こっちもスケジュールが決まったら連絡するね。」
とりあえず、今日はこれで解散した。
カレンの参加が決まったから、カレン強化計画としては成功かな。
できれば保留のメンバーも参加できればいいな。おそらくクラリスが参加できればリディアとエリュートロンも参加できると思う。
よし!
裏から手を回そう。
学園長室に突撃!
コンコンコン
「ウィリアム=ドラクロアです。今お時間いただけませんか。」
「入りなさい。」
マードック学園長の返答が聴こえた。
「失礼致します。」
「ウィリアム君か。珍しいね。私のところに急に訪ねてくるなんて。」
「突然の来訪、失礼致しました。ご対応頂きありがとうございます。
今日はお願いがあって参りました。」
「ほぅ、お願いですか。どんな内容ですか?」
「夏休みにドラクロア領内にて強化合宿を計画しています。私やカレンなどが参加予定です。そこにクラリス王女が参加できるように手を回して頂きたい。」
「理由を聞かせてもらおうか。王女の予定に口出しをするというのは、相当ハードルの高いことですよ。」
「理由は簡単です。クラリス王女が参加すると、クラリス王女を含め、参加者みんなが楽しいからです。」
「理由はそれだけなのか?」
「学生の行動理由としては十分でしょ。」
「王女の予定を変更するには不十分な理由です。あなたならわかるでしょう。」
「わかりませんね。
学園長、これはチャンスですよ。
あなた方が僕に依頼したことを達成するためにも大切なことです。
それに私に依頼達成の謝礼を出すあての無いあなた方にとって、僕に恩を売れるんですよ。」
「確かに君に任せてから、カレン君の成長は著しい。だが、何故そこにクラリス王女の参加が必要なんだ。その理由をちゃんと説明して欲しい。」
「今回の強化合宿で大幅に成長させる予定です。クラリス王女が参加しないと、追い抜いてしまう可能性があります。
クラリス王女はみんなの憧れであり、目標でなければならない。
こんなタイミングでクラリス王女を追い抜いても何も良いことは無いですよ。
切磋琢磨する仲間は大切でしょ。」
「なるほど。意図はわかりました。
ちなみに君はみんなのレベルをどこまで上げるつもりなんだね。」
「最低でも30は超えるつもりですよ。」
「レベル30と言えば相当だよ。
今の1年生だと1人だけという少なさですよ。」
「ドラコぐらいはソッコーで超えるよ。
で、協力はしていただけるんですか?」
「わかりました。国王陛下には進言してみましょう。ただ判断されるのは国王陛下です。どう判断されるかはわかりませんよ。」
「十分です。もしダメだったら他の手を使うだけですから。」
「フッフッフッ、君が他にどんな手段を考えていたのかは気になるところですがね。」
「ただ直接頼むだけですよ。どうやってお会いするかは秘密ですけどね。」
「聞かない方が良さそうですね。」
「共犯になってくれるならお話しますよ。」
「ハワード先生から報告は受けていましたが、君は確かに我々の想像を遥かに超えていますね。」
「それでは、僕は失礼しますね。
後は宜しくお願い致します。」
そして僕は学園長室を退室した。
2日後。
「やりましたわ!父上が参加を許してくださいました。私も合宿に参加できますわ!
もちろんリディアも参加ですわ!」
「宜しくお願い致します。」
「クラリス様が参加されるなら、私も家の許可が取りやすいですわ。」
「すごいな!
こんな超豪華な合宿、聞いたことねぇよ!」
「ここまでメンバーが集まるんだ。内容がショボかったら許さねぇぞ。」
「大丈夫だよ♪
みんなの想像を超えていくから期待しといてよ。」
「それだけ自分でハードル上げるって、どれだけ強気なんだよ。」
「大丈夫、大丈夫。夏休みを楽しみにしといて。しっかり準備しとくから。」
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