夜間訓練

今日は食糧確保の時間がなかったから、夕食は質素にパンと干し肉になった。


夕食を終え、テントに入ることになった。

今日の見張りは、

ノーマン、キース、レオン、ウィルの順番に決まった。

キースがレオンを起こして交代した後、僕はこっそり抜け出して、ダンジョンにレベル上げをしに行った。

時間が無いので、さっさとレベルを100にしてしまう。


その後、またこっそりテントに戻った。

しばらく横になっているとレオンがやってきて、僕の肩を叩いて起こした。

「ウィル、交代の時間だぞ。」

「ありがとう。行ってくる。」


全員が配置について、見張りを開始してしばらくした頃。


不審な動きがあった。

こそこそと隠れて動く存在がいる。

まだ遠いけど。

2人かな。


「リディア、不審者を2名発見した。他にも仲間がいる可能性が高い。至急、監督官のモルガン先生に報告してきてくれ。」

「わかった。」

一緒に見張りをしていたリディアが静かに駆け出した。

「コーウェンは周囲の見張り班に情報共有をして。」

「わかった。」

コーウェンも走り出した。

今回の見張りは3人1チームで行っている。

2人を連絡役として走らせたので、僕はフリーに動ける。



リディアは先生の控えるテントに到着した。

「失礼します。」

「どうしました?」

「北側の森にて不審者を2名発見しました。他にも仲間がいる可能性があります。」

「なるほど、わかりました。私は他の先生に報告してきます。東西の生徒にはこちらから伝令を走らせます。リディアさんは南側の見張りの生徒に知らせてください。」

「了解しました。」


キャンプ地の周囲を見張る生徒たちはにわかに騒がしくなった。


「見張りの生徒たちが騒がしいですね。」

「こちらを発見したのかもしれませんね。」

不審者役のカタリナ先生とアラン先生が静かに話をする。


「発見が早過ぎませんか。」

「見張りに適したスキル持ちがいたのでしょう。」

「想定よりも早いですが、どうしますか?」

「予定に変更はありません。隙をついて見張り網を抜けますよ。」

「わかり」

「そうはいきませんよ。」


カタリナ先生が話す最中に割って入った。

「ウィリアム君!」

「我々を発見したのはさすがですが、1人で接触するのは失策ですね。」

「そうでもないですよ。」


そう言いながら、一気に駆け寄る。

先生たちは戦闘体勢で身構える。

僕はショートソードを構えながら、直前で『ライティング』の魔法をカタリナ先生にぶつけた。

突然の強い光に眼をやられたカタリナ先生。

アラン先生はとっさに腕で眼を庇い回避した。


やるね。でも隙だらけだよ。

『パラライズ』

麻痺の魔法がアラン先生に直撃。

体が痺れて動けない。

まだ眼を押さえて苦しんでいるカタリナ先生に近づき、

『スリープ』

そのまま眠らせた。


その後、アラン先生、カタリナ先生を縛りあげ、カタリナ先生には回復魔法をかけておいた。

「後何チームいるんですか?」

「それは教えられないね。」

「それもそうですね。では麻痺を回復させますね。それからロープは強く引っ張ればほどけるようにしておきますので、モンスターが出た場合は自分で対応をお願いしますね。」

「助かるよ。じゃあ残りも頑張ってください。」

「ありがとうございます。では失礼致します。」


他にも仲間がいる。

間違いない。

リディアが伝令に走ったから、他の見張りチームも構えてはいるだろうけど、少し見てまわるかな。


南側に行くとえらい騒ぎになっていた。

どうやら不審者を発見したらしい。

不審者確保に生徒たちが走り回っている。


「持ち場を離れ過ぎだ。見張りが穴だらけだ。」

「そうですね。」

「なっ!」

「こっちはハワード先生が不審者役ですか。」

「お前は北側の担当だったはずだが?」

「見張りはアラン先生とカタリナ先生に代わってもらいました。」

「そういうことか。」

「僕のことを突破して行きます?」

「・・・やめておこう。」


ハワード先生はそういう言うと僕の反対方向に駆け出した。

「逃げちゃダメですよ。」

先生を追い越して、前から話しかけた。


「逃げることもできないか。降参だ。」

僕はショートソードを引き抜き、先生の首ギリギリのところを一閃する。

「じゃあ、これで殺したってことでお願いします。」

「わかった。」

「じゃあ、他も見てまわるので失礼致します。」


東西は特に不審な動きはなかった。

生徒たちが緊張した面持ちで見張りにあたっていた。


北側の持ち場に戻ってしばらくすると、見張り終了の連絡が入った。



そして朝食後。

ハワード先生が生徒全員に声をかけた。

「昨夜、見張りの抜き打ち練習を行った。

4班すべてに対して4人の先生が侵入を試みた。

完全に侵入を阻止できたのは第4班だけだ。他の3班は侵入を許している。見張りとしては失敗だ。

ただ第4班についても決して対応が良かった訳ではない。ウィリアムが先生を3名捕まえるという離れ業をやってのけたためだ。

行動面ではすべての班に反省が必要だ。

この後、何がダメだったのか検証を行う。」


検証を終えてから、再び王都まで歩いて帰り、校外研修は終了しました。

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