狩りの時間

キースが座り込んで休憩することになり、ようやく1人で自由に動けるチャンスがきた。


気配察知で周辺を探る。

少し離れた場所にいくつかの気配を感じる。

木の上にいるのは鳥タイプのモンスターかな。狙い目だね。

気配を消して、一気に駆け寄る。


見えた!

『暴れ大鳥』だ。3匹いる。

推奨レベル3のザコモンスター。

屋台の焼き鳥なんかによく使われるモンスターだ。

今日は美味しいごはんが食べられそうだね。


気配を消したまま、距離をつめる。

射程圏内に入った。

ウィルは小石を立て続けに3つ投げる。

全弾命中!

HP 0になり、そのまま木から落ちてくる。


簡単だったね。

4人で食べるには多いから、他のグループにも分けようかな。

とりあえず、そのままキースが待っているところまで持って帰ることにした。

本当は血抜きをすぐにしたいんだけど、血抜きしている間、ずっとキースを待たせる訳にもいかないからね。


「何持ってんだよ!」

ウィルの姿を見かけたキースは叫んだ。


「『暴れ大鳥』だよ。なかなか良い獲物が狩れたね。ちょっと血抜きしないといけないから、もう少し待っててね。」


近くの木に鳥を逆さまにぶら下げて、下に穴を掘る。魔法ならすぐに穴が出来上がる。

そして、首を切り落とす。

血が穴に降りそそぐ。


血の臭いに釣られてモンスターが集まらないように、簡単な結界を張る。


「血抜きしている間に、他に食べられそうな物がないか探そうか。」

「それはいいけど。どうやったら、こんな短時間に『暴れ大鳥』を3匹も狩ってこられるんだよ。」


「これが本物の冒険者の実力だよ。入学する前に山程モンスターは倒してきたからね。」

「一流の冒険者でもここまで早くねぇよ。」

「超一流ってことだね♪」

「なんも言えねえよ。」



とりあえず、2人で食べられる野草や木の実、茸なんかを集めてまわる。

ウィルの『鑑定』スキルを使えば、毒があるかどうかだけではなく、美味しいかどうかも簡単にわかる。


例えば、この茶色い茸。

無毒。食用に適す。食感が良く、旨味が強い。スープや煮物に最適。

ここまで鑑定できる。


十分な食材が集まったので、テントまで戻った。テントのそばでは、レオンとノーマンが焚き火の準備をしていた。


「すごいのを狩ってきたな!」

「美味しそうだろ。羽根をむしるのを手伝ってくれない?」

「これを全部かよ。」

「1人1匹やっといてよ。その間に他の調理もしとくから。」

「ウィルって料理できるのか?」

「『料理』スキル持ってるからね。期待しててよ。」



そして夕食。

『暴れ大鳥』のうち2匹は大きな葉っぱでくるんで丸焼きに。

ほぐして、他のクラスメイトにお裾分け。

うちのチームはソテーとスープにしました。


「「「うめぇぇぇ!」」

「レストランで出てくるレベルだぞ!」

「料理人でやっていけるんじゃないか!」

「外でこんな美味しい料理あり得ないよ!」


3人が口々に誉めてくる。

『料理』スキルレベル10だからね。

味に大幅に補正がかかっているよ。

でも料理人のムラーノが作る料理には及ばない。スキルだけでは越えられない壁だね。


料理も非常に好評を得て、1日目は終了した。見張りも特に襲ってくるモンスターもいないので、形式的なものだけだった。


なお、みんなが寝ている間にこっそり抜け出し、ダンジョンでレベル上げをしてきている。バレないように眠っている僕に似せた人形も用意してある。魔石をセットすると呼吸をしているように見えて、触れるとほのかに温かい高性能タイプだ。


そして翌日。

特に問題もなく日中は川で遊んで、晩ごはんには魚を調理して食べた。

しかし、夕食中に騒ぎが起きた。

A組のビルギットが森に入って戻ってこなかったのだ。


ハワード先生とドラコが話をしている。

「ビルギットが森に入ったのは何時だ。」

「昼食後すぐです。」

「1人で行かせたのか。」

「はい。この森に出るモンスター程度なら問題なく倒せると考えました。」

「正面から1対1で戦えば、だがな。

何故、我々への報告がこれ程遅いんだ。」

「それは、、、」

「まぁいい。どの方向に進んだかはわかるか。」

「・・・わかりません。」


「わかった。カタリナ先生はここに残ってくれ。他の先生は2人1組で探しましょう。見つけたら、上空に向かって合図を送ってください。もし、増援が必要なら、2回合図を送ってください。よろしいですね。」

先生たちは頷くと、四方に散らばって行った。


ハワード先生はウィルのことを見ながら、

「ウィリアム。緊急事態だ。私と一緒に来てくれるか。」

「わかりました。行きましょう!」


ウィルは駆け出し、ハワード先生が後ろに続いた。


夜の森での人探しはかなり難しい。

他の先生たちも動きは遅い。

ビルギットの無事を祈りつつ、駆けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る