カレンの決意

冒険者ギルドを出た後、

「すごいです!

本物の貴族ってあんな感じなんですね!

ギルドマスターに対して、あんな対応ができるなんて、さすがです!」


「日頃、王女様がすぐそばにいるんだよ。

ギルドマスターぐらいにビビる訳がないじゃん。

カレンもすぐに馴れるよ。」


「うちの実家は貴族と言っても、農民と変わらないんだ。農民たちと一緒に農作業をして、一緒に狩りをして。違うのは計算ができるから、代表して徴税をすることぐらいかな。

学園に来て、本物の貴族を見て、びっくりしてたんだ。

やっぱり、みんなとは住む世界が違うって痛感しちゃいました。」


「違わないよ。

少なくとも学園に通っている3年間はみんな一緒だよ。

学園に入学する前と卒業した後には、大きな差があるけどね。

そして、卒業後の差は、学生時代に何をしたかの差だよ。

今のまま、どうせみんなとは違うからって諦めるのか、

それとも、この3年間で逆転してやろう!って頑張るのか。

すべてはカレン次第だよ。」


「・・・はい。」




そして翌日。

教室にて。


「先生になってください!」


大声でクラリスに頭を下げるカレンがいた。


「ちょっと待ってくださる。

話が見えないの。」


突然のことに戸惑うクラリス。

斜め後ろで警戒するリディア。


「ご、ごめんなさい!

気持ちだけが先走ってしまって。

私、授業についていけなくて、

でも、何をどう頑張ればいいのかもわからなくて、、、

それでウィル君に相談したら、

『教師役をしてあげるけど、1人では無理だから、僕と釣り合う教師役を自分で探して来て。』

と言われたんです。

でも、ウィル君が納得しそうなのはクラリス様しか思い浮かばなくて、、、

それで声をかけました。

申し訳ございませんでした。」


深々と頭を下げるカレン。


「頭を上げなさい。

何も謝るようなことはしてませんわ。

確かにウィリアムさんに見劣りしない人物を探すのは難しいわね。

私に声をかけたのも納得よ。

いいわ。

空いた時間で良ければ、勉強を教えましょう。

クラスメイトが一緒に勉強をする、というのは普通のことでしょ。」


「ありがとうございます!」


カレンはせっかく頭を上げたのに、また深々と頭を下げる。


「ちょっと待ったー!!」

レオンが割って入ってきた。


「その授業、豪華過ぎるだろ!

俺も混ぜてくれよ~。」


「クラリス様さえ嫌じゃなければ、僕はいいと思うけどね。

エリュートロンはどう思う?」


「え?えぇ?私?

もちろん参加したいわ!

3人でやるよりも、もう少し人数を増やした方が効率的ですわ。

教師役だけではなく、ともに学ぶ存在も必要ではないかしら。」


「確かに一理あるかもしれませんわ。」

「だろ、だろ。

じゃあ、俺とエリュートロンも参加ってことでいいな。」


「「俺も(私も)参加させて!!」」

近くにいたキースとマーリンが声を上げた!


「じゃあ、あんまり人数が増えても効率が落ちるから、僕、クラリス様、リディア、レオン、エリュートロン、キース、マーリン、それとカレン。

このメンバーで勉強会を開こう。

基本は僕やクラリス様が教えるけど、得意科目なんかはみんな教える側に回ってね。」


「クラスの仲間同士、得意科目を教え合う。

素晴らしい取り組みになりそうね。」


「僕とクラリス様はオールラウンダー。

レオンは一般教養科目が得意。

エリュートロンは貴族常識や歴史。

キースは計算や実技。

マーリンはA組ギリギリラインだからカレンの刺激になりそうだね。

今日の放課後から開始しようか。

先生に言って部屋を借りれるようにしとくよ。」



そして放課後。

8人での勉強会をスタートした。

今日の授業の復習や予習。さらに深掘り。

テストは順位を明確にするため、難易度の高い問題が数問出される。

それを解けるか解けないかが差になるんだ。


初めてにしてはかなり良かったと思う。

基本的にA組のメンバーだから、みんな優秀。

そんなメンバーが意欲的に取り組むんだから、そりゃ成果が上がるよね。

みんなカレンに教えながら自分の成長に役立てようとしている。


これからも放課後に集まれるメンバーが集まって実施していくことになった。



みんなと解散した後、ハワード先生に報告しに行った。


コンコンコン

「ウィリアムです。」

「入ってくれ。」

「失礼します。」


中にはハワード先生とカタリナ先生がいた。


「勉強会はどうだった?」

「なかなか有意義な時間だったと思いますよ。これからも継続することになったので、あの教室を使わせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか。」


「ああ。かまわない。

使っていない教室だ。自由に使ってくれ。」


「ありがとうございます。」


「しかし、よく考えたものだな。

クラリスを巻き込んで、コーチ陣を大幅強化したわけか。」


「ハードルの高い依頼だからね。

使えるものはなんでも使うのが、依頼達成のコツだよ。」


「依頼達成の方法は問わない。

結果さえ出せば、こちらに異論はない。」


「勉強をみんなで一緒にやって、時々ダンジョンでレベルアップさせる。

それで依頼達成だよ。」


「油断するなよ。」

「もちろん。」

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