それぞれの週末
もうすぐ週末。
というタイミングでハワード先生に呼び出された。
なんの用事だろう?
コンコンコン
「ウィリアムです。」
「入りなさい。」
「失礼します。」
部屋の中にはハワード先生とカタリナ先生がいた。
「呼び出して悪かったな。
時間はかからん。少し話を聞いてくれ。」
「大丈夫ですよ。何かありましたか?」
「カレンと仲が良いと聞いているが本当か?」
「悪くは無いけど、とても良いってことも無いですよ。少し勉強を教えているぐらいです。」
「十分だ。
お前に頼みたいことがある。
カレンをサポートしてもらいたい。」
「依頼には報酬が必要です。ハワード先生に依頼に見合った報酬が出せますか。」
「報酬か。」
「そうです。僕を動かすだけの報酬はハワード先生には出せないでしょう。」
僕が話すとカタリナ先生は驚き、呆気にとられた表情をしている。
さすがにベテランのハワード先生は表情を崩していない。
「確かに、俺個人ではお前の満足する報酬は無理だろう。だが、学園が全力を挙げて報酬を用意することを約束しよう。」
「わかりました。
カレンをサポートするという依頼だけど、達成条件は何ですか?」
「依頼でサポートをしているとバレないこと。
サポートの結果、
教養科目でA 組平均以上の得点を得る。
レベルを30以上に引き上げ、十分な戦闘能力を身に付けること。
これが条件だ。」
「達成期限は?」
「今年の期末テストまでだ。」
「相当に難しいですよ。」
「わかっている。学園も全力でサポートする。」
「わかりました。
その依頼、引き受けましょう。」
「よろしく頼む。」
約束を交わして、僕は退室した。
かなり厄介な依頼ではあるけど、頼まれた時点で断るって選択肢は無い種類の依頼だよね。
とりあえず、今より接点を増やさないと無理だね。
動いてみるかな。
ウィリアムが退室した後、
「彼は何者なんですか?」
「優秀な生徒は今まで何人も見てきたが、ウィリアムは別格だ。我々にコントロールできるかの不安はあるが、今回の目的を達成できるのは彼ぐらいだろう。」
「彼にできますか?カレンの実力はH 組レベルです。A組のみんなも勉強をしているんです。それをたった1年で追い付くなんて。」
「彼の手腕に賭けたんだ。黙って見守るしかないさ。」
教室にて、
「みんな週末は何する予定なの?」
「私はお茶会なの。ウィルもどうかしら?」
「俺は剣道場で剣の稽古だな。ウィルも一緒にどうだ?」
「せっかくだからショッピングに行きたいな。ウィル君もどうかな?」
教室にいた、エリュートロン、キース、モーリンがバラバラに答えた。
誘ってくれるのは有難いけど、一度にバラバラに誘われると、返答に困るな。
「おいおい、ウィルが困ってるじゃないか。ちょっとは考えろよ。」
「ありがとう、レオン。」
「週末どうするか迷ってるのか?」
「そうなんだ。俺も地方出身だから、王都周辺のことは知らないし。」
「ウィルはストイックだからな。ダンジョンなんてどうだ?」
「いいね♪さすがレオン。
王都から近いダンジョンってあるの?」
「そうだな。
オススメは『篝火ダンジョン』だな。
出てくるモンスターがウッドゴーレムとか、火属性が弱点のモンスターばかりなんだ。
だから、火属性のマジックアイテムとかを用意していけば、簡単にレベルアップできるんだぜ。」
「他にはダンジョンあるの?」
「近いのは『泥んこダンジョン』だぞ。」
「あっ!」
キースが応えると、レオンがあからさまに嫌そうな反応をした。
「どんなダンジョンなんだ?」
「ここから一度近いけど、ダンジョン内が湿地になっていて、汚れるわ、進みにくいわ、おまけにモンスターはヌルヌルしてて防御力の高いモンスターが多いんだ。
小銭を稼ぐ以外にメリットの無い、不人気ダンジョンだぜ。」
「貴族は普通『篝火ダンジョン』に行くわ。火属性ダメージを与えられるアイテムを用意しておけば、格上モンスターも倒しやすくて、レベルアップが容易なの。」
キースとエリュートロンが補足をしてくれた。
「つまり、レオンは僕を護衛代わりにして、『篝火ダンジョン』で楽してレベルを上げたいということだね。」
「な~、身も蓋もない言い方するなよ~。
でもダンジョン行くのは悪くないだろ?」
「よし、
僕は『泥んこダンジョン』に行くぞ!
一緒に行く人いない?」
誰の反応も無い。
よっぽど人気の無いダンジョンなんだね。
「カレン。
週末一緒にレベル上げしないか?」
僕らのすぐそばで座っていたカレンに急に声をかけた。
「えっ、えっ、私?」
「そうそう。レベル上げたいだろ?」
「そっ、それはまぁ、」
「僕が一緒だと心強いだろ?」
「た、確かに、そう、」
「よし、決まりだな!
明日の朝一、門のところで待ち合わせしよう。武器と防具は忘れず装備してきてね♪」
「えっ、えぇぇぇ~。」
強引に約束を決めてしまう。
カレンの性格から、無視して来ないってことは無いだろう。
カレン強化計画始動!だね。
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