古代魔法考察

用兵術を終えた後、古代魔法考察が行われる教室に移動した。


入ってみると、小さな部屋だけど、生徒は1人しかいないから、ガランとしてるね。

しばらく待っていると先生が入ってきた。

ボサボサ頭にぐしゃぐしゃの白衣を着たおばさん?って感じだね。

顔もまともに見えない感じだけど、大丈夫なのこの先生?


「今年は多いね。

初日に2人も来るなんて。

さてと、まずは自己紹介をしておこうか。

古代魔法考察の担当、ダリアだ。

2人の名前も教えてくれるかな。」


「ウィリアム=ドラクロアです。」

「ミラ。」


起きているのか寝ているのかもわからないような、ぼーっとした顔の女の子が名前だけを応えた。


大丈夫か?この教室?


「ウィリアムにミラか。

いつもは生徒の名前なんか聞かないんだけどね。なんだか長い付き合いになりそうな予感がしたんでね。

お前たちは古代魔法というものを知っているか?」


「そんなスキルは聞いたこともありません。だからこそ、この授業に興味を持ちました。」


「そうだな。聞いたこともないのは当然だ。そんなスキルは存在しない。」


「存在しない?

なら、どうしてそんな存在もしないスキルを考察するんですか?」


「古代魔法というのは、女神様がスキルというシステムを作られる前に存在した魔法のことさ。」


「ダリア先生。

大量に質問があるんですが。」


「一通り説明してやる。

それを聞いてから質問をしろ。

それまでは黙って聞け。


まず女神様は世界を作っていない。

闇に飲み込まれた世界に、

『職業』、『スキル』、『レベル』、『ダンジョン』。

今の世界を形作っているシステムを人間に与え、世界を救済した。

これが神話だ。


そして、ポイントなのは、女神様がこの世界を救済する前にも人間は存在し、闇と戦っていたということだ。

その女神様の救済以前に使用していた魔法のことを古代魔法と呼ぶんだ。

つまり『スキル』を使わずに、使用する魔法、それが古代魔法だ。


古代魔法の特徴はその自由度の高さだ。

現在の魔法は威力の差はあるが、中身は同じだ。誰もが『火魔法』のレベル1でファイアアローを覚える。それは誰でも同じだ。

しかし、古代魔法は違う。

創意工夫の塊だ。

火魔法と言っても千差万別。

中には火を鳥の形にして飛ばすような猛者もいたようだ。


過去の失われた技術である古代魔法を復活させることが私の目標だ。」



すごいな。

考えたこともなかった。

スキルを使うことが当たり前になり過ぎていたのかもしれない。

目から鱗が落ちた気分だよ。


「でも失われた技術を、どうやって考察するんですか?」


「いい質問だ。

古い遺跡を調べる。

各魔法スキルの隙間を調べる。

本当なら、見捨てられた地を調べに行きたいのだがな。」


「見捨てられた地とは何ですか?」


「女神様がこの世界を救済される際に、世界中すべてが救済された訳ではない。救済から漏れたエリア、それが見捨てられた地だ。

そこには女神様の救済が及んでいない。

つまり、そこにはスキルが存在せず、古代魔法がそのまま残っていると考えられている。」


「見捨てられた地に行った人はいるんですか?」


「残念ながらね。数多の冒険者が見捨てられた地を目指したけど、生きて帰ってきた冒険者はいない。

女神様の加護のあるエリアを超えた時点で、スキルが使え無くなると言われている。

しかも、モンスターも極端に強くと言われている。

使い慣れたスキルが使え無くなって、初見の強敵に囲まれる。しかもそれが海上という環境だからね。

皆、海の藻屑と消えてしまったのさ。


もし、勇敢なAランクの冒険者と知り合ったら紹介しておくれ。

なんとか見捨てられた地にたどり着いてみたいんだ。」


見捨てられた地。

失われた、スキル以前の魔法。


面白いじゃないか!

目指してみよう!

見捨てられた地!

探求してみようじゃないか、『古代魔法』!


まずは自分で古代魔法を調べてみるかな。

すべての属性魔法は使えるし、魔法陣や魔道具、魔法剣とか、魔法関連のスキルもいっぱい持っている。


魔法陣とかはかなり、自由度が高い。

例えば、

火魔法レベル1、ファイアアロー。

火の矢を飛ばす魔法。

ダリア先生も言ってたけど、誰が使っても同じだ。

でも魔法陣だと、

形を矢にするか、玉にするか、刃にするかなどの変更もできる。

数も変更可能。

属性も変更可能。

消えないように継続することも可能。

とにかく、一つ一つ細かい指示を魔法陣に書き込めばその通りに起動する。

その理論を魔法に落とし込めば、古代魔法に近づけるかもしれないかな。


それと見捨てられた地にたどり着く方法も考えないとね。

ダリア先生の話だと、海を越えて行かねばならないということだろう。


さすがに船で長旅はつらいし、海上でモンスターと戦うのは危険だ。船を守りながら戦わないといけないっていう足枷がある。

それに遅いし。


飛行できる手段がいいね。

ただし、自力飛行は避けたい。

飛行するだけで魔力を消費するし、戦闘にも影響が大きい。

なによりも、女神様の加護のあるエリアを超えた瞬間に墜落する可能性が高い。


未知への挑戦。

十分な準備が必要だね。

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