模擬戦振り返り

マルコとの戦闘を終えて僕はみんなのところに戻った。


「凄かったな。さすがウィル。」

「ありがとう、キース。」

「初めてやったとは思えない落ち着きだったぜ!」

「まぁ、人形を使った模擬戦だからね。勝っても負けても、死にはしないから、落ち着いて戦えるよ。」



「では、もう1試合行う。

誰かやりたい者はいるか。」

「「「はい!」」」


ほとんどの生徒が手を挙げたんじゃないかな。


「よし、ではマイケル、アリス。

次はお前たちがやってみろ。」

「「わかりました。」」

A組の生徒じゃないね。他のクラスの生徒2人が指揮官席に移動した。


モニターでの観戦はとてもわかり易かった。

実際に指揮官をすると情報不足で、情報収集に苦労したからね。


マイケルが赤軍、アリスが青軍になった。

試合展開は、

序盤、双方ともに斥候兵を放ち、探り合う展開になった。

双方の斥候兵が相手の拠点情報をほぼ同時期に発見した。

双方ともに60程度の兵士を連れて行軍。

ちょうど両陣営の中心付近で遭遇戦となった。

状況を把握できないまま乱戦が続き、どちらも戦力を半減させたあたりで退却をした。

どちらも拠点に退却して体制を整えたが、30前後の兵力を失い、その後は消極的な動きに終始した。

ちょっと退屈な内容だったかな。

横で見ていたキースに声をかけると。


「1試合目が盛り上がったから、2試合目は退屈だったな。でも普通の生徒がやるとあんな感じになるんだぜ、きっと。

ウィルとマルコの試合が特殊だったから、ハワード先生は普通の初心者同士の試合を見せたかったんじゃないかな。」


「僕も初心者なんだけどね。」

「他の初心者とは全然違うな。さすがドラクロア家ってことかな。」



「よし、この後、教室に移動して、戦闘内容の分析と議論を行う。各人、自身の見解を述べられるように準備をしておけ。」


そして、教室にて。

「まずは第一試合ウィリアム対マルコの分析を行う。

では、それぞれの基本戦略を説明してみろ。誰かできるか。」


何人もの生徒が手を挙げた。

「よし、キース、言ってみろ。」


「はい。

ウィリアムの基本戦略は相手を懐に敵を引き付けての防衛及び、敵軍の戦力を低減させること。

マルコの基本戦略は軽装の弓兵を斥候代わりに使用する奇策、スピードと攻撃力に特化部隊運用でした。敵拠点を最速で落とすことを主眼に置いた戦略でした。」


「うむ。

その認識で間違いないだろう。

マルコの作戦の長所と短所はなんだ。」


「長所は斥候兵を使わないことで戦力が上がっています。相手拠点を落とす戦力、自拠点を守る戦力を確保しやすくなります。

短所は本職の斥候ではないので、得られる情報の量と質が低下します。」


「では、ウィリアムの作戦の長所と短所はなんだ。」

「長所は作戦通りにいけば、拠点を利用した有利な地形で挟み撃ちという最高の形が作れます。

短所は先に伏兵を狙われた場合、非常に厳しい展開になってしまいます。」


「そうだな。

ではそろそろ本人の意見を聞こうか。

まずはマルコ。敗因はなんだと思う。」


「初めての模擬戦で拠点に引きこもる消極的な作戦を取るほどの臆病者だとは思わなかった。ドラクロア家の人間なら、もっと勇猛果敢に攻めてくると思っていたのにな。」


「なるほどな。

ウィリアムはなぜ今回の作戦を取ったのか理由を聞かせてもらおう。」


「今回の模擬戦は兵士の人数も少なく、兵種も少ない。こんな状況なら、確実に拠点を利用して、守りを重視する方が有利だと思ったんだ。相手が攻めてくれば勝てるし、攻めて来なければ引き分け。悪くないでしょ。

それにマルコはやる気満々だったからね。

何か作戦があって、絶対攻めてくると思ったからね。

まさかあんな方法で火力とスピードを両立させるとは思わなかったけどね。」


「そうだな。

マルコの作戦は悪くなかった。

おそらく、ウィリアムのような極端な防衛策でなかったら、止められなかっただろう。

作戦の相性が最悪だったな。

相手に作戦を悟らせないようにするのも大切だ。

攻撃性を見せ過ぎたのがマルコの失敗と言えるな。」


「くっ、

どうして、どうして、どうして、、、」

マルコがぶつぶつ言っている。

なんか怖いね。。。

どんどん壊れていってる気がする。


「今日の授業はここまでだ。

本来の授業では、もっとシチュエーションなどを詳細に決めて、より実践的な模擬戦を行っていく。今回のような単純な戦闘は入門編だな。回を重ねる毎に状況理解や戦術理解の深さが問われることになる。

ここで学んだことが実戦でも活かされることだろう。

選択科目として選ぶ場合、難易度の高い授業になる。高得点を獲得するには並大抵の努力では足りないことは覚悟しておくように。」

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