模擬戦(対マルコ)
「みんな、よく聞け。
今から行うのは『拠点攻防100対100』だ。
まずはそれぞれ拠点の位置を決めてくれ。」
指揮官席には簡易な地図が用意されている。
その半分が赤、残りが青に光っている。
僕は赤軍なので、赤のエリアに拠点を設置することができる。
山があり、侵攻方向が2方向に限定できる場所に指定した。
「次に拠点に兵を配置してくれ。
今回指定できるのは、戦闘兵、斥候兵、魔法兵、回復兵の4種類だ。
自分の戦略を最大限発揮できる人員配備を考えるんだ。」
一般兵は武器や防具を変えるだけで何にでも使えるオールラウンダー。
斥候兵は移動速度は速いが戦闘は不向き。敵に見つかると逃げるしかない。
魔法兵は威力の高い遠距離攻撃である、攻撃魔法が使用できる。ただし、それ以外の能力は低いので、接近されると簡単に倒される。
回復兵は身近にいる兵を回復してくれる重要な存在だが、攻撃手段は無い。
今回は防衛重視でいこうかな。
拠点を守ることを重視した陣容にしていく。
「準備が整ったら、準備完了のボタンを押せ。制限時間があるから、タイムアップにならないように。
さて、ウィリアムとマルコが準備している間に観戦に関して説明しておこう。
この大きなモニターに映されているのが今回の戦場だ。
赤軍がウィリアム、青軍がマルコだ。
当然両者は相手の拠点の位置は知らない。
指揮官席には簡易なマップがあり、それを元に、指示を出すことしかできない。
自軍の兵士に関しても拠点を出て指揮官の視界から外れれば認識できない。
こちらのモニターではそれぞれの兵士が赤や青になっている。
そして兵士の周囲の明るくなっているエリアが兵士の視界だ。
平野では広く、森林などでは狭い。当たり前だな。
さてそろそろ準備が整ったようだな。」
「戦闘中は俺は口を挟まない。
観戦中はこのモニターを見ながら、双方の戦略を分析し、自身の今後に活かせるようにするんだ。わかったな。」
「「「はい。」」」
生徒たちの声が重なる。
さてと、斥候兵を放って周囲を探りながら、戦闘準備を進めるかな。
マップはほどほどに広い。
すぐに交戦とはならないだろうけど、準備はしとかないとね。
ようやく、ヒット!
『青軍進軍中、数およそ60。』
目撃地点と進軍方向が地図に表示された。
斥候兵の帰還にかかった時間を計算するとここぐらいまで進んでいるかな。
ちょっと違和感があるね。
進軍が速過ぎる。拠点を発見してからじゃなく、進軍しながら探索もしているのかな。
進軍中の部隊を探りながら、待ち受けて、迎え撃つ。
拠点に敵軍が接近して、全容がわかった。
その数、80!
こちらも防衛体制を取る。
拠点にいるのは40。
「ハッハッハッ!この勝負もらったぞ!」
マルコが声高に叫んだ。
指揮官席の声は観戦している生徒にも、もちろん対戦相手にも聞こえない。
なかなか、思いきった作戦できたね。
斥候兵の報告では、数は60だったのに、いつの間にか80に増えていた。
全兵力の8割で攻めてくるなんて、凄いな。
何かカラクリがあるんだろうね。
敵軍に攻め込まれながらウチの防衛部隊が弓矢や魔法で遠距離攻撃を放つけど、マルコの進撃は止まらない。
40対80だと止められない。
良い攻撃だよ。
もし工作兵がいて、拠点を強化してれば、ある程度防げたかもしれないけど、無い物ねだりしても仕方ないね。
どんどん押し込まれて拠点にかなり接近されてきた。
そろそろかな。
「クックックッ、もう少し粘ってみせろよ、ウィリアム=ドラクロア!」
マルコの軍勢の背後に僕の兵士50が現れる。
最前列で重装歩兵が槍を一列に構えて突撃していく。
挟み撃ちに混乱し、体制も整わないまま攻撃を受けるマルコ。
「なぜだ!
なぜ、こんなに早く攻撃部隊が戻って来るんだ。」
90対80。しかも挟み撃ち。
戦闘は一方的だ。
「引くか。
いや、懐深く入っているんだ。拠点さえ落とせば勝ちだ!
攻め抜くのみだ!」
折れないな。
でも拠点を落とさせはしないよ。
攻め続けるマルコの軍勢が徐々に減っていく。それでもマルコは攻撃を止めない。
しかし、勝敗は突然決した。
『指揮官死亡により、青軍敗北。赤軍の勝利です。』
やったね♪
初勝利はやっぱり嬉しいな。
「良い試合だった。初試合とは思えないハイレベルな内容だった。
皆には良い刺激になったことだろう。
この後、ミーティングを行い、戦闘を振り返るぞ。そこまでがセットだ。
ただの観戦で終わらせず、自らの血肉になるように、しっかりと咀嚼するんだ。」
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