クラスメイト

ハワード先生に続いて、全員が教室を出る。

歩きながら、知り合い同士の生徒たちは楽しそうに話をしている。

王都に住んでいる生徒は知り合いのパターンが多いみたい。

僕は冒険者をやってたから、貴族の知り合いなんて全然いないけどね。


打ち解けたいとは思うけど、声のかけ方がわからない。そんなことを考えていると、

「ウィリアムさん。」と声がかかった。

声のした方を向くと、クラリス王女とリディアさんがいた。


「クラリス様にリディアさん。

どうかしましたか?」


「一言お詫びをしておこうと思いまして。」

「お詫びですか?特に迷惑を受けた記憶は無いんですが。」


「本来、入学生代表で挨拶するのは、その年の首席入学者ですの。

貴方は満点で首席入学ですからね。

でも学園が王女である私に配慮して、私に代表を務めるように要請してきました。

貴方の活躍の場を奪ってしまい、申し訳なく思っています。」


頭の下げられる王女。

得点高いね。


「どうぞお気になさらずに。

素晴らしい挨拶でした。

私が挨拶するより良かったと思いますよ。」


「そう。ありがとう。

卒業生代表は実力で取るようにしますわ。」

「私がいる以上、満点を取らないと同率首位にはなれませんので、頑張ってくださいね。」


「素晴らしい自信ですわね。

面白い!まずは貴方に勝つことを第一目標にしますわ。」

「高い目標であり続けられるように努力しますよ。」

「私を失望させないようにしてくださいませ。」


クラリス王女とリディアさんとは離れた。

学年2位の才媛王女とその護衛。

護衛を務めるためにはA組であり続けなければならないので、リディアさんも大変だね。


いくつかの施設を回っているが、グループを作れていないのは僕を含めて数人だね。

マルコの太鼓持ちはA組にはなれなかったらしい。

1人で寂しそうだけど、僕と目が合う度に睨んでくるのは止めて欲しい。逆恨みは怖いね。


勇者カレンも寂しそうに1人で歩いている。

「カレンさんはどちらの出身ですか?」

優しく声をかけてみた。

「えっ、あっ、その、なんで私の名前をご存知なんですか?」

「クラス分けの発表で全員の名前が書いてあったからね。席もその順番だから、わかったよ。

あっ、僕はウィルね。

みんな、既にグループが出来てるみたいだから、声をかけさせてもらったんだ。」


「も、もちろんウィリアムさんのことは存じ上げています。と言うか、全生徒が満点のウィリアムさんのことは知っていますよ。」


「なるほど。代表挨拶しなくても知名度は上がってたんだね。

それから僕のことはウィルでいいよ。

これから3年間、長い付き合いになりそうだしね。」


「えっ、でも、あの、私はA組にい続けられるかどうか。。。」


「大丈夫だよ。努力は裏切らない。

これから一緒に頑張っていこうよ。」


「ありがとうございます!

ウィリアムさん、あ、ウィルさんに声をかけて頂けるなんて光栄です。」


「この学園では、みんな平等、みんな仲間だ。光栄なんてことは何も無いよ。」


「でも私の家は吹けば飛ぶような貧乏騎士爵ですよ。かの有名なドラクロア伯爵家のウィルさんとは格が違います。」

「そんなことは学園内で気にすること無いよ。だって、カレンさんの前に話をしたのはクラリス王女だよ。

そんなの気にしてられないよ。

それに入学式で、一番トップのクラリス王女が平等だとおっしゃっていたでしょ。」


「そ、そうですね。頑張ります。」


う~ん。話をした印象はオドオドした、田舎の女の子って感じだね。

それに貴族として、特別な教育を受けたという感じもない。

10歳になって『就職の儀』で周囲の環境が激変してしまったって感じかな。

学園というよりも王家が動いたのかな。

おそらく、クラリス王女は何も知らされていないんだろうね。

知ってたら、何かしらのアクションはあるだろうしね。



「変わった組み合わせだね。」

軽い口調で男の子が声をかけてきた。

さっきまで別のグループでしゃべっていた男の子だね。

「僕はリオン君と違って知り合いがいないからね。1人でいた者同士で話をしていたんだよ。」


「さすがミスター満点♪

俺の名前までもう覚えてるのかよ。」


リオン=カルデール

王都に住む子爵の息子で、文官系の家柄だ。


「1年間、一緒に学ぶ仲間だからね。」

「1年と言わず、3年間、一緒に学べるように俺も頑張らないとな。へへ。」


社交性の高いタイプみたいだね。


「リオン君はお友達も多そうだし、是非紹介してもらいたいよ。」

「ハハハッ、もちろん。

って言うか、みんなウィル君と話をしたがってるよ。

ただ、あのドラクロア伯爵家だし、入学試験は満点だし、最初に王女様が声をかけるし、で話し掛けるハードルが高くなり過ぎて、声をかけるタイミングを失ってたんだよ。

良かったら一緒に来ないかい?

もちろん、君も一緒にね。」


カレンさんにも声をかけるレオン君。

いいヤツなんだろうな。


レオン君きっかけで話ができるクラスメイトが増えました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る