国立高等教育学園
無事に入寮の手続きを済ませた。
僕に与えられたのは2LDKの部屋だ。
メイドのソニアが1部屋を使い、残りが僕のスペースになる。
学園は『平等な学びの場』ではあるが、そこかしこに、地位による区別がある。
寮の部屋も親の地位によって変わってくる。
王族は最上階のワンフロアすべてが部屋になる。
騎士爵の子どもはワンルームの部屋。連れてきた従者は大部屋での生活になる。
ただし、大半の騎士爵の子どもは従者を連れてくる余裕が無いけどね。
エール王国の序列は、
王族
公爵
侯爵
伯爵
子爵
男爵
騎士爵
となっている。
ドラクロア家は伯爵であるが、領軍の強さや領地の広さなど、ほとんど侯爵と変わらないぐらいの待遇にある。
学園内においては、親の爵位によって与えられる環境は異なる。
しかし、成績評価だけは、家柄に関係無く、本人の実力のみによって行われる。
学園には埋もれた才能の発掘や、学生達の競争意識を高めるために、成績評価は完全な実力主義を取っている。
そして、その競争に勝ち上がってこそ、貴族社会に仲間入りできると考えられている。
そのため、寮は爵位によって決まるが、クラス分けは成績順に行われる。
最優秀のA組で卒業することはステータスとなっている。就職先にも困らないし、場合によっては次男がA組卒業をきっかけに後継者に選ばれるなんてこともある。
逆に、最下位のH組での卒業となると、下手をすれば勘当されてしまうこともある。平民に養子に出される場合なんかもあり、とにかく貴族としては失格の烙印を捺されてしまう。
週末に行われる入学試験の成績で、最初のクラス分けが行われる。
学園での成績は大きく2つの項目に別れる。
1つは共通科目。
国語、算数、歴史、宗教、外国知識、社交などなど、エール王国の貴族として必要な知識などを身につけることを目的とした科目。
もう1つは職業科目。
戦闘、統治、生産、商売など『職業』によってできること、身につけられるスキル、成長するステータスは全然違う。
そこで職業の種類によってコースが別れる。
戦闘職と生産職が戦っても勝敗はわかっているからね。だから、職業の系統毎にその系統に必要な技能を学び、評価を受ける。
そして、共通科目と職業科目の合計点で成績が決まる。
ここで問題なのは僕の職業は『フリーター』だということだね。どの系統にも属さない職業だからね。
どうなるんだろう?
そして、週末。
ついに入学試験の日がやってきた。
入学試験と呼ばれているけど、正確には最初のクラス分け試験だ。
どれだけ成績が悪くても、貴族の子どもはみんな入学するからね。
それにもう寮に入っているからね。
寮を出て少し歩くと、試験会場にすぐに到着するよ。
なぜ入学前から寮に入れるのか?
遠方から来る学生も多い。馬車は天候次第で到着日数が遅れてしまうことが多々ある。
そのため、早めに出発するのが常識だ。
しかし、天候が良いと予定よりも早く着き過ぎることもある。
その時に、貧乏貴族には宿屋で数日過ごすのは負担が大きい。
そういった事情から、早く着いた学生が使用できるように、寮は早くから開けられている。
僕は試験会場に到着すると、受付を済ませた。
会場にはたくさんの受験生がいる。
試験は
1日目に一般教養の筆記試験と面接。
2日目に職業系統毎の実技試験。
そして3日目にはクラス分けが行われ、クラス毎の授業が開始される。
受付を終えたら、ソニアと別れて、教室に案内された。
不正防止のために、従者は教室に入ることはできないようになっている。
試験官が2人入ってきた。
「初めまして。試験官のハワードと。」
「カタリナです。」
色黒で長身の男性試験官と細身の女性のコンビだ。どちらも気がキツそう。
「これより試験を開始する。
当然だが、カンニングなどの不正行為は禁止だ。
発見した場合は、明日の実技試験を待たずにH組が確定してしまう。また実家にも通報される。
人生を台無しにしたくなければ、下らんことはするな。」
試験官のハワードさんから厳しいお言葉が飛ぶ。
「これより解答用紙を配布します。
ベルの合図が鳴ったら開始してください。
すべての問題に解答を終えた者は退出して、次の面接会場に移動してもかまいません。
ただし、一度会場を出た者は二度と入室はできません。
また、試験終了の時間になればベルを鳴らします。それ以降に解答用紙に記入する行為は禁止されています。
ルールを守れない者はエール王国の貴族に相応しくないと心得てください。」
試験官のカタリナさんも厳しいお言葉だね。
カーンカーンカーン
試験が開始した。
簡単だったね。
僕は『学徒』という学者系の標準職もカンストさせているし、勉強を教えてくれているリィナは伝説職『グレートティーチャー』。
同じ時間勉強しても学習効果が全然違う。
スラスラ問題が解ける。
たぶん全問出来たと思う。
待つのは暇なので、解答用紙を提出して、部屋を出ることにした。
席を立ち、解答用紙を提出しようとすると、
試験官のカタリナさんが、
「もう提出されるのですか?」
「たぶん全問出来たと思うからね。このまま座ってても時間の無駄だし。」
カタリナさんは僕の解答用紙をしばらく眺めてから、
「わかりました。では、面接会場に移動してください。今ならすぐに面接が受けられると思います。」
次は面接か。
どんな面接なのかな。
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