フルブライト公爵

マルコ=プルートウによる多少のトラブルはあったが、他は大きな問題も無く盛大なパーティーも無事終了した。


そして、

エリック兄さんとローザリア様、

ドラクロア家全員、

フルブライト公爵夫婦、

嫡男のロナウド様

がドラクロア家の屋敷に集まっている。


「ドラクロア卿。

今日の結婚式は素晴らしかった。

安心してローザリアを嫁がせられるよ。」


「私は戦場は得意でも、この手の社交は得意ではないのでね。段取りはすべてエリックに任せただけです。

エリックが無事に式を取り仕切ってくれて安心しました。

すべてはエリックの手腕です。」


「なるほどな。なんでもできるという、エリック殿の評判は本当だったわけだ。

では、あのロールケーキもエリック殿が用意されたのか?」


「残念ながら、私では無く、弟のウィリアムが用意しました。」

「それはまことか?」


「事実です。ウィリアムが用意してくれました。我が弟ながら、その才覚には驚かされることばかりです。」


「それではウィリアム君。あのデザートを用意した目的を教えてくれないか?」


「わかりました。お答えします。

狙いは3つありました。


1つ目は、フルブライト公爵家とドラクロア家の関係の良さを示すためです。

フルブライト卿の領内の名物『羽イチゴ』を使うことで、両家の蜜月を示そうとしました。


2つ目は、あえて生の羽イチゴでは無く、ジャムとドライフルーツを使用することで、皆がマネをしやすくしました。

これからのお茶会ではロールケーキが人気になることでしょう。

その出荷元になるフルブライト公爵には良き贈り物になると考えました。


そして、3つ目は、僕が美味しいデザートを食べたかったからです。」


「ハッハッハッ、なるほど。

エリック殿の言うことがわかった。

ドラクロア卿よ、子どもの教育方法を本にせぬか。国中の貴族が挙って買うぞ。」


「子どもたちは私が教えていないことまで、勝手に学んでくる。

特にウィリアムは私の考えも及ばないことを簡単にやってのけるのだ。

どうして、こう育ったのか教えて欲しいぐらいです。」


「ウィリアム君、君は今年から王都で学園に通うんだよね。」

「では、いつでも我が家に遊びに来なさい。

私はだいたい王都にいるからね。

困ったことがあった時もいつでも頼りなさい。ドラクロア卿は戦場に出て、すぐに連絡がつかない場合もあるだろう。

そんな時は私がドラクロア卿の代わりを務めることを約束しよう。」


「ありがとうございます。

学園の生活に慣れた頃に、ご挨拶に伺います。」


すごい後ろ楯を手に入れてしまった。

フルブライト公爵は王国内では屈指の権力者だ。国王陛下に次ぐ発言力を持っている。

そんな人に気に入られるのはメリットが大きい。


みんながニコニコする中、アルガス兄さんだけは仏頂面をしていた。

気持ちはわかるけど、そんな顔に出してたらダメだよ。



そして、翌日。

家族を集めて父上が話始めた。

「昨日はよくやった。

皆ご苦労であった。

今日から私とエリックで各所に挨拶回りをする。

マリアンヌ、アルガス、アルマはアデードに帰ってローザリアを迎える準備をしてくれ。

ウィリアムは学園に通う準備をしてくれ。もうそろそろ寮も使えるはずだ。

それと、学園内に連れて入れる従者は1人だ。ベテランのホランをつけよう。」


「父上、私には専属のソニアがおります。」


「だが、今から呼び寄せていたのでは入学に間に合わないだろう。マリアンヌたちがアデードに戻ったら、入れ違いで出発させよう。

ソニアが到着するまではホランに任せるということでどうだ。」


「わかりました。では、

ソニア!」


僕が大きな声で呼ぶと、

スタッと僕の目の前に登場した。


「お呼びですか、ウィリアム様」

ちょっとカッコつけ過ぎかな。。。

メイドと言うより、忍者みたいだね。


みんな、びっくりして固まっている。


「ソニアも到着したし、問題ございませんね、父上。」

「あ、ああ。」


そのまま、まとまりの無いまま解散となってしまった。



その夜、アルマの私室を訪れた。

「あ~あ、ウィル兄様はこのまま王都に残られるから、また寂しくなってしまいます。」


「ごめんね。でも学園はちゃんと長期休暇があるからね。その時に帰るからね。」

「帰って来られた時には、いっぱい遊んでもらいますからね。」


「もちろんだよ。

それでね、今日はアルマにプレゼントを持って来たんだよ。」

「えっ!なんですか?」


瞳をキラキラさせて期待しているアルマは可愛いね。


「アルマが期待しているような物じゃ無いよ。これからダンジョンでレベル上げをするって言ってたからね。そのための装備だよ。」

「嬉しい♪

ウィル兄様が用意してくださったの♪

絶対大切に使うね!」


「まだ何も見せてないだろう。

今回は2つ用意したんだ。武器とアクセサリーだよ。まずは見てみてよ。」

僕は剣と腕輪を出した。


「うわぁ~、きれい。」

「どちらもアルマに合わせて、見た目と実用性を兼ね備えているよ。」


『薄氷のショートソード』と『始原花の腕輪』。


ショートソードは軽さと壊れにくさに特化した、ミスリル製のショートソードだ。

名前の通り極薄なのに頑丈で壊れにくい。

攻撃力は普通のミスリルソード並だから、たいしたことはない。


腕輪はかなりの自信作だ。

パッと見は、花や蔦などの美しい彫刻が目を引くだけの腕輪だ。

通常時は状態異常(毒、麻痺、眠り、誘惑、混乱、石化)耐性上昇の効果しかない。

でもHP が半分を下回ると自動的に発動。

腕輪の始原花リーゼカイセルの花が開き、装備者の全身を蔦が覆う。劣化版の始原花リーゼカイセルの体内に収納されて、リーゼカイセルが危険から退避することを主目的に自動で行動してくれる。

劣化版とはいえ、リーゼカイセル。

大半の敵は一瞬で蹴散らせる力を持っている。

危険なので、アルマ以外には使えない仕様にしている。



アルマが喜んでくれるなら作った甲斐があったよ。

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