幕間 ディーンの奮闘

武道会の開催が宣伝され、どんどん冒険者達が集まってきた。

どいつもこいつも腕に覚えあり、って面構えだな。

トラブルを起こさないように警備隊でも巡回を強化しないとな。


すぐにトラブルは起きた。

街の宿が満室になり、泊まるところの無い冒険者が溢れてきた。

幸い、開拓予定の空き地があったから、そこをテント用のスペースとして使うことで乗りきれそうだ。

宿が満室なことに文句を言って暴れだす冒険者も何人かいたが、全てつまみ出した。



街の中で小さな小競り合いは多数起きたが、大きな問題は無く進んでいた。


ところが、

ダダダダダダダダダダダダ

ミルちゃんが猛烈に走って来た。

「落ち着け、どうしたんだ?」

「ハー、ハー、ハー、大変なことになりました。」

「まずは水でも飲んで落ち着け。」

俺は水を差し出し、ミルに飲ませた。


「ふ~。ありがとうございます。少し落ち着きました。」

「良かった。で、何があったんだ?」

「はい、今回の武道会の上位者への景品にこっそりウィル様が謎の武器を紛れ込ませていたんです。」

「謎の武器?現物はあるのか?」

「今、ミレーヌさんに預けています。彼女の鑑定がこの街一番ですからね。でも、ミレーヌさんでも鑑定不能らしいんです。」


「ミレーヌで鑑定できない武器か。

ろくでもないな。

わかった。この件は俺が対応する。ミルは通常業務に戻ってくれ。」

「ディーンさん、ありがとうございます。」



俺はすぐにミレーヌのところに向かった。

「ミレーヌ。ミルにだいたいの状況は聞いた。どんな感じだ?」

「ダメね。私以外にも鑑定スキルを持っているメンバーに見てもらったけど、性能も素材も全て不明。

おそらく鑑定阻害系の特殊効果がつけてあると思うわ。

後は本人に聞くしかないけど、わざわざこんな物を用意したのに簡単に教えてくれるとは思えないけどね。」


「確かにな。少し触ってみてもいいか?」

「どうぞ。」

「持った感じは普通のナイフとしか思えないが、ウィル様が作った以上、普通な訳が無いよな。」

「そうね。ウィル様が普通のナイフを作る訳無いもの。って言うか、誰も鑑定できない時点で普通じゃないわね。」


「武器としての性能は実際に使ってみればわかるかもしれん。ハンスに少し使ってもらってもいいか?」

「大丈夫よ。壊れそうには無いから。失くさなければ問題無いわ。」

「ある意味、ハンスに失くしてもらうのが一番問題無さそうな気がするのは俺だけか?」

「ディーンさん、それは私も思うけど、さすがに捨てられないわ。」

「そうだな。ちょっとハンスのところに行ってくる。」

「何かわかったことがあったら教えて。」

「あぁ、わかった。行ってくる。」



ハンスと合流してダンジョンに入った。

「これが謎のナイフね。確かに鉄のナイフに似ているけど、重さが微妙に違うな。」

「さすがだな。俺にはわからなかった。」

「そりゃ、俺はナイフをメイン武装にしてるからな。ディーンさんよりは詳しくなるさ。」

「性能はどう思う?」

「使ってみないとわからないな。」

「確かにな。少しやってみるか。」


ディーンとハンスはレベル10相当のモンスターと戦闘を開始した。

「あっ!」

「どうした?」

「悪い、いつもの癖で投げちまった。」

「バカか、サッさっと回収しろ。」

「へいへい。

あれ?確かにこの辺に投げたんだけどな。」

「何をやってんだ。どこに投げたかもわかんねぇのか。」

「あった!・・・あり得ねぇ!!」


「何があった?」

「ディーンも一緒に見ててくれ。いくぞ。」

「バカ、また投げる、、、なっ!」

「やっぱりな。モンスター2体に貫通して、3体目も仕留めてる。えげつないナイフだぞ。」

「モンスターを仕留め終わったら、一緒にミレーヌのところに行くぞ。」

「わかった。」


ミレーヌ、ディーン、ハンスの3人で頭を抱えながら、

「やっぱり、とんでもない代物だったわけね。」

「あぁ、今から景品の変更はできないのか?」

「ダメね。もう冒険者達に景品一覧を伝えてあるから、運営への不信につながるわ。」


「ここは正攻法しかないんじゃないですか。」

「正攻法なんてあるのか?」

「ディーンが出場して優勝する。」

「はぁ?」

「いいわね。それなら誰にも文句を言われずナイフを確保できるわ。」

「本気で言ってるのか?それにどうして俺なんだ?」

「それはディーンがこの街で、ウィル様、カシム様、ソニア様を除けば最強だからだろ。」

「だいぶ除いたな。まぁ、あの3人は別格だが。」

「ディーンさん、頑張って優勝してください。でないとあのナイフが流出してしまいます。」


「わかったよ。やれるだけのことをやってみるよ。負けても恨むなよ。」

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