幕間 とある冒険者の報告

俺の名はディック。Dランクの冒険者だ。

さらなるランクアップを目指してバルベンの『見果てぬ塔』に挑むか、ウィリアムの新しいダンジョンに挑むか、を悩んでいたら、ウィリアムで武道会開催の情報を知り、ひとまずウィリアムを目指すことにした。


開拓が始まったばかりと聞いていたが、立派じゃないか。

俺の生まれ故郷の村より発展しているな。

宿は既に満室で取れなかった。

残念だが野宿だな。


幸い、空き地にテント用のスペースと、テント無しの冒険者用のスペースとが用意されていた。

俺はマントにくるまって寝るのには慣れているから、整地されているだけでもありがたい。


翌日、武道会のエントリーを済ませて、ダンジョンに向かう。ギルドでは大量のモンスターが出てくるので、パーティー推奨とのことだった。ダンジョンの入口には即席パーティー希望の冒険者がたむろしていたので、8人でダンジョンに入った。


凄いダンジョンだ。

効率が良い。モンスターが多過ぎて、シングルアタックは無謀だが、パーティーで挑めば、通常だと1日ダンジョンを探索して出会うモンスターを超える数のモンスターとすぐに戦える。

『見果てぬ塔』は知らないが、ここを本拠地に決めても良いかもしれない。


かなり稼げたと思う。

今まで通っていたダンジョンが馬鹿らしくなるぐらいだ。

せっかくだから酒場で祝杯を上げることにした。

飯も酒も旨い!

金がある時は多少の贅沢もしたが、ウィリアムの飯と酒は別格だ!

酒場で情報を仕入れたが、移住希望の冒険者が多く、長い順番待ちが出来ているらしい。

特に名物のダンジョン内の街は人気も高く、審査も厳しいらしく、なかなか住めないらしい。

俺も住んでみたいな~。



武道会の予選が始まった。

本選に進めるのは16人だけだ。


予選はダンジョンのモンスターとの戦闘だった。レベル30相当のモンスターとの戦闘からスタートだ。

くそ!俺には無理だった。

こんなところで死ねないからな。早々にリタイアしたさ。


レベル30相当って冒険者としてはトップクラスだろ。それが予選ってレベル高過ぎだろ。

しかも突破者が16人を超えたから、倒したモンスターの数で順位を決めていた。


本選進出者の誰が優勝するかの賭けで盛り上がっている。

本命はダンジョン内の警備隊隊長のディーンという男だ。

対抗は

ドラゴ。エール王国最強パーティー『悠久の栄光』のメンバー。

他にはホッジス。エール王国の騎士団員。

ハーランド。各地を転戦する有名な傭兵。


俺はディーンに賭けるぜ。



武道会以外にもイベントがある。

コンサートとオークションが大々的に行われている。


まずはオークション。

街の職人が作った作品が出品されている。

俺には価値はわからんが、高額で落札されていた。

今、出品されているのは『馬の着ぐるみ』。

何故か凄い高値で競り合われている。

どうやらふざけた見た目だが、非常に性能が良いみたいだ。

どれだけ性能が良くても、馬の着ぐるみを着てダンジョンに行きたくは無いけどな。

あれじゃあ、モンスターと間違えられるぞ。


コンサートは無茶苦茶盛り上がった!

可愛い女の子の歌がとっても良かった。

心を揺さぶる声だ。

楽しい歌声に聴く人達は盛り上がり、みんな一体になっていた。

最前列で盛り上がってた親衛隊の熱量は半端なかったぜ。



翌日、武道会の本選が開催された。

上位者への景品は4つ。

1位から順番に選んでいき、4位まで貰える形式だ。


景品は、

金貨、ミスリルスピア、ダンジョン街の居住権(家付き)、ウィリアムナイフ。


あれだけの金貨が貰えれば、当分遊んで暮らせる。良い装備も揃えられる。


ミスリルスピアも珍しい。持ち手のところまで全てミスリルで出来ている。槍使いなら、垂涎の品だな。


ダンジョン街の居住権(家付き)。これも魅力的だ。特にこの街を本拠地に決めたり、引退後のことを考えると、ベテランはこれを選ぶんじゃないか。


ウィリアムナイフ。ダンジョン発見者ウィリアム=ドラクロア氏が寄贈したナイフだ。鑑定不能というふざけた解説だけがされていた。

こんな物、誰が欲しがるんだ?



本選は白熱した闘いの連続だった。

どれもこれもハイレベルなやり取り。

俺も早く本選に出られる実力を身に付けたいぜ!

この世界最高峰の闘いを間近に見て、俺のやる気は燃え上がった。


結局、優勝は警備隊隊長のディーンだった。

警備隊が騎士団員や最強冒険者に勝つってどうなっているんだ?

希望した景品はウィリアムナイフ。

街への忠誠心が高いんだろうな。

俺もいずれ、この街の居住権を獲得してやるぞ。

まずはダンジョンでレベル上げだな。

予選を突破できるようにならないと始まらないな。

やってやるぞ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る