幕間 バルデスの報告

「オデロ様、アルガス様の報告は終わられましたか?」

「あぁ、だがアルガスはもう少し感情を抜きに報告できるようにならねばならんな。

バルデス、お前の報告を聞かせてくれ。」

「承知しました。

まず、ウッドエッジからダンジョンまでの道ですが、馬車が2台走らせられるほどの幅があり、道も平らで、よく均されています。」

「今後の人や物の流れが滞りなく行えるな。」


「開拓村ですが、順調に発展しております。

既に街の住人は500名を超えております。

こちらが名簿になります。」

「うむ。」

オデロが名簿を捲る。

「よくまとめられているな。

それに、どこから500人も集めたんだ。未開地周辺で集められる人数ではないぞ。」

「どうやら、先のドルマ帝国の侵攻により住む場所を失った民を集めたようです。

更にデリアン元男爵の家族や部下も吸収し、その領内にいた住民も一部流れて来たようです。」


「あのデリアン姉妹もウィルのところにいるということか?」

「はい。妹のミルオーレ=デリアンが開拓村の代表となっております。一族を守るため、戦いの経験も無い姉妹が激戦地で互いに庇い合いながら、戦い抜いた姿は美談とされ、その姉妹を引き取ろうとした貴族は多くおりましたが、ウィリアム様が獲得されておりました。」


「元男爵家が中心となれば、開拓村の統治もこなせるだろう。

しかし、食糧は足りているのか?それだけの難民を受け入れては食糧不足は目に見えているぞ。」

「それも問題無いようです。当初はウィリアム様が大量の食糧を用意し、現在は開墾も進み、自給自足ができているようです。」

「ちょっと待て。あり得ないぞ。こんな短期間にそこまで整えられるはずがない。」

「私もそう思いましたが、事実として、畑には作物が実り、住民たちの顔色も良く、飢餓に苦しんでいる様子はございませんでした。皆、口をそろえて、すべてはウィリアム様のおかげだと申しております。」


「はい、他にもBランク以上と見られる冒険者も多数おりました。これなら野生のモンスターに襲われて街が滅びるということも無いでしょう。」

「B ランクの冒険者を獲得するのはなかなか難しいことだぞ。それもウィルがやったと言うのか。」

「冒険者のまとめ役をしているディーンという者と話をしましたが、村に定住し、ウィリアム様にお仕えすると答えております。」



「ウィルには人を集める才能があるのかもしれんな。

それで、街の大半がダンジョン内にあるとのことだが、危険は無いのか?」

「生活スペースには一切モンスターは出ないようです。モンスターは出ない、天災のリスクも無い、ある意味理想的な環境です。」


「ダンジョンとしての活用はどうだ?」

「アルガス様の報告にあった通り、ドロップアイテムは豊富ですし、モンスターのレベルの高いエリアにもすぐに移動できるので効率的です。戦闘エリアが広いので、騎士団の戦闘訓練にも活用できます。

オデロ様の領地運営、騎士団強化にも役立つでしょう。」


「冒険者の誘致はできそうか?」

「既に宿の準備も進んでおります。冒険者ギルドに連絡を致しました。早急に対応を進めるとのことで、既にギルド支部設立に動いているようです。」

「早過ぎないか。どうやらバルベンのサブマスターが先回りして動いていたようです。

以前ウィリアム様はバルベンにいらっしゃっいましたので、そこから事前にリークしていたのではないでしょうか。」

「バルベンのサブマスターか。ギルドの大物ではないか。それだけの動きがあれば、冒険者ギルドのことは心配いらないな。」



「ふ~。順調そのものだな。

いや、異常過ぎる順調さだ。誰かの策略を疑いたくなるレベルだ。」

「今のところ、怪しい存在は見当たりません。ウィリアム様のお力によるものと考えて宜しいかと。」

「まさかここまでの事をやってのけるとはな。上2人の兄弟に比べて、おとなし過ぎると思っていたが、家を出たとたんにここまで変わるとはな。」

「まさに巣から飛び立ったドラゴンの如く、縦横無尽の大活躍です。」


「今後も更に発展していくだろう。いつまでも『ダンジョン』『開拓村』とも呼んでられないな。

街の名前は『ウィリアム街』、ダンジョン名は『ドラクロアダンジョン』と呼ぶと通達しろ。すぐに村と呼べない規模になるだろう。それと国王陛下への報告の準備も整えておいてくれ。」


「承知致しました。」

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