商人ミレーヌ

「僕は冒険者のウィル。こう見えてB ランクの冒険者だよ。」

「私はミレーヌよ。この露店の店主をやってるわ。

ねえ、その年でBランクは異常だけど、それだけじゃないよね。

Bランクの冒険者でも鉄の剣でミスリル合金の剣を叩き斬ることなんて、普通はあり得ないことよ。」


「ハハハ、さすがだね。よく見てる。

確かに並の腕じゃ出来ないことだね。

ちょっとした秘密があってね。

少し込み入った話がしたい。時間を貰えるかな?」

「いいわ。すぐに店じまいするから、ちょっとだけ待ってて。」


あっという間に片付けが終わった。

「早いね。」

「毎日出してる露店だからね。設営も片付けもパパッとできるようにしてるの。

それで、話を聞かせてくれない。」

「ありがとう。

僕は今、開拓村を作っていてね。

色々と必要な物が出てくるから、代わりに調達してくれる商人を探してるんだ。

ミレーヌさん、お願いできないかな?」


「もう少し詳細な条件を聞かないと判断できないわ。開拓村はどこにあるの?」

「ドラクロア伯爵領の未開地にあるよ。」

「残念だけど遠過ぎるわ。アデードの商人に相談した方がいいわね。コーナーなら多少のツテもあるけど、コーナーで仕入れても運べないもの。」

「それは大丈夫だよ。これを見て。

これはポータブル転移陣。

これさえあれば、開拓村とコーナーで荷物のやり取りも一瞬だよ。

片方をコーナー、片方を開拓村に設置すれば問題無いでしょ。」

「ちょっと待って!

それ、国宝級の貴重なアイテムよ!

ただの開拓村に使えるレベルのアイテムじゃないわ。どこから持ってきたの!」

「僕が作った。だから問題なし♪」


「あなた、本当に何者なの?

国宝級のアイテムを作って、ミスリル合金の剣を斬る実力を持っている。

あり得ないわ。」

「現実ってそんなもんだよ。

それで僕の提案は受け入れてくれる?」

「わかったわ。訳がわかんないけど、私の商人としての勘が、あなたは信頼できるって言ってるわ。」

「ありがとう。ミレーヌさんが協力してくれると助かるよ。とりあえずついて来て。」


そのままミレーヌさんと一緒に『帰らずの回廊』に転移。

キルアの協力を得て、伝説職直行コースを体験してもらいました。

職業名はそのまんま『伝説の商人』。

アイテムボックスが使える優良職だね。


無茶苦茶、混乱してたので、そのままダンジョン街に転移してマリベルさんに預けました。

なんかマリベルさんが優しく頭を撫でて、落ち着かせていた。

僕は悪いことしてないよね???



翌日、

「ウィル君、ようやく気持ちの整理ができたわ。あなたの依頼を引き受けるわ。

って言うか、伝説職にしてもらっといて、断るなんてできないしね。」

「ミレーヌさんが協力してくれるなら心強いよ。細かいことはマリベルさんやミルに聞いて。

こっちにも拠点があった方がいいだろうから、適当に家を1つ貰っといて。」


「『家』って適当に1つ貰えるもんだっけ?」

「ミレーヌさん、早く慣れてね。常識を捨てないとウィリアム様にはついていけないから。」

何気にひどい言われようだね。


「そう言えば、コーナーに錬金術師はいないかな?」

「いるのはいるけど、あまり評判の良くない人物よ。どうする?」

「会うだけ会ってみるよ。

ダンジョン街にも1人はいてほしいからね。イマイチな人だったら他をあたるよ。」



再びコーナーに移動。

ミレーヌさんの情報によると、名前はアルゴン。中級職『錬金術師』で腕は悪くないらしい。けど、かなり悪どい商売をしていることで有名だとか。でもコーナーで唯一の錬金術師だから、みんな仕方なく商売をしているらしい。


店を覗くと、

「いらっしゃいませ。」

お手伝いかな?12歳ぐらいの少し痩せこけた男の子が声をかけてきた。

「ちょっと回復系のアイテムを探してるんだけど、店主さんいるかな?」

「少しお待ちください。」


男の子が奥に引っ込むと、奥から、

「バカが!この俺様がガキのおつかいのためにわざわざ出て行く必要があると思っているのか!少しは考えろ!」

表まで聞こえてるよ。

商売としてどうなの。


「申し訳ございません。あいにく店主は今手を離せない作業をしておりまして。。。」

「君も大変そうだね。」

「申し訳ございません。」

「いやいや、責めてる訳じゃないんだ。でもなんでこんな店で働いてるのかなって思っただけでね。他にも店はあるでしょ。」


「仕方ないんです。私は『就職の儀』で『見習い錬金術師』になれたので、修行するためにこちらに奉公にきたんです。

ですが修行はできないまま雑用ばかり、辞めようにも最初にお金を頂いているので、返さないと辞めることはできないんです。」


「そっか~、ちなみにそのお金っていくら?」

「すいません。お客様にする話じゃなかったですね。失礼しました。忘れてください。」

「いや、実は『錬金術』スキルを持っている人を探しててね。スカウトしたいんだけどどうかな?

ここよりは良い環境で働けると思うよ。ダンジョンの素材もたくさんあるから、ちゃんと『錬金術』スキルのレベルも上がると思うよ。」


「でも、いいんですか?

まだ何もできませんよ。ご期待に応えられるとは思えないんですが。。。」

「大丈夫。初期投資としては安いもんだよ。よし、アルゴンを呼ぶか。呼んできて!」

「わかりました。では呼んできます。」

「よろしくね~」


「なんだ!さっき言ったことがわかってないのか!くだらないことでイチイチ呼ぶな!」

「僕が呼ぶのをくだらない、って言わないでほしいな。」

「なんだ!なにを勝手に入ってきてるんだ!」

「呼んでも出て来ないから来ちゃったよ。

とりあえずお金置いていくからさ、彼、貰っていくね。」


「は?なにを言ってるんだ?」

「じゃあ、お金も渡したし、行くよ。」

「ま、待て!無茶苦茶だ!こんな横暴が許されると思っているのか!」

「待たないよ。じゃ~ね~♪」


そのままダンジョン街に連れて行って、転職、レベルアップ。

後はマリベルさんに預けてお任せしました。

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