商人の街 コーナー

畜産スペースの目処が立ったから、次は海だね。

これはマジックアイテムを作れば簡単だよ。

ポータブル転移陣。

2つセットで片方を作動させれば、もう片方に転移するという仕組みになっている。


これを片方をダンジョンの海に設置、もう片方を紐で結んで、海中に垂らす。

すると転移陣のそばにある物をどんどん転移させていく。

1ヶ所に留まるより、移動しながらの方が色々な生物を転移させられるかな。


一晩中、海の上を右へ左へ飛び回り、かなりの生物をダンジョンに飛ばせたと思う。


後で確認したら、想像してたより少なかったので、もう一晩実施しました。


これで海も充実してきたかな。



次に向かったのは交易都市コーナー。

エール王国内で随一の商業都市。

ここで手に入らない物はない、と言われている街である。

『冒険者の街』バルベン

『商人の街』コーナー

王都

この3つがエール王国の三大都市と呼ばれている。


なぜコーナーに来たのかと言うと、ダンジョン街には足りない物がたくさんある。

毎回毎回、僕が自力で探し回るのは時間がかかるので、代わりに色々集めてくれる人を探そうと思っている。

親切な商人さん、いるかな?


まずは街を見て回ろう。

広場に行くと、沢山の露店が並んでいる。

売られている商品は玉石混淆。

これは目利きができればお得に買い物ができるけど、失敗すると粗悪品を掴まされる。

買い手の能力が試されるね。

もちろん、『鑑定』スキルレベル10の僕は価値を見誤ることはないけどね。


「ちょっと!難癖つけたいだけなら、どっかに行ってちょうだい!」

威勢の良い女性の声が響く。


「おいおい、偽物を置いてるから、それを指摘してやっただけだろ。そしたら逆ギレとはね。」

「どこが偽物なんだい!これは本物のブーチン工房製の剣だ。」

「ふ~、やれやれ、こんな低レベルな偽物を本物と言い張るとは。武器のことをもう少し勉強した方がいいんじゃないか。」


細身のおっさんが女店主に絡んでいる。

完全に嫌がらせだね。

しかも、この女店主の店は非常に良心的だ。

すべて価値に見合った適正価格より少しだけ安くで販売している。おそらく鑑定眼も良いし、性格もまっとうなんだろう。

ただ、おっさんの方が煽り方が上手い。

周囲に集まったお客さんはおっさんの意見に流されてそうだね。


「お姉さん、その剣買うよ。いくらだい?」

僕は大量の金貨が入ってる財布をこれ見よがしに見せる。

「おいおい、坊っちゃん。俺の話を聞いてなかったのか。それは質の悪い偽物だぜ。

どうせなら俺のオススメの店で買いな。そこなら良い品がそろってるぜ。」

「せっかくのお客様になんてこと言うんだい!商売の邪魔するならタダじゃおかないよ!」

お姉さんが凄い剣幕で睨み付ける。


「じゃあ、ちょっと待ってるからさ、おじさんのオススメの剣を持ってきてよ。

お姉さんとこの剣と比べて、良い方を買うよ。」

「坊っちゃん、俺が本物の良い剣を持ってきてやろう。比べれば、ハッキリするさ。」


そう言うとおっさんは駆け出し、しばらくすると戻ってきた。

「へへへ、見てみな。これはミスリルの剣だ。ミスリルの剣を使えるようになれば冒険者としても一流だ。そんじょそこらのナマクラとは訳が違うぜ。」

「待ちなさい!それ、ミスリルと鉄の合金でしょ。見た目はミスリルに似せているけど、本物のミスリルとは全然違うわ!」

「おいおい、もうちょっとマシな文句を考えな。誰がどう見てもミスリルだろうが!」


僕の鑑定眼だと、お姉さんの言い分が正しいって丸わかりなんだけどね。


「じゃあさ、僕がこのお姉さんの剣を持って、そっちのおじさんのお友達がおじさんの剣を持って、軽く手合せをしていい?

そうすれば、どっちの剣が良いかわかるじゃない。」


「坊っちゃんの提案だ。わかった。やろう。お嬢さんも今更逃げないよな?ヒヒヒ。」

「くっ、」

僕は手を上げて、喋ろうとしたお姉さんを止める。

「ここまでくれば、言葉は不要だよ。さあ、やろう!」


お姉さんの言いたいことはわかる。

ミスリル合金は鉄より硬い。

問題はそれをミスリルと偽って、お姉さんの剣の10倍の値段で売ろうとしていることだ。

打ち合いをすれば当然ミスリル合金の剣が普通は勝つ。



そして僕とおじさんの付き人が構えた。

互いに上段から剣を振り下ろし、剣が交わる。

その瞬間、

ミスリル合金の剣が真っ二つに折れた。


「なっ!」

「うん。どっちが本物かよくわかったよ。

鉄の剣で斬れるミスリルの剣ってのも珍しいね。ある意味価値があるかもね。」


「いっ、イカサマだ!

さっき触った時に細工をしたんだろ!

よくもウチの大事な剣を折ってくれたな!

責任を持って買い取れよ!」

「責任か。

お前はその剣を僕にミスリルの剣と言って売ろうとした責任を取るんだな。」

僕はおっさんに近寄り、小声で、

「僕の名前はウィリアム=ドラクロア。ドラクロア伯爵家に偽物を売りつけようとした責任とはいかほどだろうな。」

「まさか本物。。。」

「子どもがこんな大金を持っている時点で大商人か貴族の子どもしかあり得ないだろう。そこにペテンをかけるなど、命知らずな行いだな。」

「お許しください!私も騙されたんです。」


「言い訳を聞く気はない。今日、日が沈む前に街を出るなら不問としよう。」

「あっ、ありがとうございます!」

おっさんは駆け出して逃げて行った。



騒ぎが落ち着いて、

「さっきはありがとうね。おかげで助かったよ。でも君は何者なの?」

お姉さんが疑惑の目を向けてきた。

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