さまよう民

エール王国内、

バルベンの街まで歩いて5日ぐらいの距離の場所。

そこには300人ほどの家を失った民が歩いていた。ドルマ帝国の攻撃によって家を、農地を、家畜を、失った人々はただ、なんとか食い扶持を得ようと、大都市バルベンを目指して歩いていた。

そこには、今後の見通しなど何も無い。


エール王国としても300人の農民が、バルベンに無計画に流入されても、混乱するだけ。農民が減れば、税収が減る。

それを避けるために対策は検討しているが、簡単ではない。


バルベンを目指すが、到着しても何も解決しない。そんな民の足取りは暗く重たい。

民たちの行列の前にウィル達が立った。


「私の名前はウィリアム=ドラクロア。

これよりパンの支給を行う。

止まれ!」

『大声』スキルを使用したから、大音量だね。全員が立ち止まった。

カシムとソニアがすごいスピードでパンを配っていく。


その間に、

「食べながら聞いてくれ!

我々は農地と住む場所を用意している。

そちらへの移住を希望する者は今日の昼過ぎまで、ここに留まって欲しい。

バルベンに親類縁者がいて、生活のアテがある者はそのまま進んでもらってかまわない。

昼過ぎまでここで待つ者にはスープとパンを用意しよう。それを食べて待っていてくれ!」


大鍋と食材を大量にアイテムボックスから出して、木材と土魔法で即席の竈を5つ作る。

後はカシムとソニアに任せて僕は転移した。



バルベンの街の門を出たところにメルミル姉妹がいた。大きな荷車が2つあり、周囲に10人程度の人がいた。

近づくと、

「ウィル先生♪お待ちしておりました。」

「ウィル先生、この度はありがとうございます。母と妹を紹介させて下さい。

母のマリベルと妹のルルです。」

「マリベルです。メルとミルがお世話になりました。有難うございます。」

「ルルと申します。宜しくお願い致します。」

「ウィルです。これからよろしくね。

準備はできてるみたいだね。」

「はい。問題ございません。どちらに向かいましょうか?」


「大丈夫。行くよ。」

僕が転移魔法を発動すると荷車ごとダンジョン30階に転移した。

みんな目を白黒させているね。

「これは?」ミルがなんとか声を出す。

「ここは僕のダンジョンだ。

モンスターの出ないフロアだから安心して。そこに食糧やら日用品やら大量にあるから自由に使って。

荷物を置いて、一旦集まって。」

みんな呆然としているから、手を引っ張って強引に集める。

そして、今度は1階に転移。

たくさん並ぶ住宅を指差して、

「家はこっちね。自由に使っていいよ。

30階と1階を往復できる転移陣をそこに設置しとくから。後、あっちにある転移陣が2階に飛べるんだ。2階が農地になってるから後で確認しといて。」


全員、目と口が開きっぱなしだね。

「それで、みんなにはお願いがあるんだけど。」

返事がない。

仕方ない。

「ミル!お願いがあるんだけど。」

「はっ、な、なんでしょうか?」

ようやく意識を取り戻したね。

「この後、今回の戦いで家を失った人をたぶん2~300人ぐらい連れて来るから、面倒を見てあげてね。」

「えっ、えぇぇぇぇ~!?」

「大丈夫。ミルには『村長』の職業があるからね。僕もサポートするから安心してよ。

じゃあ僕は呼びに行くよ。」

「ちょっと待ってください!!!」

ミルの叫びも届かず、僕は転移をした。



さっきの場所に戻るとみんな、スープを食べていました。人数はちょっとだけ減ったのかな。でも1割も減ってない感じ。

「これから移動を開始する!

慌てる必要は無い。

食べ終わった者から順番にこちらに来てくれ。移動した先にみんなをサポートするメンバーがいる。その指示に従ってくれ。」


数人が集まって来たので、転移。

ダンジョン1階に降ろしたら、そのままとんぼ返りした。


ざわざわざわ


「今のは転移魔法だ。数日かかる距離も一瞬で移動できる。順番に転移していくから、並んで待つように!」

カシムが群衆に説明をしてくれている。

さすがカシム!説明上手。


僕は何度も転移で往復。

途中MPポーションを服用。

さすがにMP が枯渇しちゃうので補充しました。


なんとか希望者全員を運び終えた。

デリアン一家チームが指示を出しながら、どんどん家を決めて、割り振っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る