元勇者だって青春がしたい

ダンジョン発見

今、ダンジョンコアの前にいます。

『マッパー』という、地図作りに特化した職に成れたのが良かったね。

スキルレベルを上げたら、高速移動するだけで、広範囲の地図がどんどんできるんだよ。

バンバン空を飛んでたら、いつの間にか見つかってました。

結局、灯台もと暗し、ドラクロア領内で発見できました。

まだ未開のエリア、森の奥地で見つけました。おそらく、本来なら開拓が進んで見つかる頃には死ぬ運命にあったダンジョンだった。

さてと、ダンジョンコアに戻ろう。

不思議な魔力を放つ立方体がダンジョンの一番奥に浮かんでいた。キルアにダンジョンコアを見せてもらったことがあったから、すぐにわかったよ。

『帰らずの回廊』のコアに比べるとかなり小さいけどね。

ダンジョンコアに触れると、

『ようこそ、

ダンジョンマスターになりますか？』

そんな声が聞こえてきた。

「なるよ。」

『新マスター、お名前をお教えください。』

「ウィルだよ。」

『ウィル様、ダンジョンの運営を宜しくお願い致します。』

コアの前に多数の画面が浮かび上がる。

けっこう長い時間、ダンジョンコアの画面を見続けていた。

頭の中で情報を整理した。

まず、ダンジョンポイントについてだけど、加算される方法がかなり特殊だ。

『帰らずの回廊』はモンスターを倒すことでポイントが入る。

『見果てぬ塔』はダンジョン内に冒険者が滞在することでポイントが入る。

このダンジョンはダンジョンに取り込まれた装備品によってポイントが入る。

『取り込まれた装備品』というのは、ちょっと説明がいる。ダンジョンで亡くなった冒険者の遺体は、そのまま放置すると装備品ともどもダンジョンに吸収されてしまうのだ。

生きた冒険者のそばにある限りは吸収されないので、例えパーティーの誰かが亡くなったとしても、仲間が外に運び出せば吸収されない。

つまりダンジョンポイントを得るためには、パーティーが全滅するか、わざと誰もいない場所に装備品を放置するか、のどちらかしかない。

このダンジョンはたった5階しかなく、モンスターも貧弱。普通に考えれば、パーティーが全滅するなんてまずない。

でも僕には問題無いね。

いくらでも武器や防具を量産できるからね。

大量に装備品を作って、放置するだけで簡単にダンジョンポイントが貯まっていく。

次にダンジョンマスターの権限だけど、ダンジョンに関しては万能に近い。

階層の増減、広さの変更、気候、明るさ、材質、物の設置、モンスターの変更、などなど。

変更にはダンジョンポイントが必要だけど、ポイントさえあれば、いきなり海に変えたり、ジャングルに変えたり、モンスターのレベルも変幻自在。

転移陣や隠し通路だけじゃなくて、家や花畑、川、井戸、なんでも設置できる。

とりあえず、ダンジョンポイントを蓄えていくのが当面の目標だね。自由にダンジョンを操作するにはポイントは大量に必要だからね。『見果てぬ塔』で素材を集めて、武器や防具を大量生産していこう！

使わない前提の武器や防具って変な感じだけど。

ポイントを貯めながら、ダンジョンの活用方法も考えないとね。

正直、レベル上げや素材集めは今通っているダンジョンで十分だからね。

自由に使える広大なスペースと考えてみよう。役に立つかもしれない。

僕はただのBランク冒険者だ。

お金はある。でもそれだけだ。

今、僕が抱えている問題はモンドの孤児院のことかな。僕の寄付金で多少は生活がマシになったみたいだけど、それだけだ。根本的な解決はできていない。うまくダンジョンを利用できないかな。

とりあえずポイントが貯まってくれば、カシムやソニアにも相談してみようかな。

孤児院のこと以外にも活用できるかもしれないしね。