幕間 メルの決意
私達はデリアン男爵の娘として産まれた。
でも、デリアン男爵家は終わった。
当主である父が不正を働き、私腹を肥やしていた、ということで死罪となった。
母や私達姉妹も連座で死罪になりそうだったところ、母が色々なツテを頼り、なんとか娘だけでも助命して欲しいと嘆願した。
結果、戦争で国の為に私とミルちゃんが立派な働きをすれば、家族の罪は不問とするという結論が出た。
私達の肩に、母やまだ幼い妹ルルの命がかかっているんだ。
私もミルちゃんも戦闘職じゃないから、まともに戦えるかどうかわからなかったけど、母は形見の指輪やドレス等を全部売り払い、私達の武器と防具を揃えてくれた。
ミルちゃんが直接戦場に向かわずに、少し寄り道をして訓練をしていこうと案を出してくれた。
おかげでウィル先生に戦いのことをいっぱい教わった。戦場に直行しなくて大正解だったと思う。
ミルちゃんは妹だけど、しっかり者だ。
私は頼りないお姉ちゃんだけど、いつもミルちゃんに守られてばかりだけど、今回ばかりは私がミルちゃんを守らないと!
戦場に到着すると、「来るのが遅いから逃げたと思った」なんて皮肉を言われたけど、気にしてなんかいられない。
私達が配属されたのは、犯罪者等を集めた、捨て駒の部隊だった。
私達みたいに全身しっかりと防具で固めている人なんて、誰もいなかった。
私達が配属されたのは、軍の最前線。常に最も危険な場所で戦い続けなければいけない。
隊列を組んで進んで行く。
部隊長だけが馬に乗って、私達と同じようにフル装備をしている。
敵軍が見えてきた。
緊張で心臓が飛び出しそうだよ。
横にいるミルちゃんも震えているのがわかる。
「いくぞ!!」部隊長の掛け声とともに走り出す。
「オォォォォ!!」周りの人達も大声を上げて走っている。
私も、
「お、お~~~」叫んでみた。
なんとか周りに遅れずについていけた。
ミルちゃんの横に立ち、盾を前に構える。
私達の基本戦術は2人とも盾を前に構える。
敵が攻撃してきたら、とにかく防御。
そして、攻撃を受けていない方が隙をついて攻撃する。
チャンスになれば2人で集中攻撃。
そうすれば、安定して戦えるみたい。
敵が剣を振り下ろす。
カーン
大丈夫。盾で受ければダメージはない。
横からミルちゃんが槍で突いた。
脇腹に刺さったみたいで苦しんでいる。
私は槍を上から下に叩きつける。
敵の肩に当たって、剣を落とした。
その隙に味方の他の兵士が斬りつけていた。
あっ!今度はミルちゃんの方に攻撃がきた。
しっかり盾で防いでる。
相手が再び攻撃しようと剣を振り上げている最中に私が槍で突いた。
鎧の上からだったから、大したダメージはないと思うけど、バランスを崩して転倒させれた。
どれだけ続いただろう。
周りで敵も味方もどんどん倒れていった。
怪我人も、運が良かった人は前線から運び出されて、今頃治療を受けているだろうけど、大半はそこら辺に転がっている。
戦いが終わった時には返り血や埃でドロドロに汚れて、ピカピカだった鎧兜も見るかげもない。
「ミルちゃん、大丈夫?」
「私は大丈夫よ。お姉ちゃんは?」
「私も大丈夫だったよ。良かった。。。
私達、これで生きられるんだよね。」
「まだ安心はできないよ。戦果を出すって条件はあいまいだからね。」
「そんな。。。」
すると部隊長が近付いてきた。
「デリアン姉妹よ。
君たちの活躍は想像以上だった。この激戦のなか、姉妹で庇い合いながら、最前線で戦い続けた姿は立派であった。
もし君たちの戦果を貶す者がいれば、私が全力で擁護することを約束しよう。」
「ありがとうございます!」
私達は全力で頭を下げた。
少し安心したら涙が溢れてきた。
ポロポロと零れ落ちて止まらない。
私はお姉ちゃんだから、しっかりしないといけないのに。
横を見るとミルちゃんも泣いていた。
2人で抱き合ってしばらく泣き続けた。
もう感情がぐちゃぐちゃで訳がわからなくなっていた。
泣いて
泣いて
泣き続けたら、少し落ち着いてきた。
ミルちゃんを見ると、ミルちゃんも落ち着いてきたみたい。
「お姉ちゃん、まだまだ生き続けよう。」
「うん!」
「そのためには、まずは恩赦を勝ち取って、それから、どうやって生活をするかも考えないと。」
「やることが山積みだね。
よ~し、お姉ちゃん頑張るよ!」
ミルちゃんと協力していけば、これからの苦難も乗り越えていける!
今はそんな気持ちでいっぱいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます