家のため

ある日、

冒険者ギルドに不釣り合いな女性2人組がいた。

姉妹かな?

エリック兄さんやアルガス兄さんと同い年ぐらいに見える。

女性の冒険は少ないけどいるよ。でも、服装や雰囲気が本当にお嬢様って感じなんだ。

だから、めちゃくちゃ浮いてるね。


あっ、男の冒険者2人組が声をかけた。

「お嬢さん、何かお困りかい?」

「大丈夫です。冒険者登録するだけですから。」

「登録はいいけど、その後はどうするんだい?一緒にダンジョンに行くメンバーはいるのか?」

「まずは2人で様子を見てみようと思っています。」

「それは駄目だ。もし1人が大きな怪我をしたらどうするんだい?背負えないだろ。

頑張って背負ったとして、その状態でモンスターに襲われたら、どうするんだい?」

「た、確かに」

「ちょっとお姉ちゃん、

のせられ過ぎだよ。

モンスターよりも、その2人の下心の方が危険よ。」


やっぱり姉妹みたいだね。

妹の方がしっかりしてるね。


「ひどい言い種だな。親切で声をかけたのに。」

「えっ、あっ、その」

お姉ちゃんの方がオドオドしている。

妹ちゃんは冒険者たちを睨み付けている。


そろそろ助けようかな。

「初心者なら、窓口で指導の依頼をすれば、Cランク以上の信頼できる冒険者を紹介してくれるよ。ギルドの補助があるから格安で指導が受けられるよ。」

「お教え頂き有難うございます。

私達はギルドに紹介された冒険者に指導してもらいますので、ご心配なく。」


そう言って、窓口のモニカさん(トーマスさんの一件の時に対応してくれた女性だ。やり取りが増えて仲良くなったよ。)に声をかけた。

「だいたい聞こえてたかしら。

指導をしてくれる冒険者を紹介して欲しいんだけど。」

「承りました。何か希望はございますか?」

「私達、早くレベルを上げたいの。待ち時間が少ないほど有難たいわ。」


完全に妹ちゃんが仕切ってるね。


「わかりました。

ウィル様、お受け頂けませんか?

新人指導等を積極的に受けて頂ける冒険者はギルドからの評価が上がりますよ。」

「まあいいよ。とりあえずこれから半日指導して、明日以降はどうするか考えよう。」

「失礼ながら、少し若過ぎませんか?」

「そうですね。その若さでB ランクですから優秀さは保証しますよ。」

「B ランク! 本当なの?」

「こんなところで嘘はつきませんよ。

呼び出し時間ゼロでBランク冒険者に指導してもらえるんですから、希望通りでしょう。」

「ミルちゃんどうしよう?」

「指導をお願いしましょ。ここで問答をしている時間ももったいないわ。

よろしくね。」


ギルドを出て、ダンジョンに向かう前に2人に声をかけた。

「まずは自己紹介だね。

僕はウィルだ。

2人にも名前と職業、今のレベル、レベルを上げたい目的とタイムリミットを教えて欲しい。」

「目的まで話す必要はあるの?」

「目的は大切だよ。

強いモンスターを倒したい。

とにかくダンジョンを進めたい。

モンスターで稼げるようになりたい。

自分の身を守れるようになりたい。

目的によってどれも鍛え方が違うからね。」


「専門家の意見に従いましょう。

私はミル、姉がメル。私は中級職『村長』レベルは3よ。」

「私は中級職『歌手』です。レベルはミルちゃんと同じ3です。」

しかし、姉妹が完全に逆転してるね。


「私達はこれから戦争に参加しに行きます。細かい事情は割愛しますが、逃げることはできません。逃げずに戦果を上げ、生き残りたいのです。」

「戦争に行くのはいつなの?」

「5日後には出発します。」

「じゃあ、これから4日間、

レベルを上げる。

対人戦の技術を鍛える。

集団戦で生き残る技術を鍛える。

それを目標に頑張ろうか。」


2人とも武器と防具は用意していた。

鉄の槍、鉄の兜、鉄の鎧、鉄の盾

まったく似合って無いし、重さが能力をオーバーしているから、まともに動けない。

とりあえず鎧と兜は外して、槍と盾で練習をしてみた。


まったく才能が無い。

2人とも頭は良いので、言ったことはしっかり理解できるけど、戦闘の才能はゼロ。

とにかく数をこなすしか無いので、ゴブリンやスケルトン等の人間に似た動きをするモンスターを中心に訓練をした。


あっという間に時間は過ぎた。

「今できることはすべてやったよ。

でも短時間で劇的に強くなることはできないんだ。大切なのは僕の指導を忘れずに戦場でも冷静に行動すること。

戦場で真っ先に死ぬのは冷静さを欠いたヤツだからね。」

「「はい。ウィル先生。」」


先生って呼ばれるのって気持ちいいね。

クセになりそう。


「最後に2人に渡す物がある。

これだ。」

僕はシャツと腕輪を2人に渡した。

「これはベテラン冒険者がよく使うシャツだ。特殊な生地で、刃を通しにくい。鎧の下に着てくれ。

こっちはダンジョン産のアクセサリーだ。少しだけ防御力を上げる。お守りみたいな物だね。

戦いが終わって落ち着いたら返しに来て。

急がないから、必ず生きて返しにくるんだよ。」

「「ありがとうございます。ウィル先生。」」


良い話風にまとめたけど、2人とも全然強くならなかったから、防御力をドーピングしました。渡したシャツだけで、鉄の防具一式の倍以上の防御力があるからね。

裏技無しに短期間で鍛えるのは無理だったね。

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