見果てぬ塔

「金払いが良いのは美徳だね。」

「それなら、報酬に見合った仕事をする、というのも美徳だよ。」

「そりゃそうだな。俺に何を求める?」


「今のところはなにも。

優秀な情報屋と知り合いになるのは有意義だからね。」

「ふ~ん。なるほど。

坊っちゃんの名前を教えて頂いても?」

「冒険者のウィルだ。明日から『見果てぬ塔』の攻略をスタートする予定だ。

今後とも宜しく頼むよ。」

「こちらこそ宜しく頼むよ。」


「ちなみに、今『見果てぬ塔』を攻略している冒険者で、一番進んでいるのは何階まで進んでいるの?」

「過去最高記録は89階と言われている。現在活動している冒険者だと54階が最高だ。

最強のパーティー『悠久の栄光』が記録を持っている。今は40階前後を中心に活動している。」


「さすが、優秀な情報屋さんだ。頼りになるな~。」

「そりゃどうも。

今後とも宜しく頼むよ。」


情報屋ランド。

腕は良さそうだね。

知り合っておいて損は無さそうだね。



翌日から『見果てぬ塔』の攻略を開始した。

そして約1ヶ月。

100階に到達しました。

90階過ぎた辺りからモンスターが急激に強くなった。

97階は大きい亀のボスがいて、

98階は大きい鳥のボスがいた。


99階のボスは獣王キルベルモス。

邪龍ガルガイアの同格かな。特大の獣だった。

獣王キルベルモスと邪龍ガルガイアを倒せばすぐにレベル100に成れそうだね。


90階以降で素材集めしながら、獣王キルベルモスと邪龍ガルガイアを毎日倒そうかな。


100階は全然雰囲気が違っていた。

『帰らずの回廊』は花畑の広がる華やかな光景だったけど、『見果てぬ塔』は研究室って雰囲気だね。


適当に歩いていると、

「ほう、ここまで単身で来られる子どもとは、とんだバケモノだな。」

「見た目は貴方の方が、バケモノみたいだけどね。」

完全にゴーストの見た目のおじいさんが浮かんでいたら、そう言うでしょ。


「ふん。口の減らない子どもだ。

まあ良い。よく来た。歓迎しよう。

ついて来い。」


休憩室っぽいところに案内されました。

「まあ座れ。」


僕が座ると、

「ワシがこんなだから、まともな食い物や飲み物はないんじゃ。我慢してくれ。」

そう言いながら水を出してくれた。


「ありがとう。頂きます。」

僕が出された水をぐびぐび飲むと、


「ゴーストに出された水を警戒無く飲むとは、どういう神経をしとるんじゃ。」

「バンパイアとよくランチをしてるんでね。僕は冒険者のウィル。

『帰らずの回廊』のキルアの友人だ。」

「なるほど。

ワシはレザード。この『見果てぬ塔』のダンジョンマスターをしている。

キルアのヤツめ、なかなか来ないと思ったら、友人を寄越すとは。

まぁ、ここまで単身で来られる能力があれば問題は無いか。」

「キルアに来て欲しかった理由があるの?」


「うむ。ウィルよ、少し長くなるがワシの話に付き合ってくれ。」

僕はコクリと頷く。

「ワシは冒険者として、この塔を攻略した。

その時はまだ生きた人間だった。

当時、ダンジョンマスターはおらず、ダンジョンも90階までだったんだ。

攻略したワシらは外に出れば、一躍時の人。栄華が約束されていた。

しかし、ワシはその栄華よりも、ダンジョン最深部にあった、この研究室を選んだ。

ここはダンジョンマスター権限で、かなり非常識なことが簡単にできてしまう。

ワシは唯一残り、魔法の研究に没頭した。

やがて体が年齢により衰えてきたので棄てた。

研究の中でも一番力を入れたのが、魔法生物、キメラの研究じゃな。

しかし、大きな問題が起きた。

作り上げたモンスターが強過ぎて、ただのゴーストになってしまったワシには、実戦で力を測ることができないのだ。

わかるか!

せっかく作ったキメラがどの程度強いのか、まったくわからん、その悲しみが!


そんな時、キルアが来た。

他のダンジョンでマスターをしており、暇だから、ダンジョンを巡っていると言っていた。

ワシはチャンスと思い、何体かのキメラと戦ってもらった。

最高じゃった。

良いデータが取れた。ワシの研究は更に進んだ。

本来なら、更にパワーアップしたワシのキメラをキルアに見せたかったのだが。

ヤツは全然来ない。


諦めかけていたところに、ウィル、お前が来てくれたのだ。」


「つまり、僕にキメラと戦って欲しいと。」


「その通り!

理解が早くて助かる!

最初は弱いモンスターを用意している。徐々に強くしていくから、危険を感じたら途中で止めればいい。」

「いいよ。僕のスケジュール上、問題無いタイミングならね。」

「ありがとう!

今からいけるかね?」


「ちょっと待ってよ。

キメラと戦うのはいいけど、それだけじゃ僕にメリットが無いよ。」

「失礼した。

ワシとしたことが舞い上がってしまったようじゃ。

ダンジョンマスターの権限で、このダンジョンで手に入る素材はすべて用意できる。

お前に一覧を渡すから、適当に選んでくれ。」


「悪くないね。

もうすぐ夕方だから、少しぐらいなら付き合うよ。どこで戦えばいいの?」

「ちゃんと戦闘スペースを用意している。

ついて来てくれ。」

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