充実した?日々


良いレベル上げスポットが見つかって、生活のリズムが出来てきた。


朝ご飯を食べて『帰らずの回廊 49階』に突入。

ドラゴン達を淡々と狩る。

最後は邪龍ガルガイアを仕留めて終了。

昼ごはんはキルア達と一緒に食べる。

それからダンジョンを出て転移。


僕は転移魔法が使える。

でも、どこでも転移できる訳ではない。

一度行ったことのある街やダンジョンにしか転移ができないんだ。

だから転移できる場所を増やす活動をしている。

当面メリッカを本拠地にする予定だけど、いずれ街を出る時に役立つはず。


前回はわざわざ夜に飛んだのに、昼間に飛んでいいの?と思われるかもしれない。

でも意味はあるんだよ。

単身だと見つかりにくいように高度を上げて、気配遮断のスキルを使えば、まず見つからないからね。

カシムとソニアを抱えるとシルエットも大きくなって、目立つからね。


そして、転移先を増やしたら夕方にダンジョンに戻り、カシムと一緒に帰宅。

3人で一緒に夕食を食べて、他愛ない話をする。



そんな生活を10日間ほど過ごした。

そして、いつも通り3人で夕方を食べていると、ソニアが真面目な顔をして話し始めた。

「ウィル、ちょっといいかな。」

「どうしたの?」

「赤字です。」

「えっ?」

「収入を支出が上回っています。このままではジリ貧です。収入を増やすか、支出を減らすかしないと、オデロ様より頂いた準備金も底をついてしまいます。」


「なんだ。そんなことか。

じゃあ明日から稼ぎを増やそう。」

「えっ、そんな簡単に増やせるんですか!」

「いいから、いいから。

僕とカシムを信じて待っててよ。」



そして翌朝、

ダンジョン前にて。

「じゃあカシム。

今日はいつもより深いところに潜って、強いモンスターをいっぱい倒してきて♪」

「は~。そう簡単には無理ですよ。

深い階層に行くのは移動に時間がかかります。それに深く潜るとモンスターが強くなり、危険過ぎます。」


カシムの判断は正しい。

単身だと安全面を考えて、かなり格下のモンスターを数多く倒すのがセオリーだ。

無理をして死んだら意味無いからね。

格下のモンスターだと経験値はあまり稼げない。

だから、冒険者はパーティーを組むのが常識になっている。



「そう言うと思ったよ。

そこで、これを用意しました!」

僕は3つのアイテムをアイテムボックスから取り出した。


「まずは、ウインドシューズ。

素早さ+30できるアクセサリーだ。

これなら移動速度もアップできるはず。」

「なっ」

「次は、アダマンタイトソード。

物理攻撃力+70の武器だ。

これなら多少の格上モンスターも倒せるでしょ。」

「なっなっ」

「最後は、竜翼のマント。

物理防御力+20、魔法防御力+20、火・闇属性半減、回避率上昇(小)。

防御力を底上げするためのアクセサリーだよ。」

「なっなっなっ」


さっきからカシムが「なっ」しか言わなくなっている件。

どうしようかな。


しばらく放心していたカシムがようやく正気を取り戻した。

「なんてアイテムを出すんですか!

どれも国宝級ですよ!

こんなの装備できませんよ!」

「気にしなくていいよ。

剣はダンジョンで拾っただけだし、アクセサリーは僕の手作りだし。」

「このマントを作ったんですか!

アクセサリーでこの防御力なんてあり得ませんよ!」

「うん。まだ防具が作れないから、アクセサリーで防御力を高くするのは苦労したよ。」


「常識外れ過ぎて頭が追いつきません。」

「まあまあ。深く考えるのは後にして、さっさと装備してダンジョンに行ってきな。

無心でモンスターを倒してれば気持ちも落ち着くよ。」

僕はそれだけ言って、先にダンジョンに入ってしまう。

後ろで、

「攻撃力がいきなり倍以上なんてあり得ない。」カシムの大きめの独り言が聞こえたけど無視だね。



その日の夜、

「すごいじゃない♪

宣言通り、いきなり魔石獲得量、大幅アップだもんね。」

「ふふ~ん♪

僕は有言実行の男なんだよ。」

「どうやったの?教えてよ。」

「ダメ~。秘密だよ♪」

「え~」


カシムは静かに遠くを見てたね。

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