男子校に入りたかったJK

せいや

0話・入学前

「先生、男子校に入りたいです。」

進路指導をやっているのだが、女の子が男子校に入りたいというのは、始めて聞いた。この子は山口玲央(やまぐちれお)。女の子なのだが、普段は男の子とアニメなどの話題で盛り上がっている。

「どうして男子校に入りたいんだ?」

「女と一緒にいると女らしく振舞わなきゃいけないんだけど、男といると素の自分でいいんですよ。」

「なるほど。しかし女子が男子校に入ることは出来ないのだが、学年に女子が一人の可能性がある学校はあるぞ」

「どこですか?」

もの凄い食いつきだ。それほど女子との会話に気を使うのだろう。

「工業高等学校の夜間だ。1学年30人のところだ。夜に学校に行くのだが、どうだろうか?」

「そうですね。凄くいいとことろですね。」

こうして僕の進路指導は終わった。両親に話したら賛成してくれた。


「進学せずに働いて母親を楽にさせたいんです。」

楽間千紗(らくまちさ)の進路指導中だ。この子の家は母子家庭だ。母親は必死にお金を稼いでいる。家事は千紗が一人でやっているらしい。この子が幼いころに父親は病気で亡くなったらしい。

「君の母親は何て言っているんだ?」

「学費を払う余裕がないって言ってました。家計簿とかを見てもそんな余裕はないんです。」

「そっか。」

俺は考えた。中卒で雇ってくれる会社はない。千紗は優秀だ。周囲への気遣いも出来る。中学生とは思えないほどの落ち着きだ。この子が気にしてるのは学費だ。家事を一人でやっている彼女には勉強する時間はあまり取れないらしい。提出物で精一杯のようだ。ならば…

「工業高等学校の夜間はどうだ?」

「夜間ということは定時制ですか?」

「昼間は働きながら夜に学校に通えるのが夜間のいいところだ。入学金も3万円程度で月の学費も一万円程度だ。入学金だけ母親に出して貰って、学費はアルバイトで出せるから、君の母親への負担も少ないはずだ。電車通学しても交通費も一万円程度だろう。工業高校だから、就職にも強い。4年通うことになるが、外部で単位を取れば3年で卒業出来る。どうだろうか?将来のことを考えたら手に職をつけて就職するのがいいと思うんだ。」

「勉強時間が取れるか心配です。」

「提出物も授業のノートだけでいいらしい。去年、同じところに進学した先輩が言ってた。」

「なら、私でも進学出来そうです。」

こうして、私の進路指導は終わった。お母さんが仕事から帰って来たら、この話をしてみた。入学金も少なく学費や交通費はバイト代で払えるという話なら進学させられるって言ってくれた。お母さんを少しでも楽にさせてあげられるのだろうか…


「勉強が嫌いです。でも、親が高校だけは入れって言うんです。」

和田翔琉(わだかける)の進路指導中だ。授業態度は普通なのだが、家では勉強はしたくないらしい。提出物も答えを丸写しで出している。私の教科でも他の教科でも。こうゆう子にはレベルの低い高校があっているのだが、家では勉強はしない。でも学校では勉強はする。誘惑に負けてしまう。ならば、

「工業高等学校の夜間なんてどう?提出物も授業のノートだけだし、何よりも受験勉強をしなくていい。作文と面接だけよ。入学したい意思を見せれば誰でも入れる。」

「テスト勉強もしたくないんですが…」

「家ではね。テスト前に勉強時間が設けられてて、しかもテストごとによ。入学してからは、家で勉強しない子がほとんどなの。なら卒業できそうじゃない?」

「そうですね。ちなみに男女比率はどのくらいですか?」

「そうね。男の子がほとんどかな。学年に女の子は一人ぐらいかな?」

「俺にピッタリの学校じゃないすか。」

俺は喜びながら返答した。俺の進路指導は終わった。帰ったら両親が俺のことを待っていた。家で勉強しなくても卒業出来る。勉強嫌いな人が多く通い、卒業している学校ということを話したら両親は満足してくれたようだ。



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男子校に入りたかったJK せいや @roiyasei319

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